リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Contribution of Job Satisfaction in Mental Health Issues for Prevention of Severity and Its Determinants」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Contribution of Job Satisfaction in Mental Health Issues for Prevention of Severity and Its Determinants

立瀬 剛志 富山大学

2020.08.26

概要

〔序章〕
過労死という言葉が日本で生まれ、働き方改革が推奨されている現状において、人が多くの時間を過ごす仕事環境が重要なことは論を待たない。そして日本では、仕事に対する労働時間やストレスに着目した政策は進められているものの、様々なストレス関連疾患や生産性との関連を示すと言われる仕事満足の側面から職場環境を包括的に扱っている研究は少ない。
そこで、仕事の満足に着目して4つの研究を行った。検証内容は1)仕事不満足と関連する日常的な健康問題、2)抑うつ発生及び回復における仕事満足の役割、3)仕事満足の決定要因及びその国家間差並びに社会経済格差の説明要因とし、公務員を対象とした検証を行った。
以下に4つの研究結果、考察と政策提言を述べる

〔研究結果〕
研究Ⅰ. 日本の公務員集団におけるストレス関連の健康問題への仕事満足の寄与
1998年に実施した日本公務員研究の3172名( 19才から65才) の質問紙調査データを用い、精神機能低下、疲労感、睡眠障害のそれぞれの症状に対して仕事の不満足がどのように関連するかを検証した。ロジスティック回帰分析の結果、仕事満足は既知の関連要因とは独立して上記日常的に抱えやすいマイナー症状と有意な関連がみられるとともに、心理社会的ストレスと症状との関連に対して緩衝的な役割があることが確認された。このことから仕事の不満足を改善は、そのこと自身が健康維持・増進に寄与するだけでなく、ストレスと健康問題との関連を包括的にケアする可能性が考えられる。

研究Ⅱ. 仕事満足と心理社会的ストレスが抑うつ症状の発生と回復に及ぼす影響:1年間の前向き研究
2009年に実施した2088名( 19才から65才) の公務員集団の悉皆調査及び1年後の追跡調査にて必要項目に回答した992名を分析対象とした。日本語版CES-D (the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale) にて抑うつ症状の有無を判定し、ロジスティック回帰分析を用い、ベースライン時に抑うつのなかった者の1年後の発生要因と抑うつのあった者の1年後の回復阻害因子を同定した。その結果、仕事満足は1年後の発生要因として有意な関連を示し、一方仕事の裁量度及び要求度は1年後の回復阻害因子として関連を示した。更にベースライン時の抑うつは1年後の抑うつ状態に強い関連を示した。抑うつ状態は1年以上の持続性が高いものの、その回復には仕事の心理社会的ストレスを抑制することが重要である。一方、1年という短期間における抑うつ発生予防としては、ストレス対策よりもむしろ職務満足の改善が重要である。

研究Ⅲ. 仕事の個別側面の満足が仕事の全体的な満足をどう説明するか:日本公務員研究
研究Ⅰで使用した集団のデータを用いて、仕事上のどの個別的側面がどの程度全体としての仕事満足に寄与するかについてロジスティック回帰分析を用いて評価した。使用した7つの個別満足はすべて有意に全体の仕事満足に関連しており、特に仕事における内発的な満足である仕事や技術への興味満足及び能力の使われ方への満足が強い関連を示した。また職種によって多少の違いは見られるものの内発的な満足の寄与はどの職種も強かったが、管理職には特に能力の使われ方が重要であった。これらの結果は仕事満足の改善に対しては給与や労働時間といった管理的(外発的) な側面ではなく内発的な動機付けを伴う組織運用が重要であることを示している。

研究Ⅳ. 仕事満足の国家及び社会経済格差の説明要因: 英国と日本の公務員国際比較研究
英国UCLと国際共同研究を行っている研究データ( 研究Ⅰ・Ⅲと同研究) を英国ホワイトホールⅡ研究データとリンケージし、全体の仕事満足の説明要因並びに、国家間・社会経済状態による仕事満足の違いの説明要因をロジスティック回帰分析によって検証した。その結果、英国も日本と同様に仕事の個別的側面、特に仕事や技術への興味満足及び能力の使われ方への満足が全体的な仕事満足に強い寄与を示した。そして使用した7つの個別満足は両国ともすべて有意な関連を示した一方、心理社会的ストレスは部分的にしか関連を示さなかった。また国家間の仕事満足格差に対しては、心理社会的ストレスよりも個別の仕事満足が大きな説明要因であったとともに、社会経済格差を示す職階差に対しても同様の結果となった。仕事満足が低いとされる日本において、更には先進国における仕事の社会経済格差に対しても仕事の内発的満足に着目した職場の環境改善が重要である。

〔総括〕
以上4つの研究から、生産性低下の主な原因となるメンタル関連の症状への予防・改善には、仕事満足が需要なファクターであることが示唆され、心理社会的ストレスや長時間労働などの職務上の問題をなくすことよりも、仕事満足を内発的な要因によって支えることが重要である結果が示された。また、このことは国を超え同様の結果であり、更には先進国の課題である社会経済格差に対しても有用であった。日本ではストレスチェック制度や働き方改革が進められている中、そのほとんどが仕事における負の要因に対する対策に終始しているが、健康政策が単に疾病のある人への対策でないことを考慮すると、個人の健康だけでなく組織の生産性とも関連が強い仕事満足という因子に着目したメンタルヘルス対策が求められる。そのためには個人の疾病予防が中心となる保健制度を超えて、産業政策や労働政策とも連動し働くことそのものの質を向上させる個と組織双方の健康にアプローチすることが重要である。

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る