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大学・研究所にある論文を検索できる 「Novel Prognostic Implications of DUPAN-2 in the Era of Initial Systemic Therapy for Pancreatic Cancer」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Novel Prognostic Implications of DUPAN-2 in the Era of Initial Systemic Therapy for Pancreatic Cancer

砂川, 祐輝 名古屋大学

2021.07.19

概要

【緒言】
 膵癌の悪性度は高く、予後の改善へ向けて、近年、様々な治療戦略が試みられている。中でも、新規抗癌剤の普及に伴い、抗癌剤や放射線治療による術前初期治療はめざましく進歩してきた。現在、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインでは切除境界域(BR)膵癌への術前治療が推奨され、切除不能(UR)膵癌においても、根治術へ向けた初期治療の有用性の報告が散見されるようになった。
 CA19-9 や DUPAN-2 は膵癌の診断や再発治療における治療指標として頻用される。しかし、膵癌術前初期治療における腫瘍マーカーの意義は、CA19-9 に関するものがわずかに報告されるのみで、まだ十分に議論がなされていない。本研究では、膵癌術前初期治療における CA19-9 と DUPAN-2 の臨床的意義、および予後との関連を評価した。

【方法】
 2010 年 4 月から 2018 年 7 月までに術前初期治療後に切除術を施行した膵癌 99 例のうち、CA19-9 が検出感度未満であった 4 例を除外した 95 例を対象とした。
 術前初期治療導入前に CT 画像をもとに NCCN ガイドラインに準じて切除可能性分類を評価し、切除可能(R)膵癌と BR 膵癌には数か月の、UR 膵癌には 8 か月以上の初期治療を行った。治療レジメンは S-1 療法、gemcitabine + nab-paclitaxel 療法、gemcitabine+ S-1 療法、FOLFIRINOX 療法などに加え、腹腔内 paclitaxel 投与や化学放射線療法を一部に適応した。
 術前治療終了時の CA19-9 と DUPAN-2 正常値化の有無を調査し、無再発生存期間 (RFS)、全生存期間(OS)との相関を後向視的に解析した。

【結果】
 患者背景は、年齢中央値が 66 歳、男性 44(46%)対女性 51(54%)例で、切除可能性分類は R 膵癌 7(7%)例、BR 膵癌 63(67%)例、UR 膵癌 25(26%)例であった。また、腫瘍主座は膵頭部 77(81%)例、膵体尾部 18(19%)例だった。術前初期治療レジメンは FOLFIRINOX 療法 9(9%)例、gemcitabine + S-1 療法 7(7%)例、gemcitabine + nab-paclitaxel療法 19(20%)例、S-1 + 放射線療法 39(42%)例、その他 21(22%)例であった(table 1)。術前初期治療期間は全体で中央値 2.8 か月、切除可能性分類別では R 膵癌 2.1 か月、 BR 膵癌 2.7 か月、UR 膵癌 9.7 か月で有意差を認めた(p<0.001)。初期治療前後の腫瘍マーカーの値については、CA19-9 は全体で初期治療前は 17%が陰性であったが、初期治療後は 44%で陰性となり、中央値は 135U/ml から 50U/ml へ減少していた。また、初期治療後の CA19-9 中央値は R 膵癌で 57U/ml、BR 膵癌で 68U/ml、UR 膵癌で 20U/mlで、有意差を認めた(p=0.020)。DUPAN-2 は全体で初期治療前は 45%で陰性だったが、初期治療後は 73%で陰性となり、中央値は 127U/ml から 44U/ml へ減少していた。また、初期治療後の DUPAN-2 中央値は R 膵癌で 280U/ml、BR 膵癌で 62U/ml、UR 膵癌で 25U/ml で、有意差を認めた(p=0.004) (table 2)。
 全 95 症例を対象とした場合、初期治療終了時の CA19-9 の正常化群(C-low 群)と非正常化群(C-high 群)の RFS は、それぞれ 22.1 か月、18.1 か月で有意差を認めなかった。また、OS も 48.0 か月、not reached であり有意差を認めなかった。一方、初期治療終了時の DUPAN-2 の正常化群(D-low 群)と非正常化群(D-high 群)の RFS は、それぞれ 24.1 か月、14.2 か月で、有意差を認めた(p=0.003)。また、OS も not reached、29.6か月であり、有意差を認めた(p=0.003) (figure 1)。
 切除可能性分類によりサブグループ解析を行うと、BR 症例では D-high/low 群間で RFS(中央値 D-high 群:14.2 か月 / D-low 群:20.1 か月, p=0.052)と OS(中央値 D-high群:29.6 か月 / D-low 群:not reached, p=0.081)に傾向差を、UR 症例では D-high/low 群間で RFS(中央値 D-high 群:12.1 か月 / D-low 群:25.1 か月, p<0.001)と OS(中央値 D-high 群:11.4 か月 / D-low 群:not reached, p<0.001)に有意差を認めた(figure 2,3)。正常値化率は、CA19-9 が 44%、DUPAN-2 が 76%で、CA19-9 に比べ DUPAN-2 が有 意に正常化し易く(p<0.001)、変化率は中央値で CA19-9 がマイナス 64.4%、DUPAN-2がマイナス 29.8%で、DUPAN-2 に比べ CA19-9 が有意に高い減少率を示した(p=0.004)。また CA19-9 と DUPAN-2 の変化率の相関は、相関係数 0.367 で、強い相関は認めなかった。正常値化までの日数は中央値で CA19-9 が 71 日、DUPAN-2 が 57 日で、有意差を認めなかった(p=0.281) (table 3, figure S1)。
 生存期間について多変量解析を行うと、RFS・OS 共に DUPAN-2 非正常化が唯一の独立予後因子であった(RFS, HR:2.180, 95%CI:1.16-4.08, p=0.015、OS, HR:2.806,95%CI:1.19-6.62, p=0.018)。一方、術前治療期間は予後因子ではなかった(table 4)。

