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書き出し

高調波発生における偏光の選択則と伝搬の効果の探究

小松原, 航 東京大学 DOI:10.15083/0002006652

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

小松原



本論文は6章からなる。第1章では序論、第2章で非同軸楕円偏光入射による高次高調
波の回折、第3章で固体からの高調波発生における回転ドップラーシフト、第4章で空気
からの 3 倍波発生、第5章で 2 色円偏光励起による 3、4 倍波発生、第6章でまとめと展
望を述べている。
第1章は序論である。光と媒質の非線形な相互作用を通して発生する高調波の次数、偏
光等は、入射電場の偏光と媒質の対称性に基づく選択則に支配される。また、媒質中の伝
搬による位相整合も重要な要素である。近年、非同軸入射、偏光操作、2 色励起等、複雑
な入射電場によって高調波発生を制御する試みが進展しており、これらの体系における
偏光の選択則と伝搬の効果を明らかにすることは重要である。このような背景を踏まえ、
高調波発生における偏光の選択則と位相整合を詳細に評価し、関与する光子の授受を解
き明かすことを目的とすることが述べられている。
第2章では、非同軸入射による気体からの高次高調波の回折について議論している。楕
円偏光入射の場合について実験を行い、奇数次高調波が複数の方向に発生することを観
測した。さらに、フーリエ光学を用いた波動描像での検討を行い、集光点における近接場
の変調が回折格子の役割を果たしていることを見出し、光子描像と一致する次数選択則
と回折角を導出している。高調波強度の入射光楕円率に対する依存性も明らかにし、直線
偏光励起から円偏光励起までの連続的な理解を与えている。
第3章では、固体からの円偏光高調波発生を調べている。光子と固体との間で角運動量
が授受されることに着目し、ZnO(112̅0)面を回転させながら円偏光入射で高調波を発生
させ、高調波の光子エネルギーシフトに角運動量授受の情報が反映される回転ドップラ
ーシフトを測定している。2, 3, 4 倍波発生において予想される位置に信号ピークを検出
することに成功し、入射光の円偏光からのずれによる効果も議論している。同時に発生す
る複数の高調波で回転ドップラーシフトを観測したのは初めてである。
第4章では、空気からの 3 倍波発生について述べている。タイトフォーカシング極限
で発生する 3 倍波の強度は、摂動の主要項である基本波の 3 乗が位相整合を満たさない
ため、低強度領域では 5 乗に比例することが知られている。本論文ではさらに高い強度
で実験を行い、集光径によって、5 乗に比例する立ち上がりの後飽和したり、一旦横ばい
となった後に再度増加して最終的に飽和したりすることを見出した。さらに、非線形波動
方程式による数値計算を実施し、実験で見られた挙動を再現することに成功している。
第5章では、基本波と 2 倍波の 2 色円偏光励起による空気からの 3, 4 倍波発生につい
て議論している。まず、偏光の選択則と強度依存性を解析的に導出し、数値計算で確認し
ている。同回転円偏光励起の場合、摂動の主要項が位相整合を満たし、3 倍波は基本波の
1

1 乗、2 倍波の 2 乗に、4 倍波は基本波の 2 乗、2 倍波の 3 乗に比例することを示してい
る。一方、逆回転円偏光励起の場合、3 倍波は発生しないことが知られているが、4 倍波
は摂動の主要項が位相整合を満たさないため、より次数の高い強度依存性となり、基本波
の 4 次、2 倍波の 1 次の過程と、基本波の 2 次、2 倍波の 3 次の過程が競合することを示
している。また、これらの予想を実験で検証している。同回転の場合は理論と一致する結
果が得られたのに対して、逆回転の場合は理論と一致せず、要因として自己収束の効果の
可能性を挙げている。また、逆回転の場合には円偏光から少しでもずれると、4 倍波より
強い 3 倍波が発生することを数値計算と実験で示している。
第6章は結論であり、本論文のまとめと展望が述べられている。
以上のように本研究では、円偏光、楕円偏光励起の高調波発生における偏光の選択則と
位相整合に着目し、実験、理論、数値解析を通して、光と媒質の間での角運動量の授受や、
非同軸入射、二色円偏光励起での高調波発生の機構について、新しい知見を得ることに成
功している。本論文の成果は、発生する高調波の次数、偏光、方向、強度依存性等につい
て、光子描像と波動描像の両方の視点から統一的な理解を与えている点で、また、高調波
発生の制御や空気中におけるレーザー加工の理解の発展に寄与する可能性を含む点で、
その意義は大きい。
なお、本論文第2章は、F. Kong、C. Zhang、P. Corkum との共同研究であるが、論文
提出者が主体となって測定、解析及び数値計算を行ったもので、論文提出者の寄与が十分
であると判断する。また、第3、4,5章は、小西邦昭、湯本潤司、五神真との共同研究
であるが、論文提出者が主体となって実験の考案、測定、解析及び数値計算を行ったもの
で、論文提出者の寄与が十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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参考文献

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