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書き出し

極冠分岐の磁気園磁場トポロジーによる解釈

渡辺, 正和 蔡, 東生 藤田, 茂 田中, 高史 今泉, 太晟 畠山, 将英 上西園, 健太 京都大学

2023.03

概要

極冠分岐の磁気圏磁場トポロジーによる解釈
Interpretation of polar cap bifurcation in terms of magnetospheric field topology
研究代表者:渡辺正和

(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)
watanabe.masakazu.852@m.kyushu-u.ac.jp

研究分担者:禁東生

(筑波大学システム情報系)
cai@cs.tsukuba.ac.jp
担当:磁場位相解析プログラムの提供・助言

研究分担者:藤田茂

(情報・システム研究機構
データサイエンス共同利用基盤施設)
sfujita@ism.ac.jp
担当:可視化プログラムの提供・助言

研究分担者:田中高史

(九州大学国際宇宙惑星環境研究センター)
takashi.tanaka.084@m.kyushu-u.ac.jp
担当:磁気流体コードの提供・助言

研究分担者:今泉太晟

(九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻)
taisei.imaizumi.729@s.kyushu-u.ac.jp
担当:シミュレーションの実行・結果の可視化と解析

研究分担者:畠山将英

(九州大学理学部地球惑星科学科)
hatakeyama.shoei.511@s.kyushu-u.ac.jp
担当:シミュレーションの実行・結果の可視化と解析

研究分担者:上西園健太(九州大学理学部地球惑星科学科)
kaminishizono.kenta.826@s.kyushu-u.ac.jp
担当:シミュレーションの実行・結果の可視化と解析

研究目的 (Research Objective):
大規模なオーロラ発光は通常環状(オーロラオーバル)になり、中心部のオー
ロラ発光がない領域は極冠と呼ばれる。極冠は開いた磁力線の領域で、一般には単連
結(円と同位相)である。グローバル数値シミュレーションで、北向き惑星間空間磁
場(IMF, interplanetary magnetic field)の下で磁気圏ー電離圏結合系を再現してやると、
図 1のように極冠が 2 つに(場合によっては 3 つ以上に)分裂したように見えること
がある。図 1 は IMF By (朝夕成分)が負の場合の計算結果で、北半球の朝方側と南
半球の夕方側に極冠の「飛び地」が出来ている。見かけ上極冠の単連結性が破れてい
る。これを極冠の分岐(bifurcation )と呼ぶ。 IMF 北向き時の観測では、極冠域で太陽
-8
9-

ー地球方向に並んだオーロラアーク( Sun-aligned arc)が頻繁に観測される。数値シミ
ュレーションで得られる極冠分岐が、 Sun-aligned arc 等の自然現象と関係している可
能性もある。分岐した極冠は磁気圏の大規模構造を反映しているはずだが、その理解
はこれからである。本研究の目的は、極冠分岐を起こす磁気圏を数値シミュレーショ
ンで再現し、その磁場トポロジーを理解することである。磁場トポロジーは磁気リコ
ネクションと深い関係があり、トポロジーの理解はリコネクションを含むプラズマカ
学の理解につながる。

(
a
)N
o
r
t
h

1
2

6 18




図1

6

18

1
2

(
b
)South

■closed
■open

シミュレーションで得られる極冠分岐の例。赤は閉磁力線領域、青は開磁力線

領域(極冠)。黒線は等ポテンシャル線を 4kV 毎に描いてある。

計算手法 (Computational Aspects)



田中高史氏が開発した磁気流体モデル REPPU

Reproduce Plasma Universe)を

用いて、 IMF 北向き時の極冠分岐を再現する。得られたシミュレーションデータに対
し磁場トポロジー解析を行う。トポロジー解析プログラムがデカルト座標系の正規格
子にしか対応していないので、まず正規格子(0.25Re 間隔)にデータを補間する。続
いて磁場零点(磁気中性点)を探索する。零点は正負(または AB )2 種類ある。正の
零 点 (B
型 零 点 ) か ら 出 る 磁 力 線 群 は 、 安 定 1 次元多様体と不安定 2 次元多様体で構

A
1 次元多様体と
成される。逆に、負の零点(型零点)から出る磁力線群は、不安定
安 定 2 次元多様体で構成される。このうち、 2 次元多様体で表される磁気面 (L面=
セパラトリクス)を追跡する。追跡には等高面法(level-set method)を用いたアルゴ
リズムを採用する。 2面を追跡し、他の零点が 2面上にないか調べる。もし他の零点
が 2面上にあれば、その零点と 2面が出ている零点がセパレータで結ばれている。全
ての零点がセパレータでどのように結ばれているかが分かれば、グローバルなトポロ
ジーが一意に決定される。ただし、グローバルトポロジーの存在は定常性を仮定して
-90-

