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大学・研究所にある論文を検索できる 「慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者におけるデュアルエナジーCTを用いた末梢血管障害の評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者におけるデュアルエナジーCTを用いた末梢血管障害の評価

Onishi, Hiroyuki 神戸大学

2021.03.25

概要

【背景/目的】
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は、器質化した血栓による肺動脈の狭窄や閉塞を特徴とし、肺血管抵抗(PVR)の上昇や肺動脈圧の上昇を来し最終的には右心不全を引き起こす。最近の研究において、CTEPH 患者は、単に器質化血栓による物理的な肺動脈閉塞だけではなく、肺動脈性肺高血圧症の病理像で認められるような末梢血管障害の合併も関与する病態との疾患概念が確立しつつある。

CTEPH における末梢血管障害の評価方法としては、以前より肺動脈造影毛細血管相での胸膜下の灌流低下の所見が提唱されてきた。近年使用可能となったDual-energy CT (DE- CT)は、低管電圧X 線と高管電圧X 線を使用して、肺野の高感度ヨードマップを作成し、肺灌流血液量の定量化(Lung perfused blood volume: Lung PBV)、及びヨードマップでの色分けにより胸膜下灌流低下の定性的評価がより低侵襲に可能となっている。

しかし、CTEPH 患者におけるDE-CT を用いた末梢血管障害の評価方法は、十分確立されていない。我々は、胸膜下灌流低下は末梢血管障害の存在を示唆し、さらには末梢血管障害が血行動態をさらに増悪させるとの仮説の元、DE-CT での胸膜下灌流の評価法の妥当性および肺灌流血液量と血行動態との関連性を検討した。

【方法】
対象患者
2014 年 2 月から 2019 年 6 月の間に神戸大学病院で CTEPH と診断され、さらにDE-CTを施行された患者を対象とした。除外基準は、DE-CT を拒否した患者、機能障害のために DE-CT 施行が困難な患者、極度の右心不全のため検査が不適切と判断された患者、以前に肺動脈内膜摘除術または肺動脈バルーン拡張術を施行されたことがある患者とした。
CTEPH 診断時のルーチン評価として右心カテーテル・肺動脈造影・肺機能・動脈血ガス検査、自覚症状(NYHA 分類)、6 分間歩行距離(6MWD)、および心肺運動負荷試験を施行した。

肺動脈造影および DE-CT 撮影プロトコル
肺血管造影時に左右肺動脈を経カテーテル的に選択しそれぞれに造影を行い、DSA 撮像法にて行った。
DE-CT は、電圧 150 kV の管球および電圧 80kV の管球を用いて、経末梢静脈より造影剤注入し肺野の撮影を行った。高電圧画像と低電圧画像を融合することによって合成画像を作成し、5mm 間隔毎にヨードマップでの色分けを行った。

肺動脈造影および DE-CT を使用した胸膜下灌流の評価
既に報告されている定義と同様に胸膜下領域を水平断で外側胸膜から 1.5 cm 以下と定義し、肺動脈造影およびDE-CT で評価を行った。DE-CT での評価は、5mm スライス毎に、肺野灌流パターンに応じて以下の 3 つに分類した(①正常灌流、②楔形の血流欠損、③胸膜下の灌流低下)。②の楔形状血流欠損については、支配血管がより中枢側の器質化血栓による閉塞が原因であるため末梢血管障害の評価は不適切と考え、その区域を除外して検討した。既報の定義と同様に、すべての区域で胸膜下の灌流低下を認める場合に、末梢血管障害ありと判断した。

統計解析
患者の年齢、6MWD、Lung PBV、血行動態、運動耐容能、肺機能などの連続変数の差を、正規分布ではStudent t 検定、非正規分布では Mann–Whitney U 検定を使用して比較した。患者の性別、NYHA 分類、および薬剤の使用については独立性をχ2 検定で比較し た。 肺動脈造影とDE-CT の間の評価者間の一致率は、McNemar 検定によって確認した。

【結果】
研究期間中に 95 名をCTEPH と診断した。1 名が腎機能障害のため、1 名が右心不全のためDE-CT 施行できず除外し、残りの 93 名を研究に登録した。

DSA と DE-CT 間での末梢血管障害の評価
肺動脈造影評価での末梢血管障害は 38 人の患者(40.9%)で観察されたが、DE-CT 評価による末梢血管障害は 49 人の患者(52.7%)で観察され、一致率は、κ= 0.62 [95%CI: 0.46-0.78]、p <0.01 であった。DE-CT による末梢血管障害の評価は肺動脈造影の評価と有意に一致し、信頼性があると判断した。

DE-CT を用いた末梢血管障害を伴う CTEPH の特徴
DE-CT で末梢血管障害を認めた 49 名をPoorly perfused 群、末梢血管障害を認めなかった 44 名をnormally perfused 群とした。
Poorly perfused 群では、肺血管抵抗(PVR)や平均肺動脈圧(mPAP)はより重症であり、(PVR: 879 ± 409 dynes-sec/cm5 vs. 574 ± 279 dynes-sec/cm5, p<0.01、 mPAP: 39.7 ± 10.1 mmHg vs. 35.0 ± 10.4 mmHg, p=0.03)、Lung PBV も有意に低かった(22.1 ± 5.4 Hounsfield unit vs. 26.4 ± 6.6 Hounsfield unit, p<0.01)。また、呼吸機能検査では肺拡散能(%DLCO/VA) はより障害されていた(59.9 ± 15.4% vs. 78.8 ± 14.2%, p<0.01)。

肺灌流血液量(Lung PBV)と肺血管抵抗(PVR)の相関関係
本研究に登録した 93 名すべての患者のLung PBV と PVR の相関関係を検討したところ、PVR が高いほどLung PBV が低下するという有意な逆相関関係を認めた (PVR=7103.3×lung PBV score -0.762, R² = 0.169, p<0.01)。
さらにそれぞれの群で解析を行ったところ、Poorly perfused 群では相関関係は認められなかった(PVR= 2638.4× lung PBV score -0.397, R² = 0.044, p=0.15)のに対し、normally perfused群ではさらに強い相関関係を認めた(PVR= 6816.1×lung PBV score -0.793, R² = 0.225, p<0.01)。

CTEPH の DE-CT における末梢血管障害の予測因子
DE-CT による末梢血管障害に影響を与える臨床的指標が何であるかを明らかにするためにロジスティック回帰分析を行った。
多変量解析では、肺血管抵抗(PVR)(adjusted odds ratio (OR) 1.001, 95% confidence interval (CI) 1.000–1.001, p=0.04)および肺拡散能(%DLCO / VA)が DE-CT の末梢血管障害の存在と関連していた(OR 0.912, 95% CI 0.864–0.962, p<0.01)。DE-CT での末梢血管障害を予測するための%DLCO/VA の最適なカットオフ値を評価するために、a receiver-operating characteristics curve (ROC) 解析を行ったところ、%DLCO / VA 71.2%が最適なカットオフ値であった(Area under the curve:0.840、感度:79.2%、特異性:76.7%)。

【考察】
近年、CTEPH の発症及び病態の進行に末梢血管障害が関与する事が提唱されているが、その臨床的意義は明らかではなかった。本研究では末梢血管障害を伴うCTEPH は血行動態がより重症であった。

本研究において肺灌流血液量(Lung PBV)と肺血管抵抗値(PVR)の相関関係を調べている。末梢血管障害がない CTEPH はLung PBV と PVR は有意な逆相関となる、つまり血管の狭窄や閉塞によるLung PBV の低下に逆相関して PVR は上昇する。しかしながら末梢血管障害があるCTEPH は Lung PBV と PVR との間に相関関係は認めなかった。これは、末梢血管障害がある場合、器質化血栓による狭窄や閉塞のみならず、末梢血管障害の存在が血行動態および病態の進行に寄与する可能性が示唆される。

また、末梢血管障害の評価方法としては、肺動脈造影による胸膜下灌流低下が既に報告されてきたが、DE-CT を用いた評価法は三次元かつ造影不良も少なく、高精度な評価が可能であった。さらには、DE-CT は肺灌流血流量をLung PBV として定量評価が可能であり病態評価に有用であった。

さらに、以前から肺拡散能(DLCO)は、CTEPH 患者における予後不良因子の一つと報告されていたが、本研究においても DLCO の低下と末梢血管障害には強い関連を認め、%DLCO/VA は末梢血管障害の存在を予測する因子であった。

【結論】
末梢血管障害の存在は CTEPH の血行動態に関与し、末梢血管障害を伴う CTEPH は血行動態的により重症となる。DE-CT は、CTEPH において肺灌流血流量の定量評価だけではなく、末梢血管障害の評価にも有用だと考えられた。

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