リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「アンチセンス核酸プローブを用いた生細胞における内在性mRNAの1分子蛍光イメージング」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

アンチセンス核酸プローブを用いた生細胞における内在性mRNAの1分子蛍光イメージング

武田, 駿介 東京大学 DOI:10.15083/0002006205

2023.03.24

概要





















武田

駿介

遺伝子発現を担う分子である mRNA は、その量、局在、状態などが複雑に制御され、細胞の臨機応変
な応答を担っている。この制御機構の詳細を明らかにするため、mRNA 動態の直接観察は有効な手段で
ある。これまで、mRNA の 1 分子イメージング自体は標的にタグ配列を挿入する手法により実現されて
いるが、遺伝子操作によって mRNA の構造が大きく変わるため、分解や翻訳抑制が阻害されるという問
題がある。一方、標的 mRNA に相補的な配列を持つ核酸プローブ(アンチセンスプローブ)を導入する
ことで内在性 mRNA の検出が可能だが、標的に結合しないプローブが高い背景光になるという問題があ
る。武田は、細胞内でアンチセンスプローブと mRNA の親和性を定量的に評価するための新規測定法を
構築し、高い結合能を有する配列を選択する方法を実現した。さらに、得られた高親和性のアンチセンス
プローブで mRNA の 1 分子イメージングに成功した。
本論文は、6 章より構成されている。第1章「序論」では、本研究の背景と、目的および概要が記載さ
れている。第2章では「材料及び細胞の培養と実験手法」について述べられている。
第3章では、
「FRAP による結合率定量のための実験系構築」について述べられている。武田は、mRNA
はアンチセンスプローブに比べて大きく、複数のタンパク質との巨大複合体であるため、アンチセンス
プローブが mRNA に結合すると拡散が遅くなることに着目した。そして、光退色後蛍光回復法
(Fluorescence Recovery After Photobleaching, FRAP)を用いて、アンチセンスプローブの結合能を評価した。
これを実現するために、蛍光強度の回復曲線を適切にフィッティングできる理論モデルについて検討を
行い、そのモデルが要請する条件を満たす光学系を構築した。具体的には、スピニングディスク型共焦点
顕微鏡法を用いて焦点面以外の蛍光の影響を落射照明に比べ大幅に低減すると共に、デジタルミラーデ
バイスを用いて特定の領域のみを照射可能にする光学系を構築した。この光学系を用い、COS7 細胞に対
し 3 µM Cy3 標識オリゴ 2'-O-methyl RNA プローブをマイクロインジェクション法により導入し、FRAP
データを取得した(図 1A)。得られた回復曲線を、Soumpasis のモデルに基づき解析した(図 1B,C)。COS7
細胞に存在しない Firefly luciferase (Fluc) mRNA を標的にしたプローブを用いると 1 成分の拡散としてフ
ィッティングされた一方で、Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase (GAPDH) mRNA を標的としたプロ
ーブではより遅い成分を加えた 2 成分の拡散としてフィッティングされ、自由拡散するアンチセンスプ
ローブと、mRNA に結合したアンチセンスプローブの量を定量することに成功した。この量比を用いて
アンチセンスプローブの結合能を評価するした。

