乳量と体細胞スコア悪化はTHI60~65以上から:暑熱ストレスの影響を知る その2
概要
乳量と体細胞スコア悪化はTHI60∼65以上から:暑
熱ストレスの影響を知る その2
著者
雑誌名
巻
号
ページ
発行年
URL
萩谷 功一
デーリィマン
70
7
70-71
2020-07
http://id.nii.ac.jp/1588/00004655/
乳量と体細胞スヨア悪化は
THI60 ~ 65以上から
功
体細胞スコア
暑熱ストレスの大きさを表す指
THI、 体細胞スコアに対して
検定日8日前のTHIを関連
付けることで調査を進めた。
平均気温10℃程度が
乳牛の快適な温度
般に温湿度指数(THI
されている(詳しくは本誌6月号
-
8LJ 参照)。 国内における乳
2.6
2.5
2.4
2.3
化した値である体細胞スコアにつ
次に確認する点は、 暑熱ス
聞や風速の影響が大きいが、 舎飼
いて、 検定日から10日前までの
トレスの影響が表れ始める
し、主体の日本では、 それらの影響
THIとの関係の大きさを調査した
THIの値(闇値ニしきいち)で
が小さいためだと思われる。以降、
(図 1 )。 その結果、 乳量への影響
ある口 検定日乳量と検定3円前の
ら暑熱コ
筆者の分析においては、 全て 1 日
のピ
クが検定日の3日前、 体細
THIの関係を見ると、 THI60~
量が落官
クが検定
65、 すなわち気温17℃前後に闇
牛にとて
日の8 9目前であることが分か
値がある(図 2 、 6 月号表)。 闘値
が感じ之
を超え る と徐々に 乳 量が 落 ち、
あると却
表れるまでに3日間、 体細胞スコ
THIが高くなるほど乳量の落ち方
体細店
アに表れるまでに8~9日間のタ
が大きいことが分かる。 THI20
THIが開
イムラグがあることを示している。
~60で乳量の変化は見られない。
未満で和
し 3 カ玉、51
ー
胞スコアへの影響のピ
の平均気温 と平均湿度から算出し
ー
~
た従来のTHIを使用する。
る。 これは、 暑熱の影響が乳量に
=不快指数とも呼ばれる)が使用
ストレス力事L量・乳質に
表れるまでのタイムラグ
牛の暑熱ストレス耐性に関する分
20
個体ごとの暑熱ストレス耐性を
暑熱ストレスの影響はまず採食
THI20は気温がマイナスである
般に公表
調査するに当たり、 幾っか確認す
量の減少に表れる。 その影響が3
される気象観測所の記録である。
ることがあるc その つは、 乳牛
日後の乳量に見られ、 さらに、 そ
ことから、 1 日の平均気温がマイ
ナスで あっても乳量に影響するこ
る。手L 左
各都府県、 北海道であれば各振興
が暑熱ストレスを受け、 その影響
の数日後に健康の指標で ある体細
とはないといえる。
言及し大
タは牛群検定記録と
一
一
局内に 1 カ所の代表地点を定め、
性は認められなかった。 理由は、
放牧主体の海外の環境では日照時
山
kg
-司
日本の環境では補正THIの優位
』司
七効性を指摘するものもあるが、
h司
I」)。 海外の論文には補rETHIの
骨
THIは日照時間や風速で補正さ
れることもある(以下、 「補正TH
幽・・・体細胞スコア
胞スコフ
しかし、 17℃を超えた辺りか
.
効であることを確認した。
.
’
相対湿度を利用することが最も有
,
下で試した結果、 平均気温と平均
ー園田乳量
~30辺
、
図2
27
aF
れ、 計算方法には幾つかのパタ ー
ンがある。 それを日本の気象環境
暑熱ストレスの影響力f表れるまでのタイムラグ
図1
,
,
,
THIは温度と相対湿度から計算さ
、
,
,
,
,
,
,
,
,
,
,
牛 群 検 定日 の 記 録 を 分 析し た。
小↓)
暑熱ストレスの影響の大きさ(
?大)
(
その地点における毎日のTHIと
-
-
析を行うに当たり、 利用できるデ
ー
70
2.7
定日の乳量と、 体細胞数をスコア
曾飼い主体の日本では
従来の THI 用いた分析が有効
80
一
(タイムラグ)である。 そこで、 検
べる。(筆者)
~
これらの結果を踏まえ、 乳
が記録に表れるまでの期間の長さ
今月は乳量および体細間数に対する暑熱ストレスの影響について述
標として
やすい。
量 に 対 し て 検定日3日前の
萩谷
帯広畜産大学生命・食料科学研究部門准教授
一
とタイムラグについて理解し
その2
暑熱ストレスの影響を知る
函3
胞スコアが変化すると考える
暑熱ストレスに対する乳量の変化
(bar = 95%信頼区間)
26
乳
量
25
24
令
「
噌や
ぐダ
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0
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Tf宜測定日
'
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23
20
25
30
35
40
45
50
THI
5!
