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大学・研究所にある論文を検索できる 「Responses of Pinus thunbergii seedlings to waterlogging」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Responses of Pinus thunbergii seedlings to waterlogging

藤田, 早紀 東京大学 DOI:10.15083/0002006880

2023.03.24

概要

[ 別 紙 2 ]





審 査 の 結 果 の 要 旨

申請者氏名

藤田 早紀

東日本大地震の津波で破壊された海岸林では、盛土によって植栽基盤を造成しクロマツ
苗が主に植栽されているが、排水不良な植栽基盤での滞水ストレスによる生育不良や枯死
が問題となっている。植栽基盤の造成技術を改善するために、クロマツの滞水環境への応
答に関する知見が求められている。本研究では、滞水ストレスに弱い樹種であるクロマツ
の滞水応答に関する知見を得ることを目的としており、イングロースコア法による評価対
象時期を限定した細根の応答解析や、ミニライゾトロン法による継続的かつ非破壊的な細
根の観察をもとに、滞水ストレスを直接受ける根系、特に細根の成長や枯死、吸水機能に
着目して評価している。また、海岸林再生現場での植栽基盤改良には、枯死に至る強い滞
水ストレスへの応答だけでなく、枯死に至らない弱い滞水ストレスに対する応答に関する
知見が必要であり、滞水の深さや期間を変えた栽培実験が行われている。いずれの実験も
当年葉の展開完了後に滞水処理を開始し、季節的に苗に水ストレスがかかりやすい時期の
応答を解析している。
本論文は 5 章から構成されており、第 1 章では、本研究の背景と目的を述べ、第 2~4
章では異なる滞水条件での栽培実験の結果を述べ、第 5 章では、総合考察と結論を述べて
いる。第 2~5 章の概要は以下の通りである。
第 2 章では、
クロマツと滞水環境に自然分布しない広葉樹 2 種
(イタヤカエデとコナラ)

滞水環境に自然分布する広葉樹 2 種(ヤマハンノキとヤチダモ)の 2 年生苗を用いて、根
系全体を滞水条件におく 10 週間の栽培実験を行っている。ヤマハンノキとヤチダモは、滞
水条件でも細根の成長が認められ、クロマツとイタヤカエデ、コナラではほとんど認めら
れなかった。滞水条件でクロマツの細根成長が停止し、黒色化することをミニライゾトロ
ン法で確認し、クロマツで、細根の黒色化と組織密度(容積重)の低下が最も顕著である
ことを示し、10 週間の滞水処理により細根の枯死と腐朽が生じたと考察している。
第 3 章では、滞水なしの対照と、根系の下部を滞水条件におく部分滞水、根系全体を滞
水条件におく全滞水の条件で 8 週間の栽培実験を行い、滞水の深さへのクロマツ根系の応
答を調べている。全滞水では細根の成長と蒸散量がともに著しく低下し、細根の黒色化と
組織密度の低下が認められた。蒸散量の減少は細根の吸水機能の低下によると考察してい
る。部分滞水では、滞水条件にあった根系下部の細根はほとんど成長せず、黒色化と組織
密度の低下が認められた。一方、滞水していない根系上部では滞水処理期間に対照よりも
細根成長が有意に多いことをイングロースコア法で明らかにした。蒸散量は、滞水処理 4

週間後では減少し、8 週間後では回復していた。この蒸散量の回復は、滞水条件にない根
系上部での細根の成長が促進され、滞水条件にある根系下部の細根の吸水機能低下を補っ
たことによると考察している。これらの結果からクロマツは、根系全体が滞水すると適応
できないが、根系の下部のみの部分的な滞水には、細根成長の垂直分布を変化させること
で適応できることを明らかにしている。
第 4 章では、滞水なしの対照と、短期滞水(7 日)
、中期滞水(17 日)
、長期滞水(32 日)
の処理区を設定した栽培実験を行い、滞水期間の長さが滞水解除後の細根の吸水機能の回
復に及ぼす影響を調べている。短期滞水では滞水処理と滞水解除による蒸散速度の変化が
認めらなかったが、滞水解除後に対照よりも有意に多い細根成長が認められた。中期滞水
では滞水処理で低下した蒸散速度が滞水解除後に速やかに回復した。長期滞水では滞水解
除後に速やかに蒸散速度が回復する供試苗や 10 日程度経過してから回復傾向を示す供試
苗、回復傾向を 1 ヶ月間示さない供試苗など、供試苗によるばらつきが大きく、回復傾向
を示した供試苗では滞水解除後に細根成長が認められた。長期滞水で細根は黒色化したが
組織密度の低下は認められなかった。以上のことから、滞水期間が長くなると滞水解除後
に細根の吸水機能が回復し難くなることから、滞水解除後の新たな細根成長が蒸散速度回
復には必要であることが示唆された。
第 5 章では、以上の結果から、滞水ストレスへのクロマツ苗の応答特性を総括し、降雨
によって生じる滞水の水位を下げることや滞水期間を短くすることを目指した海岸林再生
現場での植栽基盤の改良工事の指針に資する知見を提示した。
以上のように本論文は、海岸林再生の主要な植栽樹種であるクロマツの滞水環境への応
答を明らかにしたものである。本論文は、弱い滞水ストレスに対する非耐性樹種の応答に
関する知見とともに、
海岸林の造林技術の改善においても重要な知見を与えるものであり、
学術面、応用面において寄与するところが大きい。よって審査委員一同は、本論文が博士
(農学)の学位論文として価値あるものと認めた。

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