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大学・研究所にある論文を検索できる 「The molecular mechanism underlying regulation of kisspeptin gene (Kiss1) expression that regulates reproduction in mammals」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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The molecular mechanism underlying regulation of kisspeptin gene (Kiss1) expression that regulates reproduction in mammals

HORIHATA, Kei 堀畑, 慶 名古屋大学

2020.04.02

概要

畜産現場において、ウシの受胎率の低下は世界的に深刻な問題である。日本では、 1988-2014 年の間に、乳用牛の受胎率が 62%から 44%へ、黒毛和牛の受胎率が 68%から 53%へと低下した( 家畜改良事業団報告、「平成 26 年受胎調査成績」)。受胎率の低下は、主に排卵障害または卵胞発育障害といった雌牛の繁殖障害に起因し、畜産物の生産性低下に直結することから、解決すべき深刻な問題である。

キスペプチンは Kiss1 遺伝子にコードされ、哺乳類の種を越えて、生殖を最上位で制御する神経ペプチドである。雌ラットにおいて、キスペプチンニューロンは弓状核および前腹側室周囲核( AVPV)に局在する。弓状核に局在するキスペプチンニューロンは、性腺刺激ホルモン放出ホルモン( GnRH)、ひいては性腺刺激ホルモンのパルス状分泌を制御する卵胞発育中枢という説が有力である。一方で、AVPV に局在するキスペプチンニューロンは、GnRH、ひいては黄体形成ホルモンのサージ状分泌を制御する排卵中枢と考えられている。Kiss1 遺伝子の発現は、キスペプチンニューロンに存在するエストロジェン受容体 α( ERα)を介して、弓状核ではエストロジェンによって抑制され、AVPV では促進されるが、Kiss1 発現制御メカニズムの詳細は不明である。本学位論文では、Kiss1 発現制御の細胞内分子メカニズムの解明を目的とした。

第 2 章では、細胞内の分子メカニズムを解明するための in vitro 解析に有用な、ラット弓状核および AVPV キスペプチンニューロンの不死化細胞株の樹立を試みた。成熟雌ラットの弓状核および AVPV それぞれの組織片から得た細胞を単離培養し、不死化処理を行った結果、弓状核から 89 クローン、AVPV から 86 クローンを得た。得られた細胞クローンにおける Kiss1、ERα 遺伝子( Esr1)、ニューロキニン B 遺伝子( Tac3)、ニューロキニン 3 受容体遺伝子( Tacr3)、ダイノルフィン A 遺伝子( Pdyn)発現を定量的 RT-PCR 法により検討し、弓状核および AVPV キスペプチンニューロン候補株を選抜した。弓状核由来 89 クローンのうち、弓状核キスペプチンニューロンに発現が高いと知られる Kiss1、Esr1、Tac3、Tacr3、Pdyn 発現が認められた 7 クローンを得た。AVPV 由来 86 クローンのうち、Kiss1 および Esr1 発現を示し、AVPV キスペプチンニューロンにおいては発現が低いと知られる Tac3、Tacr3、Pdyn 発現が認められなかっ た、もしくはその発現が著しく低かった 7 クローンを得た。これらの弓状核および AVPV キスペプチンニューロン候補株のエストロジェン対する反応性を検討するため、一部の候補株に異なる濃度の 17β-エストラジオール( E2)を添加し、Kiss1 発現量を定量的 RT-PCR 法により測定した。その結果、E2 添加による Kiss1 発現への有意な効果は認められず、Kiss1 発現が変化する株の特定には至らなかった。本研究より、ラット弓状核および AVPV 由来のキスペプチンニューロン候補株を複数得られたことから、これらの候補株が Kiss1 発現制御の細胞内分子メカニズムの解明のための有効なツールとして寄与できると期待される。一方で、今回検討した弓状核および AVPV キスペプチンニューロン候補株においては、E2 処理による Kiss1 発現への有意な効果が認められなかったことから、E2 による Kiss1 発現制御の細胞内分子メカニズムの解明に適したモデル株を樹立するためには、さらなる検討が必要であることが示唆された。

第 3 章では、Kiss1 発現制御の分子メカニズムの解明を目指し、新たな Kiss1 発現制御因子の探索および検討を行った。Kiss1 発現は、Kiss1 プロモーター領域のヒストンアセチル化および脱アセチル化により制御されるとの報告があるが、関与するヒストン修飾関連因子は不明である。雌ラットキスペプチンニューロンの RNA-seq データにて、高発現が認められた retinoblastoma binding protein 7( RBBP7) に注目し、Kiss1 発現制御への関与を検討した。In situ hybridization( ISH) 法により、視床下部における Rbbp7 発現の分布を検討した結果、キスペプチンニューロンが局在する弓状核および AVPV、および複数の神経核において Rbbp7 発現が認められた。次に、キスペプチンニューロンに Rbbp7 が発現しているか否かを double ISH 法により検討した結果、雌ラット弓状核および AVPV の Kiss1 陽性細胞において、Rbbp7 発現が両方の神経核とも 85%以上の高い共存率で認められた。そこで、キスペプチンニューロンにおける RBBP7 の役割を検討するために、マウス弓状核キスペプチンニューロンモデル細胞株( mHypoA- 55) において、Rbbp7 を siRNA によりノックダウンした結果、E2 の有無に関わらず Kiss1 発現が有意に減少した。以上から、齧歯類において、RBBP7 は E2 非依存的に Kiss1 発現を維持するために必要な因子であることが示唆された。

第 4 章では、第 2 章および第 3 章で得られた結果から、RBBP7 と Kiss1 発現制御メカニズムについて考察した。すなわち、「哺乳類の弓状核および AVPV キスペプチンニューロン内の Kiss1 発現制御メカニズムにおいて、RBBP7 は Kiss1 転写抑制因子の発現をヒストン脱アセチル化により抑制することで、Kiss1 プロモーター領域への転写因子類の結合の場を提供し、Kiss1 発現誘起を可能にする役割をもつ」という可能性を述べた。最後に、家畜の繁殖能力向上を目指した技術開発における、本研究成果の位置付け、ならびに応用のために必要な今後の研究における重要な課題についても言及した。

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