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大学・研究所にある論文を検索できる 「マウス扁平上皮癌顎骨浸潤モデルにおける Interleukin-12 発現型第三世代がん治療用 HSV-1 投与効果の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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マウス扁平上皮癌顎骨浸潤モデルにおける Interleukin-12 発現型第三世代がん治療用 HSV-1 投与効果の検討

笠原, 駿 大阪大学

2021.03.24

概要

【序論】
口腔扁平上皮癌 (Oral squamous cell carcinoma : 以下 OSCC)、特に歯肉癌は、その解剖学的特徴から速やかに顎骨へ浸潤する。顎骨浸潤を伴う OSCC に対する既存の治療法では、手術療法による顎顔面の器質的欠損、放射線療法に後発する放射線性顎骨骨髄炎などに起因する quality of life (以下 QOL) の著しい低下を伴う。また、 OSCC の顎骨浸潤は遠隔転移や生命予後と密接に関係するため、顎骨浸潤部を非侵襲的に制御し得ることは OSCC の治療において極めて重要な意味を持つ。

Interleukin-12 (以下 IL-12) はそれ自体が高い抗腫瘍効果を有するだけでなく、 IFN-γ の発現を介して破骨細胞の形成を抑制する作用を持つ。悪性腫瘍に伴う骨浸潤は、腫瘍細胞の直接的破壊ではなく、破骨細胞の分化誘導により生じることが知られている。このことから破骨細胞の分化形成を抑制する IL-12 は、 OSCC の進行に伴う骨浸潤に対して効果的に作用することが期待できる一方、これまでの臨床応用における結果から、その全身投与による致死的な有害事象が問題となる。

そこで本研究では、 IL-12 を腫瘍浸潤部局所で発現させることで、全身的有害事象のリスクを抑えながら抗腫瘍効果・骨吸収抑制効果を示すことが可能か検討するため、 Mouse recombinant IL-12 (以下 rIL-12) 製剤、および IL-12 発現型第三世代がん治療用 HSV-1 である T-mfIL-12 をそれぞれマウス顎骨浸潤モデルへ局所投与し、その治療効果を測定した。

【方法】
1.IL-12 製剤のマウス皮下腫瘍モデルおよび顎骨浸潤モデルに対する投与効果の検討
1-1) In vitro におけるマウス SCC 細胞株である SCCⅦ に対する rIL-12 の細胞障害性試験rIL-12 およびコントロールとして PBS を培養下の SCCⅦ に添加し、生細胞数を経時的に測定し比較した。

1-2) In vivo における SCCⅦ 皮下腫瘍モデルおよび顎骨浸潤モデルに対する rIL-12 の抗腫瘍効果の検討
C3H/He マウスの皮下および左側咬筋に SCCⅦ を接種し、 SCCⅦ 皮下腫瘍モデルおよび顎骨浸潤モデルを作成した後、 rIL-12 を 100 ng / 50 µl / day の用量で 7 日間連続で腫瘍内投与し、腫瘍体積を経時的に測定したうえで生存期間を検討した。

1-3) In vivo における SCCⅦ 顎骨浸潤モデルに対する rIL-12 の骨吸収抑制効果の検討
同様に SCCⅦ 顎骨浸潤モデルを作成した後、同様の投与スケジュールで rIL-12 を腫瘍内投与し、下顎骨吸収量を経時的に測定した。本研究では、骨吸収量を計測するにあたり動物用マイクロ CT を使用し、右側下顎骨体積 (腫瘍非接種側) から左側下顎骨体積 (腫瘍接種側) を減じた値を骨吸収量と定義した。また破骨細胞マーカであるCathepsin K について免疫組織化学染色を行い、病理組織学的に骨吸収を検討した。

1-4) In vivo における SCCⅦ 顎骨浸潤モデルに対する rIL-12 の免疫学的検討
SCCⅦ 顎骨浸潤モデルに対し rIL-12 を 7 日間連続投与後、 CD3, CD4, CD8 について免疫組織化学染色を行い、陽性細胞数を比較した。また同様に rIL-12 を 7 日間連続投与後の個体から腫瘍を摘出し、 Quantitative real-time PCR (q-PCR) および ELISpot assay にて mRNA (Acp5, Ctsk, Ifng, Fas, Fasl) 発現量、および IFN-γ 産生量の検討を行った。

1-5) In vivo におけるヌードマウス SCCⅦ 顎骨浸潤モデルに対する rIL-12 の投与効果の検討
ヌードマウスの左側咬筋部に SCCⅦ を接種しヌードマウス SCCⅦ 顎骨浸潤モデルを作成した後、同様のスケジュールで rIL-12 を腫瘍内投与し、腫瘍体積および下顎骨吸収量を経時的に測定した。また、 rIL-12 を 7 日間連続投与後の個体から腫瘍を摘出し、 q-PCR および ELISpot assay にて mRNA (Acp5, Ctsk, Ifng, Fas, Fasl) 発現量、および IFN-γ 産生量の検討を行った。

2.T-mfIL-12 のマウス顎骨浸潤モデルに対する投与効果の検討
2-1) In vitro における SCCⅦ に対するがん治療ウイルスの細胞障害性試験
in vitro にて SCCⅦ に、 T-01 (コントロールウイルス) または T-mfIL-12 をそれぞれ multiplicity of Infection (以下 MOI) =1.0 および MOI = 0.1 で 1 時間感染させ、その後の生細胞数を経時的に測定した。

