東京慈恵会医科大学疫学研究会による茨城県常陸太田市に於ける健康調査と生活習慣改善の取り組み(第13報) (第137回成医会総会一般演題)
概要
【背景・目的】
疫学研究会(当研究会)は,東京慈恵会医科大学の学生によるクラブ活動団体であり,医学生・看護学生が所属している.当研究会では活動目標の一つに,「医療過疎地域の特性を考え,住民自らが健康意識を持ち,健康管理が出来るように働きかけると共に健康寿命が延伸するようお手伝いする」ことを掲げている.2007年夏季より茨城県常陸太田市下宮河内町で活動しており,2019年度(昨年度)で13年目を迎えた.住民の方から頂いた過去10年分の健康診断のデータをもとに,当研究会の活動の成果について検証する.
【対象・活動方法】
下宮河内町は,令和2年1月1日現在,総世帯数127世帯,人口267名である.昨秋この町の住民の中で,活動に協力していただける27世帯31人を対象に家庭訪問を行った.家庭訪問は学生3 ~ 4名と同窓(医師・看護師)1名という班構成で行い,学生が主導的立場で健康診断結果の説明と健康相談活動を行った.また健康診断データの開示について説明し,同意が得られた場合には同意書に署名をいただき,39%の人の同意を得て,健康診断結果を共有させていただいた.
【検証の方法】
BMI,収縮期血圧,HDL-C,HbA1c について年齢区分別に過去10年間の変動,全国平均値との比較を行った.また,LDL-C,拡張期血圧,AST,A LT ,γ-GTについて過去5年分,TG について過去3年分のデータを集計し,それらの変動と全国平均値との比較を行った.
【結論と考察】
いくつかの項目で全国平均より健康的な値を維持しており,学生を主体とした健康指導が地域の健康増進に貢献できていると考えられる.今後の課題としては,訪問家庭を増やしデータをより多く集めること,健診を受けなくなってしまっている家庭に対し,健診を受けていただけるように努力することである.