【考察】
 膵癌における CA19-9 の感度は 70-80%、DUPAN-2 の感度は 50-60%で CA19-9 の方が感度が高い。しかし、ルイス抗原陰性患者においては CA19-9 は偽陰性を呈する。両者にはそれぞれ特徴があり、膵癌診療においては CA19-9 と DUPAN-2 の両方を測定することが推奨される。本研究では、DUPAN-2 は CA19-9 に比べ正常値化し易く、一方で CA19-9 は DUPAN-2 に比べ高い減少率を示し、また、それぞれの変化率の間に高い相関を認めなかった。ゆえに、膵癌術前初期治療においても、CA19-9 と DUPAN-2にはそれぞれ特徴があり、両者を測定することが臨床的に重要であると考える。
 膵癌術前初期治療における腫瘍マーカーについての報告は少ない。Boone らは、 CA19-9 の変化率は、R0 切除率・病理学的腫瘍縮小率・OS と関連することを示し、 CA19-9 の 50%以上の減少が生存期間を改善することを報告している。Tzeng らは、切除および非切除膵癌の術前治療中の CA19-9 正常値化が OS 延長に寄与すると報告している。Takahashi らは、術前治療前の CA19-9 の値と治療中の CA19-9 の変化率で定義されるクラス分類が OS と関連することを示している。Murakami らは、CA19-9 と DUPAN-2 のどちらかの正常値化が OS を改善すると報告している。この報告では CA19-9 測定不能例にのみ DUPAN-2 を測定しており、調べ得た範囲では本研究が膵癌術前初期治療における初の DUAPN-2 単独因子としての報告である。
 本研究で、DUPAN-2 の正常値化が予後に寄与したのに対し、術前初期治療期間が予後へ寄与しなかったことは興味深い。ゆえに、DUPAN-2 の正常値化は膵癌術前初期治療の効果判定の指標となるだけでなく、治療完遂の指標となる可能性がある。

【結論】
 膵癌術前治療において、DUPAN-2 正常値化は CA19-9 よりも鋭敏な予後因子であると考えられた。現在、UR 症例には長期間の術前治療が施行されているが、DUPAN-2正常値化が切除のタイミングを決定する因子となる可能性が示唆された。

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