2-2) In vivo における A/J マウスに対するがん治療ウイルスの安全性試験
HSV-1 に感受性が高い A/J マウス雌 5 週齢の舌にがん治療ウイルスである T-mfIL-12, T-01 (1.0 × 107 pfu / 20 μl)およびその野生株である Strain F (1.0 × 106 pfu / 20 μl および 1.0 × 107 pfu / 20 μl) を投与し、その後のマウスの状態を観察した。また T-mfIL-12, T-01, Strain F 投与後 48 時間の個体の舌、脳、心臓、肺、肝臓、腎臓を摘出し、ウイルス DNA 量を測定し、体内分布試験を行った。最後に T-mfIL-12, T-01, Strain F 投与後 5 日の個体の舌を摘出し、病理組織学的検討を行った。

2-3) In vivo における SCCⅦ 顎骨浸潤モデルに対するがん治療ウイルスの投与効果の検討
SCCⅦ 顎骨浸潤モデルを作成した後、 T-mfIL-12, T-01, Mock を 5.0 × 105 pfu / 20 µl で腫瘍内投与し、経時的に腫瘍体積および下顎骨吸収量を測定したうえで生存期間を検証した。

【結果】
1.IL-12 製剤のマウス皮下腫瘍モデルおよび顎骨浸潤モデルに対する投与効果の検討
1-1) In vitro において rIL-12 は殺細胞効果を示さなかった。

1-2) SCCⅦ 皮下腫瘍モデルおよび顎骨浸潤モデルに対し、 rIL-12 は有意に腫瘍増大を抑制した。また、皮下腫瘍モデルでは生存期間を有意に延長させ、顎骨浸潤モデルでは生存期間を延長させる傾向にあった。

1-3) SCCⅦ 顎骨浸潤モデルに対し、 rIL-12 は有意に骨吸収を抑制した。

1-4) SCCⅦ 顎骨浸潤モデルにおける病理組織学的検討にて、 rIL-12 投与により CD3, CD4, CD8 陽性細胞数は増加した。また、q-PCR にて Ifng, Fasl の発現は有意に増加し、Acp5, Ctsk の発現は有意に減少した。さらに ELISpot assay にて、 SCCⅦ 顎骨浸潤モデルに対し rIL-12 は腫瘍内 IFN-γ の産生量を有意に増加した。

1-5) ヌードマウス SCCⅦ 顎骨浸潤モデルに対し rIL-12 を投与した結果、有意な治療効果を認めなかった。

2.T-01, T-mfIL-12 のマウス顎骨浸潤モデルに対する投与効果の検討
2-1) In vitro において T-01 および T-mfIL-12 は同等に高い殺細胞効果を認めた

2-2) In vivo において T-01 および T-mfIL-12 は同等に高い安全性を示した。

2-3) SCCVII 顎骨浸潤モデルにおいて T-mfIL-12 は T-01 に比較しより強力な抗腫瘍効果を示し、骨吸収を抑制する傾向にあった。

【考察】
今回使用した T-01, T-mfIL-12 は、ともに第三世代がん治療用 HSV-1 を基本骨格としており、非常に高い治療効果を持つとされる。特に T-mfIL-12 はウイルス複製と同時に IL-12 を産生し、より強力な治療効果を発揮することが期待される。 IL-12 は T 細胞をはじめとした免疫担当細胞に作用し、 IFN-γ 産生増強および Fas - FasL 経路の活性化を介し抗腫瘍効果を増強するだけでなく、骨吸収を抑制することが知られている。本研究においても rIL-12 投与による有意な抗腫瘍効果および骨吸収抑制効果を認め、それに伴う CD3, CD4, CD8 陽性細胞数の増加および Ifng, Fasl の発現増強を認めた。また、 IL-12 の有する抗腫瘍効果および骨吸収抑制効果と、 T 細胞ならびに IFN-γ, FasL の関係をさらに検証するため、成熟 T 細胞を有さないヌードマウスを用いた SCCⅦ 顎骨浸潤モデルを作製し、 rIL-12 の投与効果を検討した。結果、ヌードマウス SCCⅦ 顎骨浸潤モデルにおいて、 rIL-12 は有効な抗腫瘍効果および骨吸
収抑制効果を発揮しなかった。このことから、 rIL-12 の有する抗腫瘍効果および骨吸収抑制効果は T 細胞と強く関与しており、 Ifng, Fasl の発現に依存する可能性が示唆された。

T-mfIL-12 は、腫瘍への感染・複製を局所で繰り返しその都度 IL-12 を発現するため、持続的に腫瘍内、特に骨浸潤部先端で IL-12 を発現する状態となる。こうした特徴から、わずか 1 度の投与でも極めて有効な抗腫瘍効果・骨吸収抑制効果を示したと考えられ、本研究においても T-mfIL-12 の T-01 に対する優位性が示されるとともに、同等の安全性が確認された。本研究では T-mfIL-12 単回投与の治療効果検討を行ったが、がん治療ウイルスは複数回投与することでさらに治療効果を増すことが示されているため、T-mfIL-12 の潜在的な治療効果は更なる検証の余地があり、特に適切な投与量・投与回数・投与時期についてより詳細な検討が今後の課題となる。

【結語】
本研究では、マウス顎骨浸潤モデルを用いた腫瘍性骨吸収の検討により IL-12 および IL-12 発現型第三世代がん治療用 HSV-1 が著明な抗腫瘍効果を有するだけでなく、正常免疫下で骨吸収抑制効果を有することを明らかにした。このことから T-mfIL-12 は QOL を維持しながら OSCC の顎骨浸潤を効率よく制御する、低侵襲かつ極めて強力な新規治療法となり得ることが示唆された。

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