おり、時間変化する場合にはトポロジーの議論は意味がない。磁場形状の情報はアル
フベン速度で伝わるので、アルフベン通過時間のスケールでは、系は定常であると仮
定する。



‘,‘、

研究成果(Accomplishments

数値シミュレーションの結果にトポロジー解析を施し、演繹的にトポロジーを
決定しようというのが本研究の主題である。しかし数値解析上の間題がいくつかあっ
て、現時点ではまだ十分に成功していない。以下に述べることは、色々なシミュレー
ション結果から帰納される「予想」である。
(1) 極冠分岐に見られる共通のパターン

極冠分岐の典型的パターンは、図 1のように、朝方または夕方のオーロラオー
バル内に太陽方向に伸びた開磁力線領域が出現するものである。オーロラオーバルが
「剥がれる」という表現がふさわしい。この極冠分岐は様々な状況で発生し得るが、

IMF By (朝夕成分)の符号変化を伴わない太陽風擾乱が地球に到達すると、約 1 時間
後にほぼ確実に現れることがわかった。ここでいう擾乱は、太陽風の密度変化、 IMF
強度の変化、 IMF By の符号を変えない範囲での IMF の回転、などである。擾乱到達
前には、磁場零点 2 個、セパレータ 2 本の基本構造が磁気圏にある。擾乱が到達して
も基本構造は保たれるが、擾乱到達後約 20 分から、零点がクラスター化して零点群
になる。ここで言う零点クラスターは、同種零点の集まりである。零点群を遠くから
眺めれば(クラスターの直径 1Re よりずっと長い空間スケールで見れば) 1 個の零点
に見える。

図2

2 つの零点(群)から出るこ面を追跡したもの。

-91-

図 2 はクラスター化後のトポロジ一例である。クラスター化しても基本構造は

B
変わらない。北半球に負の( A 型)零点、南半球に正の(型)零点があり、それぞ
2 では
れからセパラトリクスことこが出ている。それらの交線がセパレータで、図
A
B
昼間側セパレータのみ明示してある。図 2 の例では、北半球の零点は 1 個だが南半球
の零点は 3 個ある。南半球の零点群の直径は約 1Re で、これより大きいスケールでは
零 点 群 は1個 の B 型(正の)零点とみなすことができる。そして図 2 のようにセパラ
トリクス 2B を追跡することができる。
零点のクラスター化と極冠分岐の時系列関係を表したものが図 3 である。この

= 45º (
By<0)から B=13nT
例の場合、 T=250min に IMF が強度 B=6nT ,時計角 0= 70º
〇ー

に切り替わった。それから約 20 分後( T=270min)、両半球の零点がクラスター

化する。そして更に IMF が切り替わって約 50 分後(T=300min )、両半球の電離圏で
図 1 のような極冠分岐が始まる。

54

Numbero
fn
u
l
l
s

321

IMFs
w
i
t
c
h


230

--N~s

240

250
図3

260

270

280 290 300
Time(
m
i
n
)

310

320

330

340

零点数の推移。 IMF 条件の詳細は本文参照。

この例は IMF が変動する場合だが、太陽風密度や速度が変動した場合でも、同
様に約 1 時間の時間差をもって極冠分岐が現れることを、我々は様々なシミュレーシ
ョンで確認した。しかし極冠分岐の背景にあるグローバルトポロジーの決定は難しい。
零点が近接しすぎていて、各零点から出る 2面は区別できない。また零点群の内部は
零線や零領域があると予想され、これらの解析は一般に困難である。零点は磁場の 1
次近似で表現されるが、零線や零領域には展開の高次項が含まれる。
(2) 比較的理解が進んでいる例からの考察

-92-

IMF 北向きのまま By 成分が反転すると、いわゆるシータオーロラが形成され
=-40º
ることが、観測でもシミュレーションでもよく知られている。図 4 は B=20nT ,0
By<0)から B はそのままで、 0
=+40º (
By>0)に IMF By を反転させたときのシミュ

レーションである。反転時刻を T=0 とすると、北半球では T=20min ごろから朝方側
のオーロラオーバルが剥がれてシータオーロラとなる。シータの横棒は極冠を横断し、
約 1 時間後夕方側のオーロラオーバルと接触する。その結果極冠は分岐状態になる

