リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「BMP3b is a Novel Anti-Fibrotic Molecule Regulated by Meflin in Lung Fibroblasts」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

BMP3b is a Novel Anti-Fibrotic Molecule Regulated by Meflin in Lung Fibroblasts

鈴木, 淳 名古屋大学

2023.01.24

概要

【緒言】
特発性肺線維症を始めとする線維性間質性肺疾患は慢性進行性かつ予後不良な疾患群であり、更なる病態解明や新規治療開発が望まれている。肺線維症の病態形成過程では様々な細胞が関与することが知られているが、その中でも線維芽細胞は細胞外マトリックス産生や組織の硬さを調節する重要な役割を担っている。我々は先行研究において、ヒト肺線維症組織に特徴的に増加する meflin 陽性線維芽細胞を同定した。また、ノックアウト(KO)マウスを用いて、meflin がブレオマイシン誘導肺線維症を抑制することを発見した。本研究では肺線維症における meflin の機能を更に解明するため新たな肺線維化誘導モデルで検証を行うと共に、meflin によって制御される新規抗線維化分子の探索・機能解析を行った。

【方法】
野生型(WT)及び meflin-KO マウスに非晶質性シリカナノ粒子を単回気管内投与して、肺の線維化の程度や遺伝子発現等を評価した。WT 及び meflin-KO マウスより初代肺線維芽細胞を単離し、線維化の主要なメディエーターである transforming growth factor-β(TGF-β)投与を行った際の遺伝子発現の変化を cDNA マイクロアレイで網羅的に解析した。マイクロアレイで注目した新規分子について、単一細胞 RNA シークエンス(scRNA-seq)のデータベースを用いて肺内における発現細胞を確認した。新規分子の KO マウスを用いて肺線維芽細胞やシリカナノ粒子誘導肺線維症モデルにおける抗線維化作用の検討を行った。Meflin の発現が抑制された肺線維芽細胞において TGF- β 刺激と同時に新規分子のリコンビナントタンパクを補充することで抗線維化作用が発揮されるか、KO マウス由来の初代細胞系及び siRNA を用いた発現抑制系で確認した。

【結果】
シリカナノ粒子誘導肺線維症モデルにおける meflin の抗線維化作用
シリカナノ粒子誘導肺線維症モデルにて、meflin-KO マウスは WT マウスと比較して病理学的に定量評価した線維性病変の有意な拡大を認めた(Figure 1A,B)。Meflin-KOマウスでは肺組織への細胞外マトリックスの異常な蓄積や α 平滑筋アクチンの発現増加を認めた(Figure 1C-E)。WT マウスではシリカナノ粒子により肺組織内の meflin が増加した(Figure 1F)。シリカナノ粒子を投与した Meflin-KO マウスの肺組織では Smad2のリン酸化が亢進しており、meflin による TGF-β シグナル調節が示唆された(Figure 1G)。

cDNA マイクロアレイによる肺線維芽細胞における meflin 制御下新規分子の探索
肺線維芽細胞を用いたマイクロアレイ解析において、WT と meflin-KO の 2 群間で発現に有意な差を認めた遺伝子数は、TGF-β 未刺激下で 862 遺伝子(meflin-KO 群で発現亢進 221、発現低下 641)、TGF-β 刺激下で 6327 遺伝子(meflin-KO 群で発現亢進 3159、発現低下 3168)であった(Figure 2A)。Bone morphogenic protein 3b(Bmp3b)(=Growth differentiation factor 10 [Gdf10])は TGF-β 刺激時に meflin-KO 肺線維芽細胞で顕著に低下する遺伝子の一つであった(Figure 2B)。

scRNA-seq データベースを用いた肺内における Bmp3b 発現細胞の同定
マウス及びヒトの肺を用いた scRNA-seq データベース(マウス:Tabula Muris、ヒト: Human Lung Cell Atlas)において、Bmp3b 発現細胞は線維芽細胞を含む間質系細胞の一部に集簇していた(Figure 3A-D)。

マウス肺線維芽細胞における BMP3b の抗線維化作用
WT 及び Bmp3b-KO マウスより単離した初代肺線維芽細胞において TGF-β 誘導表現型を評価した。TGF-β 未刺激下にて、Bmp3b-KO 肺線維芽細胞では WT 肺線維芽細胞と比較して meflin の発現が亢進していた(negative feedback loop)(Figure 4A,B)。Bmp3b- KO 肺線維芽細胞では、WT 肺線維芽細胞と比較して TGF-β によって誘導される過剰な細胞外マトリックスや α 平滑筋アクチンの発現が有意に増加し、Smad2 のリン酸化も亢進した(Figure 4A,C-E)。

