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大学・研究所にある論文を検索できる 「Ecological and reproductive implications on the distributions of Anisakis simplex sensu stricto and Anisakis pegreffii (Nematoda:Anisakidae) in Japan」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Ecological and reproductive implications on the distributions of Anisakis simplex sensu stricto and Anisakis pegreffii (Nematoda:Anisakidae) in Japan

ティアゴ アレクサンドル レアンドロ ゴメス 東京大学 DOI:10.15083/0002006247

2023.03.24

概要

審 査













ティアゴ





アレクサンドル

レアンドロ

ゴメス

Anisakis 属線虫(以下、アニサキス)は鯨類を終宿主とし、その胃内に成虫が寄生する。魚類
やイカ類が延長中間宿主となっており、これらをヒトが生食することにより寄生している第 3
期幼虫を経口的に取り込むと、時として消化管アニサキス症やアレルギーなどの健康被害をひき
起こす。日本近海の魚介類には主として Anisakis simplex sensu stricto(s.s.)と A. pegreffii の 2 種
が寄生しているが、その分布は宿主の種とは関係なく、前者は太平洋側、後者は東シナ海・日本
海に多いことが知られている。しかし、この地理的分布の違いの原因はわかっていない。そこで、
本論文では、2 種の分布を決定する要因の解明を目的として研究を行っている。具体的には、2
種が分布の異なる鯨類を特異的に宿主としている可能性と、2 種の環境に対する反応、特に温度
特性が異なっている可能性について検証し、その結果を記述している。
論文は 4 章からなり、第1章は序論であり、アニサキスに関するこれまでの知見をまとめると
ともに、本研究を行った経緯を述べている。第 2 章では、アニサキス 2 種の分布が特定の宿主の
分布に起因しているという仮説に基づき、様々な宿主における寄生状況を調査し、第 3 章では分
布が環境要因に起因しているという仮説に基づき、アニサキス 2 種の温度特性について調べてい
る。第 4 章は総合考察であり、第 2 章、第 3 章の結果に基づき、アニサキス 2 種の分布はそれぞ
れの種の温度特性の違いに起因していると論じている。

宿主要因の分析
まず、日本近海各地の真骨魚類、頭足類、オキアミ類に寄生するアニサキスを採集し、種の判
別を行い、2 種のアニサキスは基本的には従来示されていたと同様の分布を示したことを記述し
ている。しかし,A. pegreffii が優占するとされてきた東シナ海のマサバや日本海のスルメイカに
おいて A. simplex s.s.が高い割合を占めていた例や(それぞれ優占率 95.5%、100%)
、また、A.
simplex s.s.が優占するとされていた太平洋沿岸のマサバに A. pegreffii の優占率が高い例(53.6%)
も見出されたことより、この 2 種の分布は従来考えられていたほど固定されていないであろうと
述べている。
次に、北海道沿岸および北海道東方沖合域のヒゲクジラ類(ミンククジラ Balaenoptera
acutorostrata、イワシクジラ B. borealis)ならびに和歌山県産ハクジラ類(ハンドウイルカ Tursiops
truncatus、マダライルカ Stenella attenuata、スジイルカ S. coeruleoalba)におけるアニサキスの寄
生状況を調査し、いずれの鯨類にもアニサキス両種が寄生していたことから、鯨類における宿主
特異性が分布の要因となっている可能性は否定されると述べている。一方、ヒゲクジラ類ではア

ニサキス 2 種ともに大型の虫体が数多く観察され、寄生による病変はハクジラ類に比較して軽微
であったことから,日本近海ではヒゲクジラ類が両種の主要な終宿主になっていると示唆してい
る。また、ミンククジラに寄生する成虫を成熟虫体と未成熟虫体に分けて種の判別を行った結果、
沿岸域のミンククジラの中には成熟虫体に A. simplex s.s.が多い個体と A. pegreffii が多い個体が
存在し、さらに、A. simplex s.s. が多いミンククジラは太平洋域に主として分布する O 系群に多
く、A. pegreffii 成熟虫体が多い個体は主として日本海側分布する J 系群に多かったことから、
寄生するアニサキスの種構成がミンククジラの系群の指標となる可能を提示している。

環境要因の分析
ミンククジラに寄生するアニサキス 2 種の成虫から得た虫卵を PBS と海水中に 3~37℃で培
養し、A. simplex s.s.の卵は 25℃以下で孵化したが、A. pegreffii の卵は 27℃でも孵化したという結
果を記述している。さらに、自然産卵された卵が孵化するまでの期間は、A. simplex s.s.では 2 日
(25℃)から 35-36 日(3℃)
、A. pegreffii では 2-3 日(27℃)から 65 日(3℃)であり、ふ化率
は、A. simplex s.s.では温度が異なっていても概ね維持されていたが,A. pegreffii は 27℃以下で低
下し,特に 3℃で低下したことを記述している。孵化幼虫の海水中での半数生存時間は、A. simplex
s.s.では、25℃で 4~7 日、3℃で 65~105 日であり、A. pegreffii では、27℃で 0-2 日、9℃で 73-83
日、3℃で 15-73 日とさらに減少したことを報告している。
さらに、アニサキス 2 種の第 3 期幼虫を 10, 20, 25 ℃で PBS 中に 1-3 週間培養し、その間の
生残を評価するともに、寒天ゲルへの侵入によって活性を評価し、A. pegreffii は、すべての実験
群において A. simplex s.s.より高い生存率とゲル侵入率を示し、特に 20〜25℃で高い生残率と侵
入率を示したことを報告している。
Anisakis simplex s.s.第 3 期幼虫をニジマス(Oncorhynchus mykiss)とモザンビーク・ティラピア
(Oreochromis mossambicus)の体腔内に外科的に挿入し、6 つの温度区(ニジマスは 3、9、15℃、
モザンビーク・ティラピアは 21、27、33℃)で 6 週間または 12 週間飼育した後、幼虫の生存率
を評価し、虫体の生存率は、27、33℃では低下し、特に 12 週間後の生残は低かったことを報告
している。このことから、魚体内に寄生している A. simplex s.s. 第 3 期幼虫は高水温では死亡す
てあろうと述べている。
これらの結果に基づき、虫卵、ふ化幼虫、第 3 期幼虫において、A. pegreffii は A. simplex s.s.
より高温に適応していると述べている。

以上より、A. pegreffii と A. simplex s.s は高温耐性に差があり、このことがアニサキス両種の分
布域を決定する要因となっていると結論付けている。

これらの研究成果は、学術上応用上寄与するところが少なくない。よって、審査委員一同は本
論文が博士(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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