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書き出し

ハイリスク妊婦とそのパートナーの親性の変化と影響因子 : 妊娠期から児の退院後の縦断研究

河村, 江里子 名古屋大学

2023.08.24

概要

学位報告4

別紙4
報告番号






論文題目
















ハイリスク妊婦とそのパートナーの親性の変化と影響因子
–妊娠期から児の退院後の縦断研究–

河村 江里子

論 文 内 容 の 要 旨
① 緒言
日本の 2020 年の合計特殊出生率は、1.34 と低水準となり、少子化が大きな問題となってい
る。また、現代の社会的な影響によりハイリスク妊婦が増加している。育児困難を抱える妊婦の
中で、特にハイリスク妊婦は、自分自身や胎児に対する健康不安などの身体的・心理的要因によ
って更に育児のストレスや困難を増大させる可能性がある。また、コロナウイルス感染症拡大以
降、医療機関へのアクセス制限のため、父親は出生から退院まで育児に関わることができず、育
児への不安やストレスが増加することも考えられる。このように、我が国は今、少子化と育児困
難という緊急かつ重要な課題に直面している。様々な障壁の中で、男女ともに親への移行におけ
る課題と支援を検討することは重要であると考える。
そこで、本研究ではハイリスク妊婦とそのパートナーにおける「親性」に着目した。研究目的
は (1)妊娠期から児の退院後の両親の親性の変化、(2)妊娠期、出産後、児の退院後の両親の親性
の性差の有無、(3)各期間における親性の影響要因を検討することである。これらの知見は、出生
前の早期からスムーズな親への移行を促す看護を支援するものであり、それは子どもと親の成
長・発達に肯定的な影響を与える可能性がある。また、効果的な親性発達を検証することは、医
療従事者の家族支援スキルや子どもとその家族のウェルビーイングに貢献すると考える。さら
に、性差を研究することはジェンダーイノベーションにつながることが期待される。
② 方法
本研究は自記式無記名質問紙調査を用いた縦断的調査研究で、ハイリスク妊婦外来を受診した
妊婦とそのパートナーを対象とした。質問時期は、妊娠期(1 回目)
、出産後7日以内(2 回
目)
、児の退院後 1 ヶ月以内(3 回目)の 3 回であり、質問紙を一度に 3 回分渡し、各時期毎に記
入して郵送するよう依頼をした。
親性の検証のために、育児期の親性尺度(以下 SECP:3 下位尺度、33 項目)を用いた。独立
変数として、参加者の特性(両親・子どもの特性、育児・家事に関すること)
、出産後のみ日本
版エジンバラ産後うつ病自己評価票(以下 EPDS:10 項目)
、児の退院後のみ日本版 PSI 育児支
援アンケートショートフォーム(下 PSI-SF:2 領域、19 項目)を調査した。
分析方法は、先ず、両親の SECP 得点の変化の検証のために、対応のある T 検定を行った。2
番目に各時期の父母の SECP 得点の比較の検証ために T 検定を行った。3番目に SECP 得点と有
意差を示す変数を抽出するために、参加者の特性項目及び EPDS、PSI-SF を独立変数とする T 検
定、または Pearson の積率相関分析、一元配置分散分析を行った。また、効果量として Cohen’d
を算出した。最後に、各時期での親性得点の影響因子となる変数を明らかにするために、上記で
SECP 得点と有意差を認めた項目を独立変数とする重回帰分析を行った。なお、本学および対象
施設 1 施設の倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。
③ 結果
合計で 127 部の質問票を配布した。そのうち、有効回答は妊娠期では 85 部(98.8%)、出産
後では 36 部(28.3%)、児の退院後では 31 部(24.4%)であった。母親に限ると、妊娠期では半

