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大学・研究所にある論文を検索できる 「飼料用米の乾燥調製および保管体系の合理化に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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飼料用米の乾燥調製および保管体系の合理化に関する研究

川原田 直也 三重大学

2021.02.03

概要

我が国の主食用米の需要量は国民ひとり当たりの消費量の低下と人口減少により,直近5ヶ年(2014-2018)では毎年10万tずつ減少し,過去10年間(2009‐2018年)で主食用米の作付面積は14%低下している。一方,畜産経営における2016年の純国内産濃厚飼料自給率は14%と低く,輸入飼料に大きく依存している。これらの現状を踏まえ,2015年に閣議決定された食料・農業・農村基本計画では,水田を活用し,濃厚飼料の増産が可能な作目として飼料用米の生産を推進している。現時点での畜産農家における飼料用米の潜在的な需要量は生産量の10倍程度と見込まれているものの,主食用米に比べ取引価格が安いことから、飼料用米の取組みをより一層推進するためには単収向上および生産経費の低減によるコスト削減が喫緊の課題となっている。特に乾燥調製および保管流通経費は全経費の29‐40%を占めており,単収向上により多収を実現した際にも経費の削減が困難な玄米の重量当たりにかかる乾燥調製および保管流通経費の削減が重要である。

本研究では飼料用米の乾燥調製および保管流通経費の削減が可能な技術体系の構築を目的として,第2章では主食用米において実験室規模で検討されている玄米による乾燥技術の飼料用米への適応条件およびその有効性について,実用規模の機械を用いて検討するとともに,第3章では玄米乾燥した玄米を常温条件下(野外を含む)において通年保管するための保管条件を検討した。また,第4章では体系化した玄米乾燥および常温保管技術について,経済性の面から効果的に運用するための条件を提示するとともに,乾燥調製および保管流通経費を慣行体系や経費削減が可能とされる立毛乾燥および籾米サイレージと比較検討することで本技術の有効性を明らかにすることを目的とした。

乾燥調製に関わる第2章では,インペラ式籾摺り機での生籾米の脱ぷ作業は籾米水分で16.8‐30.8%の範囲内で可能であること,籾米水分が低下するほど流動性が改善し,脱ぷ能率および脱ぷ率が向上することから,圃場内で籾米水分を低下させてから収穫することが望ましいと考えられた。乾燥作業では,循環式乾燥機を用い,玄米水分が19.3‐23.4%の籾米を13%まで乾燥させるために必要となる乾燥時間,灯油消費量,電力消費量を慣行体系と比較し,各項目とも50%以上削減されること,乾燥と脱ぷ作業を含む乾燥調製体系間の比較でも最終製品(玄米)の歩留まり,主な飼料成分,総TDN重量は同等で作業時間,電力消費量が38%削減されることが明らかとなった。

常温条件下での玄米による通年保管技術に関わる第3章では,玄米水分を13%以下とし,ポリプロピレン製の外袋とポリエチレン製の内袋を組合せ,内袋の口を強く縛り保管することで常温倉庫内および野外のいずれにおいても貯穀害虫および糸状菌を増殖させることなく,保管開始時の水分,乾物重,飼料成分値を維持したまま通年保管できることが明らかとなった。

経済性の評価に関わる第4章では,9石から82石の循環式乾燥機を用い,籾米水分25%から13%まで乾燥させる乾燥調製経費および常温条件での保管に関わる経費を試算した。その結果,籾米乾燥と籾米による常温倉庫内の保管とを組合せた慣行体系では,乾燥経費が14.5‐27.0円,保管経費が13.6円となり,乾燥調製および保管に係る費用合計は28.1‐40.6円となった。一方で本研究において体系化した玄米乾燥と野外および倉庫内での玄米による常温保管とを組合せた場合には,乾燥経費が12.9‐20.2円,保管経費が6.0‐10.0円となり,費用合計は18.9‐30.2円となった。このことから慣行の技術体系に比べ,玄米乾燥と常温保管を組合せた技術体系では乾燥調製および保管経費が削減できることが明らかとなった。経費削減が可能な玄米乾燥において乾燥経費をより一層削減するためには,可能な範囲内で立毛乾燥を併用し収穫時の籾米水分を低下させること,常温条件下において玄米での通年保管が可能な最高限度(13%程度)の玄米水分で乾燥を終了すること,循環式乾燥機の規模を拡大することが有効であると示唆された。また,玄米乾燥後の保管経費を削減するためには,保管場所の経費を大幅に削減できる野外での保管が有効であると考えられた。経費削減が可能な先行研究との比較では,玄米乾燥は立毛乾燥に比べ乾燥調製経費を25.7%削減できることが見込まれた。さらに,乾燥調製(破砕を含む),保管,輸送を含めた経費合計について,玄米乾燥と野外保管を組合せた技術体系を籾米サイレージと比較すると,県内流通ではほぼ同等の経費となり,200kmを超える広域流通では籾米に比べ減容化が可能な前者において経費削減が可能と試算された。

これらのことから,本研究によって構築された玄米乾燥と野外保管とを組合せた技術体系は,乾燥調製経費と輸送も含めた保管経費を削減する上で有効であり,生産コストの低減が強く求められる飼料用米において合理的な作業体系であると結論付けた。

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