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大学・研究所にある論文を検索できる 「Relationship between food crushing and oral function in elderly persons requiring nursing home care」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Relationship between food crushing and oral function in elderly persons requiring nursing home care

山脇 加奈子 広島大学

2022.03.23

概要

要介護高齢者は多くの場合,歯の喪失や口腔機能の低下が生じており,中でも認知機能が低下した認知症高齢者は歯が喪失しても義歯を装着せずに食事を摂取している者が少なくない.本研究は,施設入所要介護高齢者に提供する食事の性状,特に硬さを決定する口腔機能の解明を目指し,硬さの異なる検査食品の口腔内での粉砕の可否および粉砕に用いる口腔内の器官および部位を調査するとともに,中でも舌による食品の粉砕可否と舌圧との関連を明らかにすることを目的とした.

 対象者は介護療養型医療施設入所中の要介護高齢者72名とした.検査食品には,30mm(横)×20mm(縦)×6mm(厚さ)で硬さが約1.51×104N/m²のゼリー(soft jelly: SJ)と約2.73×104N/m²のゼリー(hard jelly: HJ)を用いた.対象者に検査食品1個を口腔内で咬んでも良いので自由に潰すよう指示し,この潰す動作による検査食品の粉砕の可否(粉砕可否)と粉砕に用いた口腔内の器官と部位(活用部位)を目視にて観察・評価するとともに対象者への問診にて確認した.次に,同じゼリーを咬まずに舌と口蓋で潰して粉砕することの可否を評価した.その他の評価項目として,義歯使用の有無,残存歯あるいは義歯による咬合支持の有無,食事形態,Mini nutritional assessment short form(MNA-SF),Mini mental state examination(MMSE)を調査するとともに舌圧を測定した.

 義歯の使用者数は72名中36名であり,25名の対象者が咬合支持を喪失した状態であった.食事形態は,普通食が27名に提供されており内2名は義歯不使用で咬合支持を喪失した状態であった.刻み食は35名,嚥下調整食は10名に提供されていた.

 SJとHJの粉砕を試みた活用部位は,全ての対象者で一致し,「上顎歯と下顎歯の間(歯-歯)」が41名,「どちらか一方の顎の歯と顎堤の間(歯-顎堤)」が15名,「上顎堤と下顎堤の間(顎堤-顎堤)」が10名,「舌と口蓋の間(舌)」が6名であった.また,活用部位が「舌」であった6名中5名は咬合支持を有していた.MNA-SFが12以上の栄養状態が良好な者は10名で内9名の活用部位は「歯-歯」であった一方で,「舌」の者はいなかった.活用部位別のMMSEは有意差を認めなった.舌圧は,活用部位が「舌」の者がその他の部位と比較して有意に低かった.

 SJを口腔内で粉砕できた者は72名中70名であった.SJを口腔内で粉砕できなかった2名は,活用部位が「舌」であり,義歯による咬合支持を有していた.HJを口腔内で粉砕できた対象者は62名であった.活用部位が「舌」であった全ての対象者は,HJを口腔内で粉砕することができなかった.

 SJを舌で粉砕できた者は72名中64名であった.SJを舌で粉砕できた者の舌圧最小値は6.2kPaであった一方で,粉砕できなかった者の舌圧最大値は4.9kPaであった.また,HJを舌で粉砕できた者は23名であった.HJの粉砕可否に対する舌圧のROC曲線下面積は0.940であり,カットオフ値は22.0kPaであった.

 口腔機能の低下および認知症は,窒息のリスク因子であることが報告されている.本研究では,全体の34.7%の対象者が認知機能の低下等により義歯を装着せず,咬合支持を喪失した状態であった実情が明らかになった.特に施設入所要介護高齢者に対しては,窒息のリスク管理を徹底する必要性が示唆された.

 活用部位が「歯-歯」,「歯-顎堤」あるいは「顎堤-顎堤」の者は,食品粉砕時に舌で食品を臼歯部や顎堤に輸送および保持していると推察される.これらの対象者は外観的には咬む動作によって粉砕を行っており,その割合は計91.7%であった.従って,食品を粉砕しようとする際は歯,人工歯あるいは顎堤にて咬む動作を行う者が多数派であることが確認された.

 活用部位が「舌」の者は,その他の者より舌圧が低く,6名中5名は咬合支持を有していた.従って,活用部位は必ずしも咬合支持の有無とは関連せず,舌圧を含む口腔機能が虚弱な者が臼歯への食塊移送できずに舌で潰す傾向にあるかもしれない.

 食品を舌と口蓋の間で粉砕しようとする者は,歯あるいは顎堤で粉砕しようとする者より粉砕能力が低い可能性が示された.従って,施設入所要介護高齢者に対する食事支援の際は,歯の有無に関わらず,歯や人工歯あるいは顎堤に食品を保持した状態で咬む動作ができるか否か評価することが重要であると考えられる.

 一方で,本研究における舌による食品の粉砕可否は,舌圧検査値に強く関連し,SJでは6.2kPa以上,HJではおよそ22.0kPa以上の舌圧が必要であった.舌圧検査は,少なくとも舌で食品を粉砕できるか否かを予測する評価法として有用であり,最低限口腔内で粉砕可能な食品選択に役立つ可能性が示唆された.

 以上の結果より,施設入所要介護高齢者が安全に粉砕して嚥下可能な食品を決定するためには,口腔内での粉砕に用いる活用部位の評価と舌圧検査が有用である可能性が示唆された.

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