キャリア教育としての教職概論
概要
本稿は、教職課程の入門科目である教職概論において、教職をめぐる進路選択や大学生のキャリア形成の問題がどのように取り扱われているかを、教職概論向けに刊行されているテキストを題材に検討したものである。2015 年の中央教育審議会答申を受けて、現行の教職課程においてはそれまでになかったチーム学校運営への対応を教職概論で新たに取り扱うことになった。現行教職課程の教職概論のテキスト内容を検討すると、従来から教職概論の内容を構成してきた教職の職業的特徴についての説明は依然として豊富であるものの、教職課程コアカリキュラムが求める「他の職業との比較を通して」教職の職業的特徴を理解するという点について正面から取り上げて説明しているテキストは極めて少なかった。このことから、教職概論で取り上げる科目内容が増加することで、教職概論の科目としての目的が十分に達成されなくなっている可能性が疑われる。養成と研修の役割分担という点にも視野を広げて、教職課程で何を教えるべきかの再検討が必要である。