リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「サイズ制御したマウスiPS細胞スフェロイドにおける骨芽細胞分化能の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

サイズ制御したマウスiPS細胞スフェロイドにおける骨芽細胞分化能の検討

巽, 秀人 大阪大学

2021.03.24

概要

【緒言】
抜歯や歯周病などによる歯槽骨吸収は,補綴歯科治療による審美回復あるいは機能回復を困難にする.そのため,失われた歯槽骨を再生する技術の確立は歯科補綴学にとって重要な課題であり,幹細胞,足場,生理活性物質の3要素を用いて,骨関連分野への応用を目指した再生医療研究が活発に行われている.中でも幹細胞分野において,iPS細胞を基盤とした研究開発が注目されている.

iPS細胞は三次元培養によりスフェロイドを形成し目的細胞へ分化する.近年,スフェロイドの大きさや形態の違いが細胞の分化効率や未分化性の維持に影響を及ぼす可能性が示唆されている.しかし,単層培養や振盪培養といったこれまでの分化誘導法ではスフェロイドサイズを制御することが困難であり,作製したスフェロイドのサイズが不均一となることから,スフェロイドの骨芽細胞分化制御が最適化されていないのが現状である.

そこで我々は,微細空間を付与したマイクロウェルプレート(Elplasia®,Corning)を用いた三次元培養法に着目した.この微細空間マイクロウェルプレートは,多くの均一なスフェロイドが簡便に作製可能であり,さらには,異なる微細空間規格のマイクロウェルプレートを用いることで,様々なサイズのスフェロイドが作製可能である.この特性を応用して,スフェロイドサイズを制御できれば,異なる微細空間規格によって作製したiPS細胞のスフェロイドサイズがその骨芽細胞分化に及ぼす影響について詳細な解析が可能となる.

以上を背景に,本研究の目的は,微細空間マイクロウェルプレートを用いてiPS細胞のスフェロイドサイズを制御し,スフェロイドサイズの違いがiPS細胞の骨芽細胞分化に及ぼす影響を多面的に評価することとした.

【方法】
マウスiPS細胞を3つの異なるサイズの微細空間マイクロウェルプレート(Elplasia®:直径100µm,400µm,および700µm)に播種した.各微細空間規格のプレートへの播種細胞数は30cells/spheroidとし,それぞれ作製したスフェロイドを100CS,400CS,700CS-1(CS:cell spheroid)とした.また,それらに加えて直径700µmのプレートには10,000cells/spheroidでも播種し,作製したスフェロイドを700CS-2とした.コントロールとして,マイクロウェルプレートを用いず単層培養により作製したスフェロイドを用いた.播種後,胚葉体形成2日後と4日後にレチノイン酸を添加し,iPS細胞スフェロイドを作製した.

1.作製した各スフェロイドについて直径を計測した.

2.100CS,400CS,および700CS-2ついて,HE染色,TEM画像観察,live and dead染色,TUNEL染色を行い,内部構造を観察した.

3.100CS,400CS,および700CS-2ついて,中胚葉細胞特異的遺伝子(Mox1,Sox9)および骨芽細胞特異的遺伝子(Runx2,Osteocalcin)の発現をRT-PCR解析で評価した.次に,最もサイズの差を認めた100CSと700CS-2を分散培養し,レチノイン酸で24時間中胚葉分化を行った後に,骨芽細胞分化誘導培地にて28日間培養した.

4.100CSおよび700CSにおける播種後の細胞分布をliveanddead染色で評価した.

5.100CSおよび700CSにおける骨芽細胞分化の評価として,骨芽細胞分化特異的遺伝子(Runx2,Osterix,BSP)の発現をRT-PCR解析で,細胞外基質の石灰化をAlizarin Red染色およびその吸光度で定量評価した.

6.100CSと700CS-2の培養上清を用いて,液体クロマトグラフフィー質量分析を行った.その後,700CS-2のみに発現したタンパク質の中から,発現量が多かった3種類のタンパク質についてELISA解析を行った.

試料群間の有意差検定には,一元配置分散分析(ANOVA)後にTukey法あるいはStudent’s test法を用いて行った.分析ソフトにはGraph PadIn Stat(Graphpad Software Inc,SanDiego,CA,USA)を用いた.

【結果】
1.サイズ計測により,マイクロウェルプレートを用いることで,単層培養と比較して,均一なスフェロイドの作製が可能であった.100CS,400CS,および700CS-1の各スフェロイドサイズに大きな差は認められず,700CS-2で約2倍のサイズ差を認めた.このことから,スフェロイドサイズはマイクロウェルプレートの直径によってではなく,播種細胞数を増やすことで大きくなることが明らかとなった.

2.内部構造観察の結果,最もサイズの大きい700CS-2では,内部に細胞の溶解を示唆したアポトーシスによる死細胞を含んだ2層構造となっており,700CS-2内部のアポトーシス細胞が占める面積割合は100CS,400CSと比較して有意に高かった(P<0.001).

3.RT-PCR解析の結果,700CS-2において,中胚葉特異的遺伝子(Mox1,Sox9)および骨芽細胞特異的遺伝子(Runx2,Osteocalcin)の発現が有意に促進した(P<0.001).

4.liveanddead染色の結果,100CSおよび700CS-2を分散播種後,生細胞の周囲に存在する死細胞の面積割合は700CS-2で有意に高かった(P<0.001).

5.RT-PCR解析の結果,骨芽細胞分化誘導7日後の骨芽細胞特異的遺伝子(Runx2,Osterix, BSP)の発現は700CS-2で有意に促進し(P<0.001),Alizarinred染色の結果,骨芽細胞分化誘導14,21,および28日後のいずれにおいても,700CS-2の方が100CSと比較して細胞外基質の石灰化を有意に促進した(P<0.001).

6.液体クロマトグラフィー解析により,100CSおよび700CS-2を分散培養後の培養上清中に発現するタンパク質に違いがあることが示唆された.その後のELISA解析の結果,100CSと比較して,700CS-2でSerpinh1,Laminin,およびCol4A1の発現量が有意に高かった(P<0.001).

【結論】
本研究の結果,微細空間マイクロウェルプレートを用いてスフェロイドサイズを効果的に制御することで,骨芽細胞分化を有意に促進することが可能となった.

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る