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大学・研究所にある論文を検索できる 「Dysregulation of PI3K and Hippo signaling pathways synergistically induces chronic pancreatitis via CTGF upregulation」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Dysregulation of PI3K and Hippo signaling pathways synergistically induces chronic pancreatitis via CTGF upregulation

田村, 猛 大阪大学

2021.08.31

概要

〔目的(Purpose)〕
慢性膵炎は膵臓への持続的な刺激により病理学的に線維性炎症を認める疾患で、膵発癌の危険因子として重要視されているが、未だ有効かつ特異的な治療法は確立していない。そのため、この発症機序の解明や治療標的の探索が急務である。 PI3K/Hippoシグナル伝達経路の主要構成因子PTEN/SAV1は近年、膵癌の発癌促進因子あるいは予後予測因子としての役割が報告されているが、慢性膵炎における役割については不明な点が多い。本研究はPTEN/SAV1を介して慢性膵炎におけるPI3K/Hippoシグナル伝速経路の意義を検討し、治療標的としての可能性を検証することを目的とした。

〔方法ならびに成績(Methods/Results)〕
6週齢のC57BL/6雄マウスを用い、CCKアナログであるセルレインの腹腔内反復投与、または膵管結紮法により2種類の慢性膵炎マウスモデルを作成し、それらの膵組織を用いてPTEN/SAV1発現量の検討を行った。遺伝子発現は定量的PCR法(RT-PCR 法)を用いて、蛋白発現は免疫染色法を用いて各々解析した。その結果、コントロールと比較して慢性膵炎領域において PTEN/SAV1の有意な発現低下を認めた。そこでCre/lox Pシステ厶を用いてPTEN/SAV1単独あるいは両省を膵臓特異的にノックアウト(KO)した変異マウスを作成した。すると6週齢においてPTENあるいはSAV1を単独でKOしたマウスは野生型マウスと比較して表現型に差異は認められなかった一方、PTEN/SAV1両者をKOしたマウス(PTEN/SAV1K0マウス> の塍臟にはacinar-to-ductal metaplasia (ADM)やマクロファージ浸潤を伴う炎症、膵星細胞(PSC)の活性化を伴う線維化を認め、慢性膵炎を自然発症したと考えられた。

次にPTEN/SAV1を制御する転写因子について検討した。転写因子データベースであるTRANSFACを用いて検索し、CCAAT/enhancer binding protein alpha (CEBPA)がPTEN/SAViを制御する上流転写因子として同定された。2種類の慢性膵炎マウスモデルの膵組織を用いてRT-PCR法で解析すると、コントロールと比較して慢性膵炎領域においてCEBPAは有意に発現が低下していた。またIn vitroの検討で、マウス膵腺房細胞株(266-6)においてsiRNAを用いてCEBPAをノックダウン(KD)し、RT-PCR法で解析した結果、コントロールと比較してPTEN/SAVIの発現量は有意に低下し、Hippo経路の標的遺伝子であるCTGFやAM関連マーカーであるSOX9の発現量は有意に上昇した。さらにsiRNAを用いてCEBPA/CTGF両者をKDした266-6においてSOX9の発現上昇は有意に抑制された。また266-6とマウスマクロファージ細胞株(RAW 264.7)、あるいはC57BL/6マウスの膵臓から単離したPSCとの共培養を行い、膵腺房細胞の表現型の変化がマクロファージやPSCに与える影響について検討した。siRNAを用いてCEBPA発現低下させた266-6と共培養したRAW 264.7あるいはPSCにおいて、RT-PCR法で検討すると、コントロールと比較して、各々TNFaやIレ1/3、CCL2などの炎症性サイトカインの有意な発現上昇、あるいはTGFβ1やCOLlA1 COL1A2などの線維化促進因子の有意な発現上昇を認めた。さらにsiRNAを用いてCEBPA/CTGF両者を発現低下させた266-6と共培養したRAW264. 7あるいはPSCにおいて、炎症性サイトカインや線維化促進因子の発現上昇は有意に抑制された。

そこで次にPTEN/SAVIK0マウスにCTGFのKOを追加した変異マウス(PTEN/SAV1/CTGF K0マウス)を作成し、6週齢における表現型を検討した。するとPTEN/SAVIATGF KOマウスの膵臓はPTEN/SAVIK0マウスと比較して組織学的にADMや線維化が抑制され、RT-PCR法で炎症性サイトカインや線維化促進因子の発現量の有意な低下を認め、慢性膵炎像が改善した,さらにセルレイン誘発慢性膵炎マウスモデルに対してコントロールIgG抗体あるいは抗CTGF中和抗体を投与して表現型を検討した。すると抗CTGF中和抗体を投与したマウスの膵臓はコントロールIgG抗体を投与したマウスと比較してADMや線維化が抑制され、RT-PCR法で炎症性サイトカインや線維化促進因子の発現は有意に低下し、やはり慢性膵炎像が改善した。

最後にヒトの閉塞性膵炎や慢性膵炎の切除検体を用いて、免疫染色法で蛋白発現置を検討した。するとコントロールと比較して膵炎領域において、有意なPTEN/SAVIの発現低下およびCTGFの発現上昇を認めた。

〔総括(Conclusion)〕
慢性膵炎発症の重要かつ新たな分子基盤として、膵腺房細胞におけるPI3K/Hippoシグナル伝逹経路の制御異常が明らかとなり、下流エフェクターであるCTGFを標的とすることが慢性膵炎の有効な治療戦略となる可能性が示唆された。

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