リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「オイル高蓄積珪藻Fistulifera solarisの脂質代謝に関わるオルガネラ間相互作用の解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

オイル高蓄積珪藻Fistulifera solarisの脂質代謝に関わるオルガネラ間相互作用の解析

野々山, 智美 ノノヤマ, トモミ 東京農工大学

2020.07.31

概要

オイル高蓄積珪藻Fistulifera solarisは高いトリアシルグリセロール(TAG)含有率を示すことから、当該株より抽出したTAGを利用したバイオ燃料生産の実現が期待されている。これまでに、当該株を用いた屋外大量およびバイオ燃料生産プロセスが確立されており、コスト試算もされているが、経済産業省が2030年度までの目標として掲げるバイオジェット燃料価格と比較すると、現状では約2倍の生産コストが必要である。この課題の解決に向けてF. solarisのTAG代謝経路解明が求められており、これまでにゲノム解析、トランスクリプトーム解析、リピドーム解析が行われてきたがTAG分解経路および合成経路ともに未知の機構も多く残されている。そこで本研究は、近年様々な生物種において細胞の代謝に関与することが明らかになってきた「オルガネラ間相互作用」に着目した解析を行うことで、F. solarisにおけるTAG代謝機構を解明することを目的とした。

 第1章では、珪藻で報告されているTAG代謝経路を総括した。その結果、動物や高等植物等で重要なTAG分解経路として報告されているリポファジー(オイルボディ‐液胞間相互作用)が、珪藻で解析されておらず、TAG生産性向上に向けた代謝改変のターゲットになり得ることを見出した。また、F. solarisが他の珪藻と比較して高いTAG生産性を示す一因として、二次共生の過程により生じた葉緑体と小胞体(Endoplasmic reticulum: ER)の代謝経路の局在パターンの多様性に基づくものである可能性が考えられた。以上より、バイオ燃料生産時のTAG生産性向上に向け、F. solarisのオイルボディ液胞間相互作用および葉緑体‐ER間相互作用の解析が求められることを示し、本研究の目的と意義を明らかにした。

 第2章では、液胞によってオイルボディを分解するオートファジーの一種であるリポファジーが、F. solarisで起こり得るかどうか評価した。オートファジーの阻害剤を用いた実験結果より、オートファジーが栄養源再添加に伴うTAG分解に影響することが示唆された。オートファジーとTAG分解との関連は、トランスクリプトーム解析の結果より得られたTAG分解時のオートファジー関連遺伝子の発現向上からも裏付けられた。また、共焦点レーザー顕微鏡を用いた液胞とオイルボディの観察結果から、栄養源再添加に伴うTAG分解時には液胞がオイルボディを被覆する割合が増加することを明らかにし、TAG分解に液胞とオイルボディの物理的接触が関与することを示した。以上より、オルガネラ間相互作用の一種であるリポファジーはF. solarisに存在することを明らかにした。本研究により、F. solarisを含めた珪藻で初めてリポファジーを確認した。また、オートファジー阻害剤の添加により、TAG分解条件において約1.4倍のオイルボディ体積向上を実現し、リポファジーの阻害がバイオ燃料生産に向けたTAG生産性向上に応用可能であることを示した。

 第3章では、TAG合成を担う葉緑体とERに着目し、F. solarisに特異的な葉緑体およびER上の代謝経路の特定を試みた。珪藻綱あるいは珪藻を三次共生して進化した渦鞭毛藻由来の108種のゲノム情報またはトランスクリプトーム情報を用い、F. solarisのゲノム情報と比較した。その結果、分岐鎖アミノ酸合成経路、リシン合成経路、ピルビン酸ハブ経路、スクアレン合成経路の合計4経路に関して、F. solarisが特異的な局在パターンを有する可能性を示した。このうち、特に分岐鎖アミノ酸合成経路とリシン合成経路に関しては、通常は葉緑体局在する酵素の一部がERに局在することをinsilico解析で予測した。局在パターンが変化した酵素の多くは、TAG合成の基質として利用されるNADPHを要求する反応を触媒するものだった。また、F. solaris中の分岐鎖アミノ酸合成経路のケトール酸レダクトイソメラーゼ(KR)の局在を、GFPを用いて確認した。その結果、他の珪藻とは異なりF. solarisでは、KRが葉緑体に局在しないことを確認した。KR遺伝子は、F. solarisではTAG合成時に発現が大幅に向上することから、TAG合成に寄与している可能性を示した。以上より、TAG合成時の基質を生成する酵素群の局在パターンが葉緑体とER間で変化することで、F. solarisは他の珪藻と比較して高いTAG生産性を獲得した可能性を示した。本研究により、従来のオミックス解析は特定できなかったF. solarisのオイル高蓄積能に寄与する代謝経路の候補を絞り込むことができた。

 第4章では、本研究により新たに明らかになったF. solarisにおけるTAG代謝機構をまとめた。

 本研究では、オルガネラ間相互作用に着目したTAG代謝機構の解析を珪藻で初めて実施した。その結果、これまでに珪藻で発見されていなかったTAG分解機構を発見した。またF. solarisに特異的なTAG合成に関連する代謝経路の局在パターンを特定した。今後は、本研究で得られた知見に基づいた代謝改変を行うことで、バイオ燃料生産時のTAG生産性向上につながると期待される。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る