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大学・研究所にある論文を検索できる 「カーネーションの切り花栽培における高温期の施設内夜間冷房に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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カーネーションの切り花栽培における高温期の施設内夜間冷房に関する研究

東浦, 優 神戸大学

2021.03.25

概要

ヒートポンプを用いた夏季高温期における温室の効率的な夜間冷房技術の開発を目的に,冷房温度および冷房時間帯がスタンダードタイプカーネーションの開花および切り花形質に及ぼす影響を検討した.2012年7月6日にガラス温室に定植された品種‘エクセリア’に対して,18℃,21℃,24℃の温度設定で夜間冷房し,無冷房と比較した.その結果,2012年11月の採花切り花の茎下垂指数はすべての夜間冷房が無冷房より減少し,茎が硬くなることで,品質向上効果が認められた.

次に2013年6月18日定植において,冷房温度を21℃として,日の入後(End of Day; EOD)4時間の冷房(EOD-cooling)および日の出前(End of Night; EON)4時間の冷房(EON-cooling)と21℃の終夜冷房および無冷房を比較した.冷房期間は摘心日の7月9日から9月25日までとした.その結果,2013年12月までに一次側枝を採花した切り花(1番花)の着花節位はEOD-coolingが終夜冷房と同等で,EON-coolingおよび無冷房より減少した.また,到花日数はEOD-coolingが無冷房より減少した.一方,初期生育期間中に高温の影響を受ける10および11月の採花切り花の茎下垂角度(Stem weeping angle; SWA)は,いずれの夜間冷房においても無冷房より減少し,茎が硬くなり,切り花品質が向上した.以上の結果から,日の入後4時間の21℃短時間冷房(EOD-cooling)では,同温度での終夜冷房と同等の開花促進効果および茎質改善による切り花品質向上効果が認められ,スタンダードタイプカーネーション栽培における高温期の低コストで効率的な温度管理の可能性が示唆された.

カーネーション‘エクセリア’のEOD-coolingが花芽分化および発達に及ぼす影響について,2017年12~3月に人工環境下においてポット栽培で検証した.花芽分化ステージは無処理およびEON-coolingに処理43日後まで未分化期(Ⅰ)の個体があったが,EOD-coolingでは処理22日後にすべての個体が膨大期(Ⅱ)に達し,無処理区より早い時期かつ低い節位での花芽分化の開始が観察された.さらに,花芽分化後の同節位での花芽発達ステージは,EOD-coolingでは無処理およびEON-coolingよりも最大3ステージ進んでいることを認めた.このことにより,EOD-coolingによるカーネーションの開花促進効果は,花芽分化および花芽発達の促進によるものと確認できた.

ガラス温室栽培において,カーネーション‘エクセリア’の1番花の到花日数,着花節位およびSWAに対するEOD-cooling(21℃,4時間,7月上旬~9月25日)の効果の年次変動を検証した.6月中旬定植として,2013~2017年の5年間で5作を栽培した.その結果,それぞれの項目において,年次によりEOD-coolingと無冷房の有意差の有無が異なったことから,EOD-coolingの効果は気象要因に強い影響を受けたと考えられた.EOD-coolingと無冷房の間における年次ごとにみた到花日数と花芽分化期の最高気温と最低気温の差(較差)の差を回帰分析したところ,重決定係数(R2)は0.6639(P=0.09)で比較的高い相関が見られた.同様に着花節位と較差の差との重決定係数(R2)は0.8240(P=0.03)で,有意な相関が認められた.さらに,処理区間における年次ごとにみたSWAの差と茎伸長期における最低気温の差を回帰分析したところ,重決定係数(R2)は0.9481(P=0.005)となり,有意な相関が認められた.これらのことから,6月定植のカーネーション栽培でのEOD-coolingにおいて,花芽分化期の外気温が高く,処理温室と無処理温室との較差の差が大きい年次ほど開花促進効果が高くなり,また,茎伸長期の無処理温室の最低気温が高く,処理温室と無処理温室の最低気温の差が大きい年次ほど茎が硬くなる傾向があった.

EOD-cooling技術の現場普及に向けて,品種適応性を検討した.品種は,4種類のスタンダードタイプと,4種類のスプレータイプを供試した.2017年7月4日にガラス温室内に定植した.EOD-cooling(21℃,4時間,冷房期間:7月25日~9月25日)と無冷房を比較した.その結果,スタンダードタイプの晩生品種においてEOD-coolingにより1番花の到花日数が15~16日短縮した.一方,スプレータイプの品種はいずれも到花日数の短縮効果は認められなかった.SWAは,比較的柔らかい茎を備えた品種がEOD-coolingにより減少した.この結果から,EOD-coolingによる開花促進および茎質改善効果は,草姿,開花の早晩性,茎質などの本来の品種特性によって多寡が生じることが明らかになった.

夏季のEOD-coolingと冬季のEOD-heating(日の入り後4時間を17℃で暖房,以降日の出まで8℃)の組み合わせによる効果を,冬切り1年作型を通して検証した.EOD-cooling+終夜暖房(13℃一定加温),EOD-cooling+EOD-heatingおよび慣行温度管理(EOD-coolingなしの終夜暖房)を設定し,開花時期および収量を比較した.その結果,概ねEOD-coolingを使用した2処理区は,慣行温度管理区に比べて,到花日数が10〜19日短縮し,切り花本数が増加し,採花月が前進した.また,5月10日の母の日需要期までの総切り花本数が13~16%増加した.従って冬季の終夜暖房はEOD-heatingに置き換えられると考えられた.冷暖房負荷を表すデグリアワーを算出したところ,冷房は暖房の約17%であり,ヒートポンプの負荷はかなり小さいことが明らかとなった.また,EOD-heatingは終夜暖房の約76%であった.このことから,EOD-coolingの電力コストは,EOD-heatingを組み合わせることによって,相殺されると考えられた.

以上の結果から,本研究において,冷房時間帯を日の入り後から4時間,冷房温度を21℃,冷房期間を摘心日から9月下旬とする“日の入り後短時間冷房”はスタンダードタイプカーネーションに対して,夏季の高温による開花遅延の抑制および茎の軟弱化の改善に効果があり,高温期の新たな施設内夜間冷房技術として有効であることが明らかになった.

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