第4章では、
「GAPDH mRNA に対するプロー
ブの設計と結合評価」について述べられている。
武田は、GAPDH mRNA のコーディング領域を標
的としたアンチセンスプローブ配列を複数選択
した。まず、RNA の2次構造予測ソフトウェア
である CentroidFold を用い、アンチセンスプロ
ーブが取る2次構造を予測した。A と U、G と
C、G と U の 3 種のいずれかの結合が 2 塩基以
上連続しているものを自己相補配列と定義し
た。可能な 989 の配列のうち自己相補配列が存
在するものは 834 あり、割合にして 84.3%と大
部分が自己相補的な配列を持っていた。自己相
補性が親和性に影響するか確かめるため、自己
相補的でない配列の中から 4 種、自己相補配列
を持つ配列から 17 種を選び、Cy3 標識の 2´Omethyl RNA を調製し、3 章で構築した FRAP 実
Target #は GAPDH mRNA コーディング領域の標的塩基部
験により結合評価を行った(図 2)。その結果、配
位を、四角で囲まれた配列は mRNA 二次構造予測による
列によって結合率は大きく異なっていた。しか
分子内結合形成部位を表す
し、一般に核酸のハイブリダイゼーションで考
慮される GC 含有量やアンチセンスプローブの自己相補性とは相関が見られなかった。この結果から、in
vitro と細胞内ではアンチセンスプローブの結合能が異なることが示唆され、細胞内で結合評価を行うこ
との重要性を確認した。さらに、beta-actin mRNA を標的としたアンチセンスプローブについても同様の
結果を得た。
第 5 章では、「アンチセンス核酸プローブを用いた
GAPDH mRNA の 1 分子イメージング」について述べられ
ている。結合能の高いアンチセンスプローブを結合評価実
験時に比して低濃度(0.75 µM)で COS7 細胞に導入するこ
とで背景光を低減し、1 分子 GAPDH mRNA の可視化を試
みた。高い結合能を示したアンチセンスプローブを用いる
と、多くの輝点が動く様子が観察された。輝点は細胞質に
広く分布していた。一方、低い結合能のアンチセンスプロ
ーブを用いると観察される輝点が少なくなった。さらに、
Fluc mRNA を標的としたアンチセンスプローブでは輝点
はほとんど観察されなかった。以上の結果は、結合能の高
いアンチセンスプローブを選択することにより内在性
mRNA の 1 分子レベルでの可視化が可能であることを示し
ている。高結合能アンチセンスプローブを用いて観察され
た輝点の運動解析により、輝点の拡散係数は 0.15 µm2/s と
求められた。また、検出された輝点の輝度解析を行い、1 分
子の蛍光が観察されていることを確認した。
観察されている輝点が GAPDH mRNA 由来であることを
示すため、GAPDH mRNA を標的とした Cy3 もしくは
ATTO647N で標識された複数のアンチセンスプローブを配
列の重複が無いよう選び(Cy3 標識から 5 種、ATTO 647N
図 3. 共局在した輝点が動く様子.
標識から 4 種、それぞれ 2.5 µM になるよう調製)
、これを
黄色矢印は同じ輝点が動く様子を表し、青色
同時に COS7 細胞に導入することで GAPDH mRNA を 2 色
矢印は 0.5 秒時点で観察されなかった輝点が
1.0 秒時点で観察されたことを表す。scale = 5
で標識し、両者のシグナルの共局在を 2 波長分岐型スピニ
ングディスク共焦点顕微鏡を用いて観察した。その結果、 µm
両者で観察される輝点の分布が重なることが観察された。
より詳細な観察により、それぞれの色素由来の輝点が共局在して動く様子が観察された(図3)
。同様の
実験系で Cy3 標識 Fluc mRNA 標的アンチセンスプローブを用いたコントロール実験では、Cy3 の蛍光で
のみ輝点が顕著に観察されなくなった。以上の結果より、各種アンチセンスプローブに配列特異性があ
り、同じ標的 mRNA 分子と結合していることを示した。
第 6 章では、
「総括及び今後の展望」について述べられている。本研究では、生細胞内でアンチセンス

核酸プローブの結合を定量する手法を確立した。これにより、高結合能のアンチセンスプローブをスク
リーニングすることを可能にした。さらに、得られたアンチセンスプローブを用いて、内在性 mRNA の
1 分子イメージングを実現した。アンチセンスプローブを用いて任意の内在性 mRNA の 1 分子イメージ
ングを実現したことにより、RNA 制御機構の解明への貢献が期待される。よって本論文は博士(薬科学)
の学位請求論文として合格と認められる。

この論文で使われている画像

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る