Social determinants of improved functional ability : a longitudinal study of older Japanese adults
概要
[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名雨宮 愛理
本研究は、高齢者の社会経済的地位ならびに地域のソーシャル・キャピタルが要介護状
態の改善と関連するか、また、その関連が個人の特性や社会関係によってどのように異な
るかを検証した。
1 章で高齢化に関する社会の課題、高齢者の健康に影響する社会的要因の定義と健康格
差を生み出すメカニズム、高齢者の健康のなかでも生活機能に影響する個人要因と地域要
因、研究の目的を説明した。
2 章で日本の高齢者での社会経済的地位と生活機能改善の関連について検証した。本研
究から初回の要介護認定時に重度だった高齢者では生活機能改善に教育歴による格差のあ
ることが示唆された。この理由として教育歴が長いとその後も社会経済状況に恵まれやす
く、高齢期に医療やリハビリテーションにアクセスしやすいという物質的なメカニズムが
考えられる。また教育歴によりヘルスリテラシーや心理社会的ストレスに差がありこれが
健康行動を変化させて生活機能改善に影響するという行動学的なメカニズムも考えられ
る。
3 章で日本の高齢者において地域のソーシャル・キャピタルと生活機能改善の関連を検
証した。本研究から初回の要介護認定時に重度だった高齢者では生活機能改善に教育歴に
よる格差のあることが示唆された。この理由として教育歴が長いとその後も社会経済状況
に恵まれやすく、高齢期に医療やリハビリテーションにアクセスしやすいという物質的な
メカニズムが考えられる。また教育歴によりヘルスリテラシーや心理社会的ストレスに差
がありこれが健康行動を変化させて生活機能改善に影響するという行動学的なメカニズム
も考えられる。
4 章で本研究で得られた知見を総括して地域の介護予防施策への提言をまとめた。高齢
者の生活機能改善対策も含む地域の介護予防活動では対象となる個人の社会経済状況を把
握し、個人とコミュニティとの関係性にも配慮する必要がある。地域の社会関係を変化さ
せるような介入では、新たな地域内の健康格差が生じていないか留意する必要があること
を提言した。これは公平な地域包括ケアシステムの構築に重要な貢献すると考えられる。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。