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大学・研究所にある論文を検索できる 「ルブリシンによる関節軟骨最表層細胞の制御機構の解明」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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ルブリシンによる関節軟骨最表層細胞の制御機構の解明

前之原, 悠司 東京大学 DOI:10.15083/0002006195

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 前之原 悠司
本研究は関節軟骨最表層(Superficial zone; SFZ)において潤滑性の維持に重要とされている
Proteoglycan4(Prg4)遺伝子にコードされるルブリシンの新たな機能を明らかにするために行
われた研究であり、下記の結果を得ている。
1.

Prg4-GFP-CreERT2 遺伝子をホモアレル(Prg4GFPCreERT2/ GFPCreERT2)として、ルブリシンの
機能を欠失したマウス(以下 Prg4KO マウス)において野生型マウス(WT マウス)と異な
り SFZ の消失と軟骨の肥厚が見られた。Prg4GFPCreERT2/GFPCreERT2;Rosa26tdtomatofl/+
(Prg4KO-Tomato)マウスと Prg4GFPCreERT2/+;Rosa26tdtomatofl/+(Prg4Ht-Tomato)マウスを用
いて行なった Prg4 陽性細胞のセルトラッキングでは Prg4KO-Tomato マウスにおいて
Prg4Ht-Tomato マウスと比較して通常では SFZ に存在する Prg4 陽性細胞が深層に存在
していた。さらに非荷重環境下である ex vivo で行なった大腿骨頭器官培養においても
Prg4KO マウスにおいて WT マウスと比較して SFZ が菲薄化していた。これらの結果
からルブリシンが SFZ 細胞の軟骨分化を抑制していることが示唆された。

2.

ATDC5 細胞において潤滑性の維持に重要な Exon6 を有しないマウス Prg4 transvariant
type2(Prg4-tv2)の過剰発現を行うと Green fluorescent protein(GFP)を過剰発現したコント
ロールと比較して軟骨分化が抑制されていた。続いて WT マウスと Prg4KO マウスの
SFZ 細胞を用いたペレット培養では Prg4KO マウスのペレットにおいて WT マウスの
ペレットと比較して軟骨分化が亢進していた。これら in vitro の結果はルブリシンが
SFZ 細胞の軟骨分化を抑制しているという 1.で示した仮説を支持する結果である。

3.

p5 の WT マウスと Prg4KO マウスの SFZ 細胞を用いて RNA シークエンスを行なった
ところ Gene ontology 解析において positive IκB kinase/ NF-kappaB signaling など炎症に
関連する term が検出されていた。個々の遺伝子においては Fragments Per Kilobase of
transcript per Million fragments sequenced (FPKM 値)でカットオフ値を設定し抽出したと
ころ Mmp9 の増加幅が最も大きかった。この結果から Prg4KO マウスの SFZ 細胞にお
いて Nuclear factor-kappa B (NF-κB)シグナルの亢進と Mmp9 の発現上昇が起こってい
る事が示唆された。

4.

Prg4KO マウスの表現型は NF-κB シグナルの亢進と Mmp9 の発現上昇だけでは説明
困難であることから、Mmp9 の発現上昇がさらに別の分子シグナルの調節に関与し、
Prg4KO マウスの表現型を引き起こしていると考察した。考察を基に Mmp9 の種々の
シグナルに関連する既報と Prg4KO マウスの表現型を勘案し、本研究においては TGFβ
シグナルに着目し pSmad2 の免疫染色を SFZ 細胞のペレットを用いて行なったとこ

ろ、Prg4KO マウスのペレットでは WT マウスのペレットと比較して pSmad2 の陽性細
胞率が増加していた。この結果から Prg4KO マウスの SFZ 細胞では TGFβ シグナルが
亢進している事が示された。
5.

Prg4KO マウス SFZ 細胞のペレットで見られた軟骨分化の亢進と Mmp9 の発現上昇
、pSmad2 の陽性細胞率の増加は IκBα キナーゼ阻害剤 BMS345541 を用いた NF-κB シ
グナルの抑制により WT マウスのペレットと同程度まで抑制された。さらに TGFβ1 受
容体阻害剤(SB525334)を用いた TGFβ シグナルの抑制により Prg4KO マウス SFZ 細胞
のペレットで見られた軟骨分化の亢進が WT マウスのペレットと比較しても有意に低
下していた。従って Prg4KO マウスの SFZ 細胞の軟骨分化の亢進は NF-κB シグナルを
介しており、TGFβ シグナルが重要であるということが示唆された。
以上、本論文はルブリシンが SFZ において NF-κB シグナルを介して Mmp9 の発現をコ

ントロールし、TGFβ シグナルの異常な活性化を抑制することで SFZ 細胞の軟骨分化を抑
制していることを明らかにした。本研究はこれまで未知であったルブリシンの SFZ におけ
る潤滑性の維持以外の機能とその分子生物学的機序の解明、ひいては変形性関節症の新た
な治療法の開発に重要な貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士(医学)の学位請求論文として合格と認められる。

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