3ア悪化は
65以上から
とタイムラグについて理解し
2.7
量 に対し て 検定日3日前の
体細胞スコア
可
これらの結果を踏まえ、 乳
萩谷
}科学研究部門准教授
THL 体細胞スコアに対して
功
検定日 8 日 前の THI を関連
付けることで調査を進めた 口
平均気温10℃程度が
乳牛の快適な温度
が記録に表れるまでの期間の長さ
(タイムラグ)である。 そこで、 検
定円の乳量と、 体細胞数 をスコア
暑熱ストレスに対する体細胞スコアの麦化
(bar= 95%信頼区間)
2.8
やすい。
その2
知る
図3
胞スコアが変化すると考える
》
2.6
2.5
2.4
2.3
化した値である体細胞スコアにつ
次に確認する点は、 暑熱ス
、 舎飼
いて、 検定日から10日前までの
トレスの 影 響 が 表 れ 始 め る
の影響
THIとの関係の大きさ を調査した
THIの値(関{菌ニしきいち)で
。以降、
vて1 日
(図1 )。 その結果、 乳量への影響
ある。 検定日乳量と検定3日前の
ら暑熱ストレスの影響によって乳
も低いとするならば、 乳牛にとっ
のピ
クが検定日の3日前、 体細
量が落ち始める。 このことから乳
て J快適な環境は1日の平均気温が
算出し
胞スコアへの影響のピ ー クが検定
牛にとって、 日本の猛暑は、 人聞
10℃程度のときである。
日の8 ~ 9日前であることが分か
THI の関係 を見ると、 THI60 ~
65、 すなわち気温17℃前後に関
値がある(図 2、 6月号表)。 関値
る口 これは、 暑熱の影響が乳量に
を超え る と徐々に 乳 量 が 落 ち、
あると想像できる。
表れるまでに3日間、 体細胞スコ
THI が高くなるほど乳量の落ち方
が大きいことが分かる。 THI20
、
A ラク
ー
アに表れるまでに8~9日間のタ
イムラグがあることを示している。
25
20
30
35
40
45
が感じる以上に大きなストレスで
未満で統計的な違いは認められな
いが、 50 前後で最も低く、 T 司I20
確認す
量の減少に表れる。 その影響が3
ことから、 1日の平均気温がマイ
~30辺りでわずかに上昇してい
、 乳牛
日後の乳量に見られ、 さらに、 そ
ナスであっても乳量に影響するこ
る。 乳 牛 における最適 な THI 1こ
の影響
の数日後に健康の指標である体細
とはないといえる。
70
75
80
[参考文献】
Hagiya K, K, Bamba I, Osawa T,
Atagi Y, Ta k usari N, Ito h F,
Yamazaki T. 2 019. Length of lags
iロresponses o f mil k yi eld and
somatic cell score on test day to
heat stress in Holsteins . Animal
Science Journal 90, 613-618.
言及した報告は多くないが、 体細
胞スコアの値が THI50 前後で最
し か し、 17℃ を超えた辺りか
』司
』司
血『
骨
曲
.
,
,
,
,
,
,
,
,
,
,
,
,
,
,
-
-
60 で乳量の変化は見られない。
図2 暑熱ストレスに対する乳量の変化
(bar= 95%信頼区間)
プ包フィル
4F
はぎや こういち
1970年生まれ、札幌市山
身。 93年帯広畜産大学畜
26
乳
量
65
次号は暑熱ストレス耐性の個体
THIが関値である(図3)。 THI60
THI20は気温がマイナスである
kg
27
60
体細胞スコアも乳量と同程度の
暑熱ストレスの影響はまず採食
5響が表れるまでのタイムラグ
55
差と、遺伝的改良について述べる。
耐性 を
~
50
THI
産学部家畜生産学科卒業。
94 ~ 98年開十勝家畜人
工授精所に入り、この問 、
25
帯広畜産大学大学院修了、
98 ~ 2001年岩手大学連
合大学院連合農学研究科
修 了、同年(一 社)日本ホル
24
スタイン登録協会北海道
支局入札(独)家音改良セ
キ
I>\-令
母、
や
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THI測定日
母、
令
令
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