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大学・研究所にある論文を検索できる 「腸内細菌叢と胆汁酸の調節による腎不全治療法の開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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腸内細菌叢と胆汁酸の調節による腎不全治療法の開発

秋山 由雅子 東北大学

2021.03.25

概要

慢性腎臓病 (Chronic kidney disease: CKD) は近年増加の一途をたどり、社会的な問題になっている。CKDの進行を抑制しうる治療法は患者の生活の質 (Quality of life: QOL) の向上や、社会的資源の節約につながる。近年、腸内細菌叢による尿毒素 (Uremic toxin: UT) や短鎖脂肪酸、炎症性サイトカインの産生を介した腎機能への影響に注目が集まっている。また腸内細菌叢は胆汁酸にも影響を与えることから、胆汁酸を介した腎機能への影響も注目される。

胆汁酸は脂質の消化吸収に重要であるが、それだけではなくシグナル伝達物質としての役割を持つ。胆汁酸は核内受容体である Farnesoid X receptor (FXR) およびG タンパク質共役型の細胞膜受容体である Transmembrane G-protein-coupled receptor 5 (TGR5、G protein-coupled bile acid receptor 1: GPBAR1、M-BAR) のリガンドとして作用する。これらの受容体は肝臓や小腸だけではなく腎臓でも発現が認められ、FXR および TGR5 の活性化が腎保護作用をもつことが報告されている。その一方で、FXR やTGR5 を活性化する薬剤は実臨床で使用できる状況にはないという現状がある。FXR agonist であるオベチコール酸がNASH (non-alcoholic steatohepatitis) の治療薬として臨床治験が行われている。しかし一部症例で重度の掻痒などの副作用が報告され、また奏効する症例が限定的という問題点もあり、未だに臨床的に使用できる状況には至っていない。

我々は、現在下剤として広く用いられている胆汁酸トランスポーター阻害薬elobixibat をアデニン誘発腎不全モデルマウスへ投与することで腎保護作用をもつことを見出した。Elobixibat を投与した腎不全マウスの血液中では、FXR およびTGR5 のnatural agonist であるdeoxycholic acid (DCA) が著明に上昇し、FXR のnatural antagonist であるtauro-α-muricholic acid (TαMCA)、tauro-β-muricholic acid (TβMCA) が著明に低下した。 Elobixibat 投与マウスの腎において FXR 下流の線維化マーカーであるアクチン α2 (Acta2)、コラーゲンI (Col1a1) の低下を確認した。これにより elobixibat 投与が胆汁酸組成の変化を介して FXR を活性化し腎機能改善を来した可能性を見出した。また elobixibat は腸内細菌叢に著明な変化を起こし、腸由来の尿毒素である indoxyl sulfate (IS)、phenyl sulfate (PS)、trimethylamine-N-oxide (TMAO) の血中濃度も低下させた。

ヒト腎近位尿細管上皮細胞HK-2 細胞を用いた実験において、DCA の投与はFXR の活性化を誘導しTαMCA、 TβMCA の投与はFXR を阻害することも明らかになった。FXR の刺激は、Hippo 経路というシグナル伝達経路を抑制することで腎線維化を抑制する可能性が報告されている。この Hippo 経路は細胞増殖やアポトーシスに関わり器官のサイズを制御するシグナル経路として発見されたが、近年腎線維化にも関与することが報告されている。Hippo 経路で重要な役割を持つ Yes 関連タンパク質 (yes-associated protein、YAP) のリン酸化の検討 によって、elobixibat による胆汁酸組成変化は Hippo 経路を抑制することで腎線維化を改善した可能性が示唆 された。

本研究によりelobixibat によるCKD の進行抑制効果が明らかとなり、今後の腎不全治療に対する臨床応用への発展の足掛かりとなることを明らかにした。

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