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Efficacy of sedation with dexmedetomidine plus propofol during esophageal endoscopic submucosal dissection

芦苅 圭一 横浜市立大学

2022.03.25

概要

1.序論
我が国では,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)はリンパ節転移のない早期食道癌に対する治療法として確立されてきた.食道ESDは難易度が高く,細かい内視鏡操作が必要とされる(Oyama,2014).術中の患者の体動は視野に大きな影響を与えるため,患者体動の抑制可能な鎮静レベルを保つことは重要である.内視鏡診療に用いられる鎮静剤として日本ではベンゾジアゼピン(BZD)系薬剤が使われることが多いが,時に脱抑制を引き起こし,かえって体動が惹起されることがある(Golparvar et al., 2004; Fulton and Mullen, 2000).一方,プロポフォール(PF)やデクスメデトミジン(DEX)といった薬剤がESDの鎮静に有用であるとの報告がある(Nishizawa et al., 2014; Kiriyama et al., 2010; Yamagata et al., 2011; Yoshio et al., 2019).そこで今回,PFとDEXを併用した鎮静法が食道ESDにおいて有用であるかを,PF単剤との比較において検討した.

2.実験材料と方法
本研究のデザインは単施設前向き二重盲検ランダム化比較試験である.本研究の承認は,横浜市立大学附属病院の倫理委員会から得た(倫理審査委員会の承認番号:B140508009).横浜市立大学附属病院で2015年4月から2019年3月までに食道ESDを施行した患者を対象とし,PF単剤を使用するPF群と,PFとDEXを併用する併用群の2群にランダムに割り付けた.PFの投与は,適切な鎮静レベルが得られるまで20mgのボーラスを繰り返した.鎮静レベルの評価にはMOAA/Sscaleを用いて適正な鎮静レベルを設定した.2mg/kg/hで持続投与をおこない,鎮静が浅くなった時や抑制を必要とする体動がみられた場合には持続投与速度を1mg/kg/hずつ増やした.一方DEXは始めの10分間を6μg/kg/hでローディングし,その後1μg/kg/hで持続投与し,速度変更はしないこととした.術中はバイタルサイン測定をした.麻酔導入から15分間は1分毎,その後は15分毎にバイタル測定と意識レベルの評価をおこなった.

患者背景,病変の特徴,バイタルサイン,治療成績,PFとDEXの総投与量,PFの持続投与量・ボーラス投与回数,体動の有無,病理学的診断を2群間で比較した.主要評価項目はESD中の患者体動発生率で,副次評価項目はESD施行医・麻酔医・介助看護師の満足度,PF持続投与量,PFボーラス投与回数,徐脈・低血圧・低酸素血症の有無,重篤な有害事象の有無とした.

3.結果
対象とした食道ESD患者は168名.102症例が除外され,66名に最終解析が行われた.患者背景,病変の特徴,治療成績に関しては両群に有意な差はみられず,偶発症も認めなかった.体動の発生率に関してはPF群と比較し併用群で有意に低く,満足度スコアは術者,麻酔医,介助看護師すべて併用群で有意に高かった.PF持続投与量,総投与量,ボーラス投与回数は併用群で有意に少なかった.低酸素血症はPF群で併用群より多い傾向であったが,酸素投与によって改善した.徐脈は併用群でPF群より優位に多く,重篤な副作用は認めなかった.

4.考察
本研究において,PFとDEXの併用鎮静法によって食道ESDを施行する患者の体動を効果的に抑制することができた.さらにはESD施行医・麻酔医・介助看護師の満足度も高めることが明らかとなった.またPF投与量を減らすことができ,低酸素血症の発症率を低下させた.

これまで当科ではESDにおけるPFとDEXを併用した鎮静法の有効性と安全性について報告をしてきた(Nonaka et al., 2016; Nonaka et al., 2018).食道ESDにおけるDEX+ミダゾラムの有効性に関する報告があるが(Yoshioetal.,2019),前向き二重盲検でのPF+DEX併用鎮静の報告はこれまでになく,本研究は価値が高いと考える.