シリカナノ粒子誘導肺線維症モデルにおける BMP3b の抗線維化作用
シリカナノ粒子誘導肺線維症モデルにおいて、Bmp3b-KO マウスは WT マウスと比較して病理学的に定量評価した線維性病変の有意な拡大を認めた(Figure 5A,B)。 Bmp3b-KO マウスでは肺組織への細胞外マトリックスの異常な蓄積増加を認めたが、 α 平滑筋アクチンの増加は WT マウスと差を認めなかった(Figure 5C-E)。Bmp3b-KOマウスの肺組織では meflin-KO マウス同様、シリカナノ粒子投与時に Smad2 のリン酸化が亢進していた(Figure 5E)。

Meflin 発現抑制下での肺線維芽細胞における BMP3b の抗線維化作用
Meflin の発現が抑制された肺線維芽細胞においても BMP3b が抗線維化作用を示すか確認するため、meflin-KO マウスより単離した初代肺線維芽細胞に TGF-β 刺激と同時にリコンビナント BMP3B(rBMP3B)を投与して表現型を確認した。Meflin-KO マウス肺線維芽細胞において TGF-β によって誘導された過剰な細胞外マトリックスの増加は rBMP3B によって有意に抑制された(Figure 6A-C)。さらに正常ヒト肺線維芽細胞においてsiRNA を用いてmeflin をノックダウンさせた後、TGF-β 刺激と同時にrBMP3Bを投与して表現型を確認したところ、TGF-β により誘導された過剰な細胞外マトリックスの増加は抑制された(Figure 6D-F)。マウス・ヒトの肺線維芽細胞共に TGF-β で誘導されたα 平滑筋アクチンの発現増加はrBMP3B で抑制されなかった(Figure 6A,C,D,F)。

【考察】
我々は肺線維症の病態において meflin によって制御される BMP3b が抗線維化作用を示すことを初めて報告した。ブレオマイシン誘導肺線維症モデル同様、シリカナノ粒子誘導肺線維症モデルにおいても meflin は線維化を抑制しており、抗線維化作用を支持する結果であった。Meflin によって制御される下流の分子が抗線維化作用を示すと仮説を立て、WT 及び meflin-KO 肺線維芽細胞を TGF-β で刺激した際の遺伝子発現を cDNA マイクロアレイで解析し、新規分子の探索を行った。TGF-β 刺激によって WTと meflin-KO 肺線維芽細胞の遺伝子発現に大きな差が見られることから、meflin は TGF-β シグナル経路を調節していると推察された。BMP3b は TGF-β 刺激時に meflin- KO 肺線維芽細胞で最も低下しており、scRNA-seq データベースで meflin と同じように間質系細胞に集簇して発現しているため、密接な関連性があると考えて機能解析を行った。
BMP3b の機能解析では、Bmp3b-KO マウスを用いて検討することが出来た。Bmp3b- KO 肺線維芽細胞は TGF-β で誘導される異常な線維形成を増強し、Bmp3b-KO マウスはシリカナノ粒子誘導肺線維症において線維化を悪化させることから、肺線維症の病態における BMP3b の抗線維化作用が示唆された。さらに BMP3b の抗線維化作用を検証するため、リコンビナントタンパクを用いた検討を行った。肺線維芽細胞において meflin の発現が抑制されていても rBMP3B は TGF-β で誘導される過剰な細胞外マトリックス増加を抑制した一方、α 平滑筋アクチンの発現増加は抑制しなかった。これにより BMP3b は meflin 陽性線維芽細胞における抗線維化作用のうち、少なくとも一部を担っていると考えられた。Meflin が制御する他の経路、BMP3b が調節する下流のシグナルについては未だ不明な点が多く、今後の検討課題である。
BMP3b はリコンビナント製剤の入手が比較的容易であるため治療応用にメリットがあり、ヒトへの臨床応用を目指してマウス肺線維症モデルにおける rBMP3B の有用性等、さらなる検討を行っていく予定である。

【結語】
BMP3b は肺線維芽細胞において meflin によって制御される抗線維化分子である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る