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大学・研究所にある論文を検索できる 「東北メディカル・メガバンク機構住民健康調査解析による日本人集団における年齢層別呼吸機能関係因子の探索」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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東北メディカル・メガバンク機構住民健康調査解析による日本人集団における年齢層別呼吸機能関係因子の探索

大江 崇 東北大学

2021.03.25

概要

背景:呼吸機能は生命予後予測因子の 1 つであり、慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease; COPD)を含めた、呼吸器疾患の診断や病状評価に使用されている。喫煙は成人後の呼吸機能低下、及び COPD 発症の主要なリスク因子である。しかしながら、COPD を発症するのは一部の喫煙者であること、及び非喫煙者も COPD を発症することから、COPD 発症には喫煙を主体とした外因性因子の他に、遺伝的素因などの個体側の因子も関与していることが示唆されている。近年、COPD 発症の新たなリスク因子として成人時までの肺の発育障害が注目されている。低出生体重、小児期の肺炎や小児喘息などの原因により肺の低成長をきたすことによって、成人時に到達できるピークの呼吸機能が低くなり、通常の呼吸機能低下速度であっても COPD を発症する可能性が指摘されている。気管支喘息を始めとするアレルギー性炎症も成人の呼吸機能低下に関与する因子である可能性が示唆されている。以上の報告より、私は年齢層別に分けてみれば、成人の呼吸機能関係因子が呼吸機能に影響を与える時期は異なるという仮説を考えた。しかしながら、私が知る限りでは、大規模住民調査に基づき、年齢層ごとに呼吸機能指標と関係する因子を解析した研究報告はない。そこで、私は東北メディカル・メガバンク機構 (Tohoku Medical Megabank Organization; ToMMo) による大規模地域住民前向きコホート調査に着目し、本調査のデータベースを利用した後ろ向き解析を実施することとした。

目的:本邦最大規模の ToMMo 大規模地域住民コホート調査データを用いて、 成人年齢層別に呼吸機能関係因子を後ろ向きに解析し、成人における呼吸機能低下のリスク因子を探索する。

方法:ToMMo 大規模地域住民コホート調査では、2013 年から 2016 年までの調査期間で、16,653 人の成人参 加者の呼吸機能指標(VC、FVC、FEV1)が測定されている。このうち、9,959 人の成人男女(年齢範囲: 20-88 歳、男:女=2,632:7,327)を本研究の解析対象として選択した。呼吸機能に対する喫煙歴の影響を調べるため、この対象集団を喫煙群と非喫煙群の 2 つの集団に分け、両群の集団全体および、年齢層別の呼吸機能関係因子を調べるため、6 つの年齢層に分けて、重回帰分析の手法により探索した。目的変数として、各呼吸機能指標(%VC、%FEV1、FEV1/FVC)を選択し、説明変数として、喫煙指数(Pack- years)、出生体重、末梢血好酸球数、血清総 IgE、コナヒョウヒダニ特異的 IgE という 5 つの呼吸機能関係因子候補を説明変数として選択した。

結果:喫煙群、及び非喫煙群における各群全体の重回帰分析では、喫煙群において、喫煙指数は%FEV1、%VC、FEV1/FVC の全ての指標と独立した負の関係を認めた。一方、出生体重は喫煙群、非喫煙群の両群において、%FEV1、%VC と正の関係を認めた。末梢血好酸球数とコナヒョウヒダニ特異的 IgE は、%FEV1、FEV1/FVC と両群において負の関係を認めた。喫煙群、及び非喫煙群における年齢層別の重回帰分析では、喫煙指数は、%FEV1 に対しては 30 代以上、%VC に対しては 40 代以上、FEV1/FVC に対しては 50 代以上の年齢層において、負の独立した関係を認めた。出生体重は非喫煙群の 30 代から 60 代の年齢層において、%FEV1、%VC に対して正の独立した関係を認めた。仮説と異なり、出生体重は肺の成長期である 20 代において、関係因子ではなかった。末梢血好酸球数は喫煙群、非喫煙群の両群において、40 代から 60 代の年齢層で%FEV1 と FEV1/FVC に対して負の関係を認めた。血清総 IgE に関しては、有意な年齢層は認めなかった。コナヒョウヒダニ特異的 IgE は、非喫煙群の高齢層で独立した負の関係を認めた。

結論:年齢層ごとの呼吸機能関係因子を日本における大規模健康調査を基に調べた今回の研究を通して、喫 煙歴、出生体重、末梢血好酸球数、コナヒョウヒダニ特異的 IgE という関係因子は、仮説の通り、特定の年 齢層の呼吸機能に影響していることがわかった。一方、仮説と異なり、20 代という肺の成長期において、 出生体重は呼吸機能と有意な関係ではなかった。地域住民健康調査に参加出来る、比較的健康な集団であっ ても、潜在性に呼吸機能関係因子は存在するため、これらの因子を早期に同定し、介入する必要があると考 える。具体的には低出生体重群は、喫煙自体を開始しないように若年層から指導する必要があるし、末梢血 好酸球数増多群は中年層以降で呼吸機能が低下する可能性があるので、早期に末梢血好酸球数増多を同定し、気管支喘息などの背景疾患の特定および治療介入を要すると思われる。

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