学位関係

数以上(48/85、56.5%)、出産後では 6 割以上(23/36、63.9%)、児の退院後では 6 割以上
(20/31、64.5%)であった。第一子は妊娠期では約半数(44/85、51.8%)、出産後では半数
以下(17/36、47.2%)、児の退院後では約半数(16/31、47.2%)であった。出産後に EPDS
陽性であったのは 4 分の 1(9/36、25.0%)、NICU の入院児であったのは 2 割弱(5/31、
25.0%)であった。PSI-SF スコアの平均は 37.77 点(22~55 点)の合計点であった。
父母の親性の変化は 3 期全てに参加した 31 名(父親:11 名、母親:20 名)を分析対象
とした。妊娠期から出産後にかけて、SECP の「総合点」と「子どもへの認識」は、父親、
母親ともに中程度以上の差で有意に上昇した。一方、「親役割の状態」と「親役割以外の
状態」は、母親のみ中程度以上の差で有意に上昇した。出産後から児の退院後にかけて
は、「総合点」「親役割の状態」「親役割以外の状態」は、両親ともに有意な上昇はなか
った。しかし、「子どもへの意識」は、母親のみ中程度の差で有意に上昇した。妊娠期か
ら児の退院後にかけては、「総合点」「親役割の状態」「子どもへの認識」は、両親とも
中程度の差以上で有意に上昇した。一方、「親役割以外の状態」は、母親のみ中程度の差
で上昇し、父親は有意に上昇しなかった。
父母の親性の性差に関しては、3 期全ての SECP は、「総合点」、下位 3 尺度ともに、両
親間で有意な差はなかった。しかし「親役割の状態」以外は、妊娠期と出産後の父親の
SECP は母親より高かった。
親性の影響因子は 3 期全において、不妊治療(「はい」で高得点)が、SECP の総合点と
有意な差を示した。出産後では EPDS(負の相関)、児の退院後では PSI-SF(負の相関)
が SECP と有意差があった。
④ 考察
父母の親性は、妊娠期から児の退院まで、ともに有意に上昇することがわかった。しか
し、特に母親は出産後に親性が有意に上昇し、これは、母親が出産を経験したためと考え
られる。また、母親よりも父親の方が親性の平均値は高く、これはハイリスク妊娠中の夫
婦の特徴的であると考えられる。ハイリスク妊婦は一般妊婦よりも身体的・精神的な負担
が大きいことや、出産前から夫婦でコミュニケーションをとり、様々な問題を解決してい
たことが父親の親性を高くした理由と考える。さらに、両親の親性に性差がないことか
ら、父親も母親も同じような親の移行過程を辿ることが明らかとなった。最後に、妊娠か
ら児の退院まで、親性には不妊治療、出産後には産後うつ、児の退院後には育児ストレス
が影響していた。不妊治療を受けた当事者にとって、「子どもを持つ」という目標を達成
して得られた自尊心の高まりが、親性に影響を与えた可能性もある。しかし、出産がゴー
ルとなる傾向にあることが指摘されており、親性の影響に関して更なる検証が必要であ
る。また、メンタルヘルスに対するサポートは重要であり、産後うつの有病率は男女同等
である。夫婦が同時にメンタルヘルスの問題を抱えると、育児環境の悪化が危惧される。
育児ストレスを含む抑うつ症状は合わせて考慮する必要がある。
ハイリスク妊婦とそのパートナーに対して、第三者の介入がなければ、親性が阻害され
る可能性がある。医療従事者はこれらの問題を認識し、ハイリスク妊婦外来で不妊治療を
受けた夫婦を1単位と捉え、対象の様々な背景を理解し親性の発達を阻害する要因に対し
て、個々の問題に長期的に関与することを認識する必要がある。妊娠前の不妊治療の段階
から継続的に支援することが、彼らのウェルビーイングにつながると考える。
⑤ 結語
本研究は、ハイリスク妊婦とそのパートナーに対して、妊娠期から児の退院まで縦断的
に父親・母親それぞれの親性の変化と相違、彼らの親性の影響因子の検証を目的に実施し
た。その結果、妊娠期から児の退院後まで、父母ともに SECP 得点が有意に上昇し、性差
がないことが示されが、母親は父親よりも出産後に SECP が著しく上昇した。また、妊娠
期と出産後の SECP の平均値は母親よりも父親の方が高かった。そして、妊娠期から児の
退院までの一連を通して、彼らの SECP には不妊治療が共通して関連しており、出産後は
産後うつ、児の退院後は育児ストレスと関連していた。ハイリスク妊婦外来で不妊治療を
受けた夫婦には、夫婦を1単位と捉え出産がゴールとならないよう、親性の発達を阻害す
る要因に介入し、個別の長期的支援の必要性が示唆された。

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