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大学・研究所にある論文を検索できる 「高リスク神経芽腫患者における7つのマーカーで検出した微小残存病変と腫瘍マーカーとの限定的な相関」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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高リスク神経芽腫患者における7つのマーカーで検出した微小残存病変と腫瘍マーカーとの限定的な相関

Uemara, Suguru 神戸大学

2021.03.25

概要

(背景)
神経芽腫は胎生期の神経堤細胞が癌化したものであり、体幹の交感神経節、副腎髄質に多く発生する。神経芽腫は多様性を示すがんとして知られており、一般的には低、中間、高リスクに分類されて治療方針が決定される。

高リスク神経芽腫患者は予後不良な疾患であり、その半数以上に再発・再増大が見られ、長期生存割合は 40%程度に過ぎない。治療効果の維持や長期生存には、治療後に残存する病変の消失・不活化、またその評価方法が重要である。また微小残存病変(MRD)を検出し再発を早期発見することが重要であるとされている。

神経芽腫は腫瘍マーカーとして尿中バニルマンデル酸(VMA)、尿中ホモバニリン酸(HVA)、神経特異エノラーゼ(NSE)、LDH は一般的に上昇し、高値例は予後不良であるとされている。そのため、これらの腫瘍マーカーは初診時や治療反応性の評価に用いられる。一方で、再発例や治療抵抗例の一部の症例においては上昇しない例もあるため、腫瘍マーカーだけではなく画像検査等を組み合わせた総合的な判断が推奨されている。

これまでの報告では複数のMRD マーカーを組み合わせることで高リスク神経芽腫患者の治療後に MRD をモニタリングする報告が多くされてきたが、報告するグループ毎で用いられるマーカー遺伝子自体が異なっていた。我々の研究室ではリアルタイム PCR より高感度で再現性の高いデジタル PCR を用いて、神経芽腫細胞で高発現する遺伝子マーカーの中から、特に再発・再増大の源となるがん幹細胞で高発現する 7 種類のマーカー(CRMP1; collapsin response mediator protein 1, DBH; dopamine beta-hydroxylase, DDC; dopa decarboxylase , GAP43; growth-associated protein43, ISL1; ISL LIM homeobox 1, pairedlike homeobox 2b; PHOX2B, TH; tyrosine hydroxylase)を選び、治療後に残存する病変の評価法の検討を行った。高リスク神経芽腫患者の治療後の骨髄検体において、この 7 種類のマーカーの発現量は、再発・再増大した患者検体では、再発・再増大しなかった患者検体に比べて有意に高く、高リスク神経芽腫患者の治療後に残存する病変の変動を把握し、再発・再増大を予測するのに有用であることを報告した。腫瘍マーカー、MRD ともに神経芽腫の治療評価、予後予測を行うには重要なツールであるが、これまでに両者の関係を系統的に検討した報告はない。そこで、今回我々は高リスク神経芽腫患者 19 名から採取した 133 ペアの骨髄、末梢血、尿検体における腫瘍マーカーと 7 つの神経芽腫 MRD マーカーの相関について評価を行った。

(方法)
2011 年 6 月から 2018 年 1 月までに兵庫県立こども病院、神戸大学医学部附属病院で高リスク神経芽腫と診断、治療を受けた高リスク神経芽腫患者 19 名を対象とした。全ての患者は日本小児がんグループ・神経芽腫研究グループの JNBSG-H-11、JNBSG-H15 の治療プロトコールを元に初回治療を行った。

MRD 評価のために患者から骨髄検体、末梢血を採取したが、相関性の評価のためにその前後 1 週間以内に末梢血、早朝第一尿を採取したものを用い、尿中 VMA、尿中 HVA、NSE、LDH を測定した。7 つの神経芽腫マーカーの発現量はそれぞれのマーカーについて健常人の発現の 90%タイルで除することで重み付けを行ったものの総和とした。

腫瘍マーカー(尿中 VMA、尿中 HVA、NSE、LDH)と骨髄及び末梢血の 7 つの神経芽腫 MRDマーカーの発現の相関性についてスピアマンの順位相関係数を用い、両側検定で得られた P 値は 0.05 以下を有意と定義した。スピアマン相関係数で得られた r 値は既報に従い weak:0.10-0.39、moderate:0.40-0.69、strong:0.70-0.89、very strong:0.90-1.00 と定義した。

