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AUTOLOGOUS RETINAL TRANSPLANTATION AS A PRIMARY TREATMENT FOR LARGE CHRONIC MACULAR HOLES

田中 慎 横浜市立大学

2020.03.25

概要

1. 序論
黄斑円孔は硝子体の変化によって起こる中心窩に円孔を生じる網膜硝子体界面疾患である. 中心窩に円孔ができることにより, 歪視, 視力低下を自覚する. その治療は 1991 年に硝子体手術が黄斑円孔の閉鎖に有効であると示されたのち, 硝子体手術が第一選択の治療である. 硝子体手術は後部硝子体皮質による牽引を解除しガスタンポナーデを行うことで黄斑円孔の閉鎖を促進すると考えられている. 現在では上記に加え, 網膜の最も内層である, Inter limiting membrane (ILM) peeling 法を併用することで, 初回の円孔の閉鎖率は 90%と報告されている(Kadonosono et al., 2000).

しかしながら円孔径が 650μm を超える巨大黄斑円孔では初回閉鎖率は 74%と低下する.また疾患罹患期間が長い慢性黄斑円孔では予後は悪くなる. そこで、剥離した ILM を翻転させ円孔内に埋め込む Inverted ILM flap 法, そこに自家血液をさらに加えるもの, 水晶体前嚢, 後嚢を flap として黄斑円孔に埋める等の術式が開発されている. しかしながら, これらの方法を用いても, 慢性巨大黄斑円孔では視力改善はもとより, 円孔の閉鎖が得られない症例も存在した. 最近 Grewal らによって発表された円孔に自家網膜を移植する術式は, 初回治療で円孔閉鎖が不能であった症例に対して, 88%の円孔閉鎖と視力の改善を報告している(Grewal et al., 2019).

黄斑円孔では円孔罹患期間が長いほど, 視力予後は悪くなり, また円孔閉鎖率も低下する. Grewal らの結果を受け我々は治療成功率が低い慢性巨大黄斑円孔に対して, 初回治療として網膜自家移植を行いその成績を検討した.

2. 方法
本研究は横浜市立大学の倫理委員会において, Duke 大学(North Carolina, USA)での倫理委員会で承認を受けたのち共同研究として承認された. 診療情報記録, 手術記録より対象となる患者を後ろ向きに調べた. 対象は, 慢性巨大黄斑円孔で手術加療を受けていない患者である. 最小円孔径が 600μm, 最大円孔径 (基底部)が 1000μm 以上でかつ黄斑円孔の罹患期間が 1 年以上あるものとした. 対象となった 7 人の患者は横浜市立大学附属市民総合医療センターで 2015 年 4 月 1 日から 2017 年 1 月 10 日間に手術を行った患者である. 主要評価項目は術後 12 か月時における円孔の閉鎖および視力の評価である. 副次評価項目は手術合併症の評価, 術後 3, 6, 9, 12 か月時における光干渉断層計 (OCT, Heidelberg Engineering, Heidelberg, Germany), 超広角眼底写真 (Optos, Marlborough, MA, USA)による形態の評価, 12 か月時における Ellipsoid zone (EZ) の欠損の長さ (μm) の評価と Microperimetry 3 (MP3, Nidek, Aichi, Japan)による網膜感度の評価である.

手術方法は, 硝子体切除の後, 視神経乳頭より 2 乳頭径下方の鼻下側網膜に 47G マイクロニードルを用いて灌流液を注入し, 網膜剥離を作成した. その領域から摂氏と鉗子を用いて直径 1500μm 程度の網膜全層の移植片を採取し, その移植片を黄斑円孔に埋め込んだ.網膜を採取した場所は周辺部に網膜光凝固を行なった. 眼内を液ガス置換し, 六フッ化硫黄(SF6)ガスを注入したのちに終刀とした. 患者は 3 日間うつむきの姿勢をとった.

3. 結果
7 眼 7 患者の慢性巨大黄斑円孔が対象となった. 平均年齢は 71.4±7.9 歳で男性 5 眼, 女性2眼であった. 平均疾患罹患期間は 16 か月, 平均最大円孔径(基底部), 平均最小円孔径はそれぞれ 1214±145μm, 643±96μm であった. 平均眼軸長は 24.56mm であり, 平均矯正視力は 1.10LogMAR, 少数視力では 20/190 であった. 術後 12 か月では平均矯正視力は術前矯正視力 1.10 (20/190)から 0.68 (20/95)と術前と比較して有意な改善がみられ (p= .001, Mann-Whitney U test), 2 段階以上の改善が 5 眼, 変化がみられなかったものは 2 眼あった. 術後 12 か月の OCT において 7 眼全てに移植片による黄斑円孔の閉鎖がみられた副次評価項目である EZ の欠損の長さは, 術前が 1089±403.8μm であったのに対して術 後 12 か月では 921±129μm と減少していた (p = .09). 視力が改善した 5 眼はMP3 においても移植片において光刺激に対する応答がみられたが, 視力が不変であった 2 眼では移植片において光刺激に対する応答はみられなかった. OCT において, 移植片と周囲の網膜の接合部は時間を経るごとに滑らかになっていた.

手術の合併症として, 1 眼において移植片が上下反対に生着したが, 円孔が閉鎖していたため, 再手術は行わなかった. また囊胞様浮腫が移植から 3 か月後に 1 眼にみられたため,ステロイドのテノン嚢下注射を施行したところ改善が見られた. 増殖硝子体網膜症や網膜剥離, 硝子体出血その他の合併症はみられなかった.

4. 考察
本研究は Grewel らによる網膜自家移植術よりも円孔閉鎖率, 術後視力が良い傾向にあった. これは我々の症例は初回治療であるためと考えられた. また移植片は 1 年に渡って生着し, 円孔を閉鎖していた. 蛍光眼底造影検査の所見からは, 網膜血管からの灌流はみられず脈絡膜から栄養を受けていると考えられた. また視力の向上と移植片内に MP3 で光刺激がみられこと, 移植片内に視細胞の存在をしめすEZ が確認されることから, 網膜自家移植術では, 慢性黄斑円孔で損傷した視細胞に代替的なシナプス形成が起こり, 移植片に光刺激がみられた仮説が考えられた(Lewis et al., 1998).
慢性巨大黄斑円孔では初回治療として網膜自家移植が有効である可能性が示唆された.

参考文献

Grewal, D. S., Charles, S., Parolini, B., Kadonosono, K. & Mahmoud, T. H. 2019. Autologous Retinal Transplant for Refractory Macular Holes: Multicenter International Collaborative Study Group. Ophthalmology, 126, 1399-1408.

Kadonosono, K., Itoh, N., Uchio, E., Nakamura, S. & Ohno, S. 2000. Staining of internal limiting membrane in macular hole surgery. Archives of Ophthalmology, 118, 1116-1118.

Lewis, G. P., Linberg, K. A. & Fisher, S. K. 1998. Neurite outgrowth from bipolar and horizontal cells after experimental retinal detachment. Investigative Ophthalmology & Visual Science, 39, 424-434.

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