細かい内視鏡操作を必要とする食道ESDにおいて,患者の体動が少ないことは術者にとってより良い手術を可能にする.全身麻酔下に食道ESDを行う施設もあるが,全身麻酔では気管挿管に伴う合併症や,悪性高熱症,誤嚥性肺炎などのリスクがあり身体侵襲を伴う.また手術室の確保や麻酔導入・覚醒にかかる時間や費用を多く費やす可能性がある.PFとDEXによる鎮静では筋弛緩薬や気管挿管を使用せずに,偶発症なく良好な成績が得られた.

DEXは鎮痛効果を有する優れた鎮静剤である.交感神経を抑制し,心拍数や血圧を低下させるが,DEXによって起こる徐脈は心血管障害とは関連していないことが報告されており(Masonetal.,2013),本研究で徐脈となった症例も重篤な有害事象を引き起こした患者はいなかった.

本研究のlimitationとしては,単施設の研究であること,ESDの対象臓器が食道に限定されていること,が挙げられる.
PFとDEXを併用した鎮静法は食道ESDにおける患者の体動を有効的に抑制でき,繊細な内視鏡操作を可能にすることで術者の満足度を向上させ,重篤な有害事象なく安全なESDを可能にした.

参考文献

Fulton SA, Mullen KD. (2000), Completion of upper endoscopic procedures despite paradoxical reaction to midazolam: a role for flumazenil? Am J Gastroenterol, 95(3), 809-11.

Golparvar M, Saghaei M, Sajedi P, Razavi SS. (2004), Paradoxical reaction following intravenous midazolam premedication in pediatric patients - a randomized placebo controlled trial of ketamine for rapid tranquilization. Paediatr Anaesth, 14, 924 – 30.

Kiriyama S, Gotoda T, Sano H, Oda I, Nishimoto F, Hirashima T, Kusano C, Kuwano H. (2010), Safe and effective sedation in endoscopic submucosal dissection for early gastric cancer: a randomized comparison between propofol continuous infusion and intermittent midazolam injection. J Gastroenterol, 45, 831 – 837.

Mason KP, Robinson F, Fontaine P, Prescilla R. (2013), Dexmedetomidine offers an option for safe and effective sedation for nuclear medicine imaging in children. Radiology, 267, 911 – 917.

Nishizawa T, Suzuki H, Matsuzaki J, Kanai T, Yahagi N. (2014), Propofol versus traditional sedative agents for endoscopic submucosal dissection. Dig Endosc, 26, 701 – 706.

Nonaka T, Inamori M, Miyashita T, Harada S, Inoh Y, Kanoshima K, Matsuura M, Higurashi T, Ohkubo H, Iida H, Endo H, Kusakabe A, Maeda S, Gotoh T, Nakajima A. (2016), Feasibility of deep sedation with a combination of propofol and dexmedetomidine hydrochloride for esophageal endoscopic submucosal dissection. Dig Endosc, 28(2), 145-51.

Nonaka T, Inamori M, Miyashita T, Inoh Y, Kanoshima K, Higurashi T, Ohkubo H, Iida H, Fujita K, Kusakabe A, Gotoh T, Nakajima A. (2018), Can sedation using a combination of propofol and dexmedetomidine enhance the satisfaction of the endoscopist in endoscopic submucosal dissection? Endosc Int Open, 6, E3 – E10.

Yamagata T, Hirasawa D, Fujita N, Suzuki T, Obana T, Sugawara T, Ohira T, Harada Y, Maeda Y, Koike Y, Suzuki K, Noda Y. (2011), Efficacy of propofol sedation for endoscopic submucosal dissection (ESD): assessment with prospective data collection. Intern Med, 50, 1455 – 1460.

Yoshio T, Ishiyama A, Tsuchida T, Yoshimizu S, Horiuchi Y, Omae M, Hirasawa T, Yamamoto Y, Sano H, Yokota M, Fujisaki J. (2019), Efficacy of novel sedation using the combination of dexmedetomidine and midazolam during endoscopic submucosal dissection for esophageal squamous cell carcinoma. Esophagus, 16, 285 – 291.

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