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大学・研究所にある論文を検索できる 「Stimuli-responsive properties of a downsized crystalline coordination framework」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Stimuli-responsive properties of a downsized crystalline coordination framework

Sakaida, Shun 京都大学 DOI:10.14989/doctor.r13396

2021.03.23

概要

ハスの葉が示す超撥水性やモルフォ蝶の構造色に代表されるように、生体系表面ではその特異なナノ構造に起因した外場刺激応答特性を発現することが知られている。これまで盛んに研究されている材料群の1つである多孔性の有機金属構造体(MOF)は金属イオンと有機配位子の自己集積により生成し、分子設計の多様性を生かしてガス分子や温度、光、磁場、pHなどの外場刺激に対する応答性が数多く報告されている。近年は高密度な機能集積を目的とした薄膜構築にも注目が集まっており、ナノ結晶までダウンサイズした際にバルク体(単結晶/粉末)とは異なる物性を示すことが明らかにされてきている。本論文ではMOFの報告例として最古のものの1つであり外場刺激に応じて磁気特性の変化を示すことで知られているHofmann型MOFを題材として、面内/面外方向で配向性を有し、かつナノメートルスケールで厚み制御された薄膜を作製して各種構造評価を行なった。ダウンサイズした結晶が示す刺激応答性として、ガス分子を導入した際の吸脱着特性およびMOFの構成要素である2価鉄イオンが示す温度誘起のスピンクロスオーバー現象について研究を行い、それぞれナノ構造の変化を伴う新規物性の発現を見出すことに成功した。

(1) MOF結晶のダウンサイズにより発現するゲート開閉吸脱着挙動の動的構造解析
バルク粉末の状態ではガス分子の吸着挙動を示さないMOFが、厚みを約16 nmまで薄膜化することにより吸着能を示すことを明らかにした。2次元層状Hofmann型MOFである{Fe(py)2[Pt(CN)4]} (py = pyridine, Ptpy))のナノ薄膜を基板上に作製し、面内/面外で独立した回折プロファイルを示す結晶性配向膜であることをX線回折実験で明らかにした。さらにガス分子圧が制御されたその場X線回折測定を実施してガス圧変化により薄膜が示す動的な結晶構造変化を追跡し、面内シート方向の周期構造は変化しない一方で面外方向ではある圧力以上の領域でゲート開閉に似た異方的な格子膨張を生じることを確認し、構造体に内在する細孔にガス分子が吸着することを実証した。また層数を増やしてバルク体に近づけた場合にある厚み以上で吸着能が失われることも確認し、本現象がナノメートルのスケールでのみ現れる吸脱着能であることも示した。MOF結晶のダウンサイズにより吸着特性発現のスイッチングを示した例はなく、本研究内容はガスセンサーや分離膜といった応用展開のみならず、バルク体での特性には表れない多様な物性発現の探索に貢献することが期待される。

(2) 2次元層状Hofmann型MOF薄膜の作製と構造評価
2次元層状Hofmann型MOFである{Fe(py)2[Ni(CN)4]} (py = pyridine, Nipy))についてナノ薄膜を作製し、ダウンサイズにより結晶構造に変化を生じることを示した。厚みを制御した薄膜形成については、赤外分光法を用いて分子振動の吸光度が積層回数に対して線形に変化していることで確認した。面内・面外方向でのX線回折プロファイルからナノ薄膜の結晶構造を解析した結果、結晶系の対称性がバルク体での状態(単斜晶系)と比較してより高い状態(斜方晶系)に近づいていることを示した。

(3) スピンクロスオーバー挙動における結晶サイズ効果のラマン分光法による観測
構造ユニットとして2価の鉄イオンを含むMOFが示すスピンクロスオーバー現象について、結晶子のダウンサイズによる挙動の変化を明らかにした。直接的な磁化率測定が困難なナノ薄膜は電子–格子相互作用を介したスピン状態変化をラマン分光法で追跡できることが知られているが、これまで着目されていなかった環呼吸振動モードを用いることでよりS/N比の良いスピン転移観測が可能となる手法を提案した。本手法の妥当性評価として超伝導量子干渉計で測定したPtpyバルク粉末の磁化率測定結果と比較したのち、厚みを制御した複数のPtpyナノ薄膜における挙動についてスピン転移温度、降温/昇温過程で生じるヒステリシスなどを評価した。この結果はバルク粉末および磁気測定で検知できない領域までダウンサイズしたナノ薄膜について同一手法でスピンクロスオーバー挙動を観測した初めての例である。

(4) スピンクロスオーバー錯体のサイズ効果により発現する特異なスピン状態の観測
2価の鉄イオンを含むNipyのナノ薄膜が示すスピンクロスオーバー現象について、簡易な基板表面処理の有無により薄膜結晶の表面形状を作り分けることで通常の高スピン(HS)状態とは区別されるスピン転移を示さない高スピン(HS2)状態を生じることをラマン分光法により示した。水素バーナーを使って金基板表面をアニール処理することでその上に成長する薄膜のモルフォロジーが変化することを原子間力顕微鏡による観察で確認した。これまでNipyをはじめとするHofmann型MOFのバルク体において確認されていたHS2状態は格子欠陥や不純物によるごく微量な状態としての観測か、もしくはギガパスカルオーダーの圧力印加により低スピン状態から一部が準安定相のHS2状態として発現する例のみが知られており、本研究の結果はダウンサイズした薄膜の表面モルフォロジーにより常温常圧下でHS2状態が安定化される特異な現象の観測に成功したことを示している。

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