リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「トリコテセン生産フザリウム属菌による新規C-4位糖抱合活性に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

トリコテセン生産フザリウム属菌による新規C-4位糖抱合活性に関する研究

松井, 宏介 名古屋大学

2022.05.20

概要

1. トリコテセンに関する研究について
ムギ類赤かび病原菌 Fusarium graminearum (Fg) は重要穀物に感染し、生産性を大きく減少させるとともにトリコテセン系かび毒を種子に蓄積させて汚染し、食の安全を脅かす。トリコテセンは 12,13-epoxytrichothec-9-ene(EPT) 骨格を持つかび毒の総称で、Fusarium 以外にも Trichothecium などの真菌が生産する。様々な側鎖修飾を受けたものが報告され、側鎖化学構造の特色(type A – type D)や C-3 位の生産菌自己耐性における重要性(d-type と t-type)に基づいて分類される。t-type トリコテセン生産菌では C-3 位に水酸基を持つ isotrichodermol (ITDmol) を最初の EPT として合成し、Tri101 がコードする酵素 Tri101p による直後の C-3 位アセチル化が自己耐性として働き、以後の生合成反応が進む。一方、C-3 位の水酸基を欠く d-type トリコテセン生産菌では、3-O-アセチル化による自己耐性機構が存在しない。本研究では野生型およびTri101 破壊体の Fusarium 属菌に様々なトリコテセンをフィーディングし、その代謝様式や遺伝的背景を明らかにしてトリコテセン生合成に関する知見を深めることを目的とする。

2. Fusarium 属菌への d-type トリコテセンのフィーディング
生合成経路の初発酵素をコードする Tri5 遺伝子を破壊した Fg(FGD5 株と命名)に d-type トリコテセン trichodermol (TDmol) をフィーディングすると、TDmol は各菌体の生合成経路には組み込まれず、ヘキソース 1 つ分の分子量が増加した。この変換物を精製して NMR で構造解析したところ、予想通り TDmol-4-glucoside(TDmol-4-glc) であった。次に TDmol 以外の d-type トリコテセン8-deoxytrichothecin (8-deTCN)、trichothecin (TCN)、trichothecolone (TCC) を同様にフィーディングした。8-deTCN は TDmol-4-glc に変換され、TCN および TCC はTCC-4-glucoside (TCC-4-glc) に変換された。このことから、Tri101p によって耐性を得ることができない d-type トリコテセンをフィーディングした場合、Fusarium 属菌は C-4 位糖抱合活性を示すことが明らかとなった。

3. Tri101 遺伝子破壊 Fusarium 属菌への t-type トリコテセンのフィーディング
Fusarium 属菌が d-type トリコテセンの C-4 位を糖抱合したことから、Tri101 を破壊すればこれまでの生合成の知見からは考えられない t-type トリコテセンの糖抱合が起こる可能性がある。そこで、FGD5 株の Tri101 をさらに破壊した FGD5/101 二重破壊株に HT-2 toxin (HT-2) をフィーディングした。FGD5 株は HT-2 を 3-aceyl HT-2 (3-A HT-2) および T-2 toxin に変換したが、 FGD5/101 株 は HT-2 をHT-2-4-glucoside (HT-2-4-glc) に変換した。このことから t-type トリコテセン生産Fusarium 属菌による C-4 位糖抱合活性は、Tri101 の代わりとなる弱毒化機構であることが示唆された。 本研究で得られた C-4 位糖抱合体は 20 µM の濃度でも出芽酵母や動物細胞の成長を阻害することはなく、アグリコンよりも大幅に毒性が低下した。

4. C-4 位糖抱合体のアセチル化および pH 安定性
HT-2-4-glc を FGD5 株にフィーディングしても C-3 位のアセチル化は認められなかった。また大量の精製 Tri101p とアセチル CoA を加えて反応させても、極微量の 3-AHT-2-4-glc 候補物質が検出されるにすぎなかった。これらの結果から、C-3 位アセチル化と C-4 位グルコシド化は、同時にはほとんど起こらないと結論付けられた。また、pH 2-13 の範囲で 1 pH 単位ごとに pH を変えて様々なトリコテセン C-4 位糖抱合体の安定性を解析した。 TDmol-4-glc で は trihydroxyapotrichothecene-4-glucoisde(THA-4-glc) への EPT 骨格の変換が起き、HT-2-4-glc では T-2-tetraol-4-glc へと脱アシル化が起きたが、糖の遊離は見られなかった。以上のことから、アグリコン部分の pH 安定性を欠くトリコテセン配糖体もあるが、C-4 位のグルコシド結合は化学的に安定であることが示唆された。

5. 遺伝子破壊および異種発現による C-4 位糖抱合遺伝子の探索
シロイヌナズナ由来の UDP-glucosyltransferase (UGT) 遺伝子 DOGT1 はトリコテセン C-3 位を糖抱合すると報告されている。Fg PH-1 株のゲノム情報をもとに全 16個の FgUGT 候補の単一遺伝子破壊株を作製した。しかし TDmol をフィーディングした際に配糖体を生産しなくなる株は存在せず、複数の FgUGT 遺伝子が C-4 位糖抱合を担っていると考えられた。そこで、候補遺伝子を発現させた酵母に TDmol をフィーディングすることで C-4 位抱合酵素遺伝子の同定を試みたが、糖抱合活性を示す遺伝子は得られなかった。ポジティブコントロール遺伝子として DOGT1 を酵母に導入したが、強く発現したにもかかわらず糖抱合活性は示さなかった。今後は、組換え酵素17 種を調整し、試験管内反応系によって活性を示すものを同定するなど他の方法を試
みる必要がある。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る