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大学・研究所にある論文を検索できる 「Influence of work, family, and personal characteristics on socioeconomic inequalities in long sickness absence: the Japanese civil servants study」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Influence of work, family, and personal characteristics on socioeconomic inequalities in long sickness absence: the Japanese civil servants study

野瀬 早織 富山大学

2022.03.23

概要

〔目的〕
 医療費の増加や労働生産性の低下など病休が社会に与える影響は大きい。2015年における病休の直接および間接費用は国内総生産(GDP)の3.2~5.7%を占め、2030年には3.4~6.7%まで増加することが予想されている。日本の公務員においても、2006年以降、長期病休取得率が高止まりしている状態であり、病休を減らすことは個人や社会にとって重要である。
 これまでの研究では、高齢、仕事ストレスの多さ、長時間労働、仕事満足度の低さ、独身者、睡眠の悪さ等それぞれの因子が病休と関連があることが示されている。また、女性は男性よりも病休が多いという性差があることが知られている。さらに、病休に関する重要な因子として、社会経済的地位(SES)の差が病休に関連があることも知られており、低SESの労働者は高SESと比較して病休が多いことも示されている。
 このようにSESや仕事、家庭等の個々の因子と病休についての研究は多くあるが、病休におけるSES差が仕事、家族、および個人の特性によってどのように説明されるかを包括的に取り扱った研究は少ない。さらに、因果関係を明らかにするために、縦断研究が必要であるが、仕事、家族、個人の特性を包括的に考慮し、病休に関するSESの違いに焦点を当てた縦断研究はない。そこで、今回の研究では、社会経済的要因による長期病休の格差が、仕事、家庭および個人の特性によって説明できるか、横断的および縦断的に明らかにすることを目的とした。

〔方法と結果〕
研究1:長期病休の社会経済的要因としての仕事と家庭(横断研究)
 対象者は日本公務員研究の2003年(第2回)の参加者とした。日本公務員研究とは某自治体の地方公務員を対象とした悉皆調査で、1998年より約5年ごとに施行されている。2003年は4272人(回収率79.2%)で、20-65歳で質問項目に欠損のない3080人(男性2091人、女性989人)を分析対象とした。統計解析は、ロジスティック回帰分析を用いて長期病休(過去1年間で7日以上の病休取得)とSESの関連を、仕事、家庭特性を調整し評価した。その結果、男女ともに職位が低い人の方が長期病休が多かったが、男性のみ有意性が示された(調整済みオッズ比(OR):2.30)。仕事や家庭特性で調整しても男性の職位が低い人は長期病休が有意に多かった(OR:1.98)。他に男性では、配偶者同居なし、睡眠の質の悪さ、慢性疾患ありは長期病休が多かった(それぞれのOR:2.07、1.92、2.18)が、長時間労働の人は長期病休が少なかった(OR:0.48)。一方、女性では、睡眠の質の悪さ、慢性疾患ありのみ長期病休が多かった(OR:2.30、1.88)が、長時間労働(9-11時間、11時間以上/日)の人は長期病休が少なかった(OR:0.32、0.24)。

研究2:長期病休の社会経済的要因:仕事、家族、個人特性の役割(縦断研究)
 対象者は日本公務員研究の2003年(第2回)、2014年(第4回)の参加者とした。2014年は3997人(回収率87.8%)で、2003年から2014年まで追跡できた1818人の中で、2003年の時に20-55歳で質問項目に欠損のない1562人(男性1110人、女性452人)を分析対象とした。統計解析は、ロジスティック回帰分析を用いて2014年の時点での長期病休とベースライン時(2003年時点)でのSESの関連を、ベースライン時の仕事、家庭、個人特性を調整し評価した。その結果、男性では2003年時点で職位の低い人は、2014年時点で長期病休が有意に多かった(OR:1.75)が、仕事特性で調整するとその有意性は消失した(OR:1.65)。一方、女性で職位の低い人は長期病休が有意に少なかった(OR:0.26)。他に、男性では、短時間労働、子ども同居なし、慢性疾患あり、ベースライン時での長期病休ありの人は長期病休が多く(それぞれのOR:2.08、1.82、2.50、3.69)、仕事要求度の高い人、長時間労働の人は長期病休が少なかった(それぞれのOR:0.50,0.25)。女性では、子ども同居なし、ベースライン時での長期病休ありの人は長期病休が多く(それぞれのOR:2.59、3.48)、仕事要求度の高さは長期病休が少なかった(OR:0.33)。

〔考察〕
 以上から、低職位の男性は長期病休が多いが、仕事特性で説明されることが分かった。一方、低職位の女性は長期病休が少なかった。女性では、高職位の人のストレスがより多いことや、低職位の人の半数以上が専門職(看護師・保健師・教師等)であることも影響していると考えられる。また、長時間労働や仕事要求度の高さについて、過去の日本公務員研究でそれらは身体的・精神的健康度が低いことが示されており、今回の結果から健康ではないのに休めない可能性が示唆された。一方で、仕事や子どもの存在が働く意欲に繋がり、ワークエンゲイジメントが保たれ、長期病休が少ないことに繋がる可能性も考えられる。短時間労働やベースライン時に長期病休を取っていた人は、育児・介護や自身の疾患等が考えられ、ストレス等から病休に繋がる可能性が高いため、追跡後でも長期病休を取るリスクが高いと考えられる。

〔総括〕
 今回の研究では、社会経済的要因による健康格差について、仕事、家族、個人特性の役割を、包括的に、また横断的および縦断的に評価した。低職位の男性は長期病休が多いが、それは仕事特性によって説明されることや、低職位の女性は長期病休が少ないことが示された。また、長時間労働、仕事要求度の高さ等、負荷がかかる環境でも「健康ではないのに休めない」という特徴が示された。一方、仕事の負荷や子どもとの同居は日本の公務員集団では、ワークエンゲイジメントや働き甲斐になり、長期病休が少なくなった可能性もある。短時間労働の人や過去に長期病休を取っていた人は長期病休が多いことも示され、長期病休を減らすためには、働き方を見直し、病休制度を構築し、短時間労働の人や長期病休歴がある人のケアやサポートが必要である。

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