(結果)
高リスク神経芽腫 19 名から計 133 ペアの骨髄、末梢血、尿検体が得られた。サンプル背景別で評価を行ったところ、サンプルは骨髄浸潤あり:21 サンプル(10 名)、骨髄浸潤無し:122 サンプル(16 名)であった。採取時期は診断時:10 サンプル(10 名)、治療中:32 サンプル(9 名)、治療終了後:36 サンプル(10 名)、再発時:9 サンプル(8 名)、再発後:46 サンプル(9 名)であった。病期では remission:21 サンプル(6 名)、stable:87 サンプル(13 名)、progression:25 サンプル(13 名)であった。患者背景毎でも評価を行ったが、男児:87 サンプル(13 名)、女児:46 サンプル(6 名)、診断時 18 か月未満:26 サンプル(3 名)、診断時 18 か月以上:107 サンプル(16 名)であった。原発巣別では副腎原発:106 サンプル(14 名)、それ以外:27サンプル(5 名)であった。初診時骨髄浸潤あり:122 サンプル(16 名)、なし:11 サンプル(3 名)であった。病理組織学的検査では favorable histology のサンプルはなく、全例が unfavorable histology であった。DNA ploidy 別では Diploid type:93 サンプル(14 名)、Hyperdiploid type: 33 サンプルであった。MYC-N status は増幅:45 サンプル(7 名)、非増幅:88 サンプル(12 名)であった。再発/再増大は 90 サンプル(11 名)から得ることができ、中枢神経再発患者 4 名から 35 サンプルを採取した。

尿中 VMA、尿中 HVA、NSE、LDH はそれぞれ骨髄 MRD、末梢血 MRD と弱いながらも相関性を示した(r= 0.221-0.355, p<0.03)。患者背景別のサブグループ解析では副腎原発は骨髄 MRD、末梢血 MRD ともに strong な相関性を示した。骨髄 MRD においては初診時骨髄浸潤あり、再発/再増大のグループで腫瘍マーカーと strong な相関性を示した。一方で、非副腎原発、初診時骨髄浸潤なし、非再発/再増大のグループでは腫瘍マーカーと相関性を示さなかった。サンプル別のサブグループ解析では、採取時骨髄浸潤ありのサンプルは骨髄 MRD、末梢血 MRD ともに腫瘍マーカーと moderate から strong の相関性(r=0.49-0.821, p<0.026)を示した。採取時骨髄浸潤無しのサンプルは末梢血 MRD と NSE で weak な相関性(r=0.028, p=0.016)を示したが、それ以外は相関性を示さなかった。骨髄 MRD、末梢血 MRD ともに採取時期別(診断時、治療中、治療終了後、再発時、再発後)、病期(remission、stable、progression)においては一定の傾向を示さなかった。

(考察)
今回我々が用いた 7 つの MRD マーカーのうち、DBH、DDC、TH はカテコラミン生合成酵素の転写産物である。VMA はアドレナリンおよびノルアドレナリンの最終代謝産物であり、すべて遊離型で尿中へ排泄される。HVA はドーパおよびドーパミンの最終代謝産物で血漿 HVA の約60%は副腎等を主とした末梢臓器由来である。そのため、相関性を示すことが予測される。本研究では腫瘍マーカーと MRD マーカ-において、骨髄検体、末梢血ともに weak ではあるが相関性を認めた。

既報では再発神経芽腫の再発時の腫瘍マーカーの上昇については、尿中 VMA/HVA、NSE、LDHのいずれにおいても、局所再発、局所及び遠隔転移複合再発、遠隔転移再発によって上昇する割合は異なり、腫瘍マーカーは再発形式によっては、その有用性を見出せないとされている。

神経芽腫は heterogeneity な集団であり、腫瘍マーカーのみで再発や予後予測を行うには限界があることを示唆していると思われる。また、我々は神経芽腫の heterogeneity に対応するために 7 つのマーカーを用いた MRD 評価法を開発したが、その再発や予後予測の正確さ(AUC = 0.723)には改善の余地があると思われる。また、より正確な再初や予後予測には 7 つのマーカーを用いた MRD 評価法と腫瘍マーカーを組み合わせた総合的な評価ツールが必要かもしれない。

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