4c
(図)。
(a)T=26min

12

12

618

(c)T=55min

12

6

1
8

(b)T=38min

618







図 4 IMF By 反転によるシータオーロラ形成のシミュレーション(北半球)。赤は閉磁力線領
域、青は開磁力線領域(極冠)。黒線は等ポテンシャル線を 4kV 毎に描いてある。図 4b の
白矢印は古い IMF に伴う stemline の根元の位置を表す。

2022a)は By 反転によりシータオーロラが形成される時の磁場ト
Tanaka et al. (
ポロジーを調べた。磁気圏構造は、 4 つの零点(古い IMF に対応するもの 2 点と新し
い IMF に対応するもの 2 点)、およびそれらをつなぐ 4 本のセパレータで表される
(後出の図 5b 参照)。ただし、この構造は磁力線を試行錯誤的に描くことにより得ら
れた描像で、定量的な解析から得られたものではない。シータオーロラ (8の横棒)
が極冠を横断するとき、古い IMF の零点の根元(零点と電離圏をつなぐ stemline の根
元)は、図 4b のシータオーロラの昼間側先端にある(図 4b の白矢印)。古い IMF に
よる零点の極性は、反対側にある新しい IMF による零点の極性と同じである。古い零
点は新しい零点に接近してゆき、新しい IMF の下で零点 2 個の構造に戻ろうとして
いるように見える。
(1) と (2) の最終状態は、実はトポロジー的には同じではないかと思われ

る。実際、極冠分岐が発現するまでの時間スケールが約 1 時間と共通である。 1 時間
は太陽風・ IMF の擾乱が磁気圏全体に行き渡る時間スケールである。この時磁気圏尾
部で何か起こっているのかもしれない。この予想を念頭に (2) のトポロジー変化を
解釈したものが図 5 である。 IMF が切り替わる前、北半球午前側に負の零点、南半球
午後側に正の零点がある(図 5a。
) IMF が切り替わると新たな零点が出来る。この出

-93-

来方はよく分からないが、対称性から最初正午付近に零点ペアが現れて、朝方および
夕方に広がってゆくと仮定しよう(図 5a )。古い零点は夜側に流れて 4 極構造になる

図 5b ;Tanaka et al., 2022a。
) 4 極構造は定常的なものではなく、新しい IMF の下で
の 2 極構造に戻ろうとする。このため同種零点が接近する(図 5c )。最終的には各半
球で 2 つの零点が縮退する(図 5d)。この状態が( 1) で記述した零点クラスターで
はないかと予想される。もしこの予想が正しければ、単連結性が消えているのは見か
けだけで、 2 つの極冠は実はつながっていることになる。

図 5 By 反転に伴うトポロジー変遷の解釈。矢印は零点の運動を表す。
公表状況(Publications ) :
(論文)

1. Tanaka, T., Ebihara, Y., Watanabe, M., Fujita, S., Nishitani, N., & Kataoka, R. (2022a).
Interpretation of the theta aurora based on the null-separator structure. Journal of
Geophysical
Research:
Space
Physics,
127,
e2022JA030332.
https://doi.org/10.1029/2022JA030332
2. Tanaka, T., Watanabe, M., Ebihara, Y., Fujita, S., Nishitani, N., & Kataoka, R. (2022b).
Unified theory of the arc auroras: Formation mechanism of the arc auroras conforming
general principles of convection and FAC generation. Journal of Geophysical Research:
Space Physics, 127, e2022JA030403. https://doi.org/10.1029/2022JA030403
(口頭)

1. Masakazu Watanabe, Dongsheng Cai, Peikun Xiong, Shigeru Fujita, and Takashi Tanaka,
Geometric and dynamic properties of interchange reconnection in the Earth's
magnetosphere, Japan Geoscience Union Meeting 2022, PEM10-P07, オンライン , 2022
年6月 2日 (2022 年5月 22
日 ー6 月 3日 ).
2. 渡 辺 正 和, 察 東 生, 熊 油 坤 ,藤 田 茂 田
, 中高史極
, 冠分岐の磁場トポロジー
, 第 152
回地球電磁気・地球惑星圏学会, R006-P03, 相模原, 2022 年11月 4日 (2022 年 11
月 3ー7日 ).
3. Masakazu Watanabe, Dongsheng Cai, Peikun Xiong, Shigeru Fujita, Takashi Tanaka,

-94-



Reinterpreting ‘‘polar cap bifurcation" reproduced by magnetohydrodynamic simulations,
The 13th Symposium on Polar Science, OSp5, オンライン, 2022 年11月 16
(2022
11 月 18 ). ...

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