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Point mutation in the stop codon MAV_RS14660 increases the growth rate of Mycobacterium avium subspecies hominissuis

河喜多 智美 横浜市立大学

2021.03.25

概要

1. 序論
Mycobacterium 属菌(抗酸菌)は,倍加時間が 4 時間から 12 ⽇間と他の細菌に⽐べて⻑く,その倍加時間から迅速発育菌群と遅発育菌群に分類されている.遅い発育速度は,抗酸菌が宿主の免疫機構から逃れて細胞内での寄⽣状態を維持するための重要な要因の⼀つである.そのため,抗酸菌の増殖を制御する因⼦についての様々な研究がなされており,増殖制御因⼦が、同時に薬剤耐性や代謝に関与することが報告されている(Mariam et al., 2004; Mathew et al., 2006).

遅発育菌群に分類される Mycobacterium avium subspecies hominissuis(MAH)は,ヒトに病原性をもつ抗酸菌の⼀つであり,⾮結核性抗酸菌症の起因菌となることが知られてい る.本研究では,MAH 臨床分離株の⼀つである MAH104 株から分離した増殖の速い変異株(N104 株)を⽤いて、親株(P104 株)と表現型および遺伝⼦の⽐較解析を⾏い,N104株に増殖速度の上昇をもたらす変異を同定した.

2. 実験材料と⽅法
iddlebrook 7H10 寒天培地上で MAH 株を培養し,コロニーの形態観察を⾏なった. Middlebrook 7H9 液体培地での増殖を濁度および Colony Forming Unit(CFU)の測定により評価した.

イルミナ MiniSeq システムを⽤いて、N104 株および P104 株の全ゲノムシークエンシングを⾏い,NCBI データベースに登録されている MAH104 配列をレファレンスとして P104株と N104 株の変異を検出し、N104 株に特有な変異の探索を⾏なった.当該変異の前後にある遺伝⼦由来タンパクの C 末端に His タグ配列を融合させたリコンビナントタンパクを 作製し,SDS ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による発現タンパクの解析を⾏った.

リコンビナーゼを保有するシャトルベクターpJV53 を⽤いた相同遺伝⼦組換えにより(van Kessel and Hatfull, 2007),N104 株の変異を P104 株の配列に置き換えた変異復帰株(NP 株)を作製し,7H9 液体培地での増殖を濁度および CFU の測定により評価した.

N104 株,P104 株および NP 株について,クラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールおよびレボフロキサシンの薬剤感受性試験を⾏なった.

3. 結果
N104 株のコロニーは P104 株よりも短い培養期間で⾁眼にて確認できる⼤きさに達し た.液体培地中では,培養 2 ⽇から N104 株の急激な濁度の上昇が認められ,CFU で確認した結果,培養3⽇まで N104 株の増殖速度が P104 株に⽐べてより⼤きいことが明らかになった.

全ゲノム配列の⽐較による変異解析から N104 株に特有な⼀塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)が⼀つ検出された.この SNP により,N104 株では MAV_RS14660遺伝⼦の終⽌コドンがトリプトファンに置換され,後ろに続く MAV_RS14655 遺伝⼦と⼀繋ぎのコーディング領域として転写されている可能性が⽰された.SDS-PAGE によるリコンビナントタンパクの分⼦量の推定から,N104 株はMAV_RS14660 と MAV_RS14655 の融合タンパクを発現していることが⽰唆された.
N104 株の SNP を P104 株の配列に組換えた変異復帰株 NP 株の増殖速度は P104 株と同程度まで低下した.
N104 株,P104 株および NP 株の薬剤感受性試験では,N104 株の SNP を持つ株でより強い薬剤耐性を確認した.

4. 考察
N014 株では、MAV_RS14660 終⽌コドンのトリプトファンへの置換が⽣じており、この変異により N104 では MAV_RS14660 タンパクと MAV_RS14655 タンパクが融合して発現していることが⽰唆された.また、この変異が N104 株で認められた増殖速度の上昇の原因となっていることが⽰された。Philalay et al. (2004)は MAV_RS14660 の⽋失変異体では増殖速度の低下と複数の抗菌薬に対する感受性の上昇を報告している.本研究で確認した変異体では増殖速度の上昇と抗菌薬感受性の低下を⽰しており,この変異は MAV_RS14660 遺伝⼦の機能の増強に関連している可能性が⽰された.

MAV_RS14660 タンパクの機能およびその分⼦機構については未だ解明されていない.しかしながら,MAV_RS14660 は抗酸菌で保存性の⾼い領域であり,結核菌のオルソログである Rv1697 は,結核菌の複製,翻訳,および増殖速度の維持に重要な役割を果たすことが⽰唆されている(Fu and Fu-Liu, 2007).本研究では MAV_RS14660 の変異が増殖速度の増加をもたらすことを明らかにした.今後,本遺伝⼦の機能解析や、増殖および薬剤感受性に対する更なる解析により、抗酸菌の新規薬剤耐性機構などの臨床的に重要性な知⾒が得られることが期待される.

参考文献

Fu, L. M. and Fu-Liu, C. S. (2007), “The gene expression data of Mycobacterium tuberculosis based on Affymetrix gene chips provide insight into regulatory and hypothetical genes”, BMC Microbiology, 7, 1‒11. doi: 10.1186/1471-2180-7-37.

van Kessel, J. C. and Hatfull, G. F. (2007), “Recombineering in Mycobacterium tuberculosis”, Nature Methods, 4(2), 147‒152. doi: 10.1038/nmeth996.

Mariam, D. H., Mengistu, Y., Hoffner, S. E. and Andersson, D. I. (2004), “Effect of rpoB mutations on fitness of Mycobacterium tuberculosis.”, Antimicrob Agents Chemother, 48(4), 1289‒1294. doi: 10.1128/AAC.48.4.1289.

Mathew, R., Mukherjee, R., Balachandar, R. and Chatterji, D. (2006), “Deletion of the rpoZ gene, encoding the ω subunit of RNA polymerase, results in pleiotropic surface-related phenotypes in Mycobacterium smegmatis”, Microbiology, 152(6), 1741‒1750. doi: 10.1099/mic.0.28879-0.

Philalay, J. S., Palermo, C. O., Hauge, K. A., Rustad, T. R. and Cangelosi, G. A. (2004), “Genes required for intrinsic multidrug resistance in Mycobacterium avium”, Antimicrobial Agents and Chemotherapy, 48(9), 3412‒3418. doi: 10.1128/AAC.48.9.3412-3418.2004.

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