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書き出し

The mechanism underlying gonadotropin-releasing hormone pulse generation in rats

長江, 麻佑子 名古屋大学

2023.05.26

概要

報告番号







論文題目
















The mechanism underlying gonadotropin-releasing hormone
pulse generation in rats
(ラットにおける性腺刺激ホルモン放出ホルモンパル
ス発生を制御するメカニズム)
長江 麻佑子

論 文 内 容 の 要 旨
人口増加や経済発展に伴い、畜産物の需要は増加傾向が続くと予想されている
(ODCD-FAO Agricultural Outlook)。一 方 、畜 産 現 場 で は 、国 内 外 を 問 わ ず 家 畜 の 繁 殖 成
績の低下が大きな課題となっている。乳牛を例に取ると、凍結精液を用いた受胎率は
こ の 30 年 低 下 し 続 け 、 現 在 は 50%を 下 回 っ て い る (家 畜 改 良 事 業 団 )。 繁 殖 成 績 低 下
の原因を解明し、繁殖成績を向上させる新たな技術開発を行うためには、家畜を含む
哺乳類の生殖を制御するメカニズムに関する基礎的知見の集積が必須である。
哺 乳 類 の 雌 の 生 殖 機 能 は 、視 床 下 部 -下 垂 体 -性 腺 軸 で 制 御 さ れ て お り 、視 床 下 部 か ら
の 性 腺 刺 激 ホ ル モ ン 放 出 ホ ル モ ン (GnRH) の パ ル ス 