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大学・研究所にある論文を検索できる 「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 動物モデルを用いたニコチンアミドおよび N 1 メチルニコチンアミドによる脂肪肝改善メカニズムに関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 動物モデルを用いたニコチンアミドおよび N 1 メチルニコチンアミドによる脂肪肝改善メカニズムに関する研究

横内, 千恵 YOKOUCHI, Chie ヨコウチ, チエ 九州大学

2021.03.24

概要

近年、世界平均で成人の 10 〜30% が飲酒を原因としない非アルコール性脂肪性肝疾患 (nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD) に罹患している。NAFLD は単純性の非アルコール性脂肪肝 (nonalcoholic fatty liver: NAFL) と、肝 硬変や肝 がんに進展する非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH) の大きく 2 つに分類される。既に共同研究者の後藤、竹内らによって、肝臓内の TG 蓄積を主な特徴とする単純性脂肪肝モデルラットを用いて、ペルオキシソーム増生剤の dehydroepiandrosterone sulfate (DHEAS) を一定期間投与すると、脂肪肝の肝臓から脂肪滴が顕著に減少することを明らかにしている。これは、肝細胞内のペルオキシソーム増生による脂肪酸 β 酸化の亢進が脂肪肝改善作用に一部、寄与していると考えられている。また、共同研究者の竹内によって、単純性脂肪肝モデルラットを用いて、nicotinamide (NAM) の代謝物である N1-methylnicotinamide (MNA) と aldehyde oxidase (AO) 阻害剤である hydralazine (HYD) を一定期間投与すると、脂肪肝の肝臓から脂肪滴が顕著に減少することを明らかにしている。MNA は AO で代謝されることから、HYD の AO 阻害により、肝臓中 MNA 濃度が増加することで,肝臓の脂肪酸 β酸化に関与するタンパク質である sirtuin 1 が安定化し、肝臓の脂質レベルを低下させることが考えられている。この観点から、本研究では、経口投与された NAM が体内で代謝され、生成した MNAにより脂肪肝改善効果が認められるのか検討した。NAM は肝臓の細胞質画分に局在する nicotinamide N-methyltransferase (NNMT) によって SAM のメチル基が供与されることで、代謝物である MNA を生成する。NAFLD の脂肪肝病態を改善するために、内因性の SAM だけで十分か、それとも外因性の SAM を追加・補充する必要があるのかは、これまで不明のままであった。代謝酵素 NNMT の補酵素である SAM を併用経口投与することにより、MNA の前駆体である NAM から MNA への肝臓内変換を亢進させ、さらに AO 阻害剤である HYD を併用経口投与することにより、 MNA の速やかな肝代謝を抑え、肝臓内の MNA 濃度の維持を図った。

第一章では、脂肪肝の疾患レベルが比較的軽度であるオロチン酸および高スクロース食誘発NAFL モデルラットを肝用して、NAM,SAM,HYD の単肝或いは併用投与において脂肪肝改善作用を検証した。その結果、NAM+SAM+HYD を併用投与した脂肪肝ラットで、肝臓中 MNA 濃度が増加し、脂肪肝改善効果が認められた。次に、肝臓内の TG 蓄積以外に肝臓に炎症と線維化を伴う、より重篤な NASH モデルラットを用いて、NAFL モデルラットで薬効が認められた MNA+HYD 或いは NAM+SAM+HYD の脂肪肝改善作用を検証した結果、MNA+HYD 及び NAM+SAM+HYD を併用投与した脂肪肝ラットでは、肝臓中 MNA 濃度の増加が認められず、脂肪肝改善効果も認められなかった。

第二章では、第一章で用いたオロチン酸および高スクロース食誘発 NAFL モデルラットとは異なる作製方法の NAFL モデル動物である、グルタミン酸誘発 NAFL モデルマウスおよびグルタミン酸誘発 NAFL モデルラットを用いて、MNA および DHEAS の脂肪肝改善作用を検証した。その結果グルタミン酸誘発 NAFL モデルマウスにおいて、HYD 単肝、MNA+HYD 併用投与、グルタミン酸誘発 NAFL モデルラットにおいては、MNA 単肝投与により、肝臓中 MNA 濃度が増加し、脂肪肝改善効果が認められた。また、グルタミン酸誘発 NAFL モデルマウスおよびグルタミン酸誘発 NAFLモデルラットにおいて、DHEAS 単肝投与により、肝臓中 MNA 濃度およびペルオキシソーム増生が確認され、脂肪肝改善効果が認められた。以上の結果より、オロチン酸および高スクロース食誘発 NAFL モデルラットとは異なるグルタミン酸誘発 NAFL モデル動物においても、MNA 及び DHEASによる脂肪肝改善効果があることが確認された。

第三章では、第一章のオロチン酸および高スクロース食誘発 NAFL モデルラットにおける NAM+SAM+HYD の脂肪肝改善のメカニズムの一端を解明するために、in vitro 試験において SAMおよび HYD の併用が NAM の代謝物である MNA の生成及び代謝に及ぼす影響を検討した。オロチン酸および高スクロース食誘発NAFL モデルラットの FL 群の肝ホモジネートにHYD を添加し反応をかけると、HYD 非添加に比べ肝臓中 MNA 濃度が増加した。これらの結果より、HYD の添加により AO の代謝が阻害され、MNA の生成量が増加することが明らかとなった。さらに HYD 存在下に SAM を添加し反応をかけると、HYD のみを添加したときに比べて肝臓中 MNA の生成量が大きく上回った。これらの結果より、外因性の SAM を添加することにより、NNMT が効率的に NAMをMNA へ代謝させ、SAM 非添加時に比べてMNA の生成量が増加したのではないかと推測される。第一章と第三章の結果より NAM で脂肪肝を改善させるためには、外因性の SAM と HYD などの AO 阻害剤の併用が脂肪肝改善に有益な効果をもたらすことが分かった。

本研究で得られた知見は、NAFL の有効な治療法の一つに繋がる可能性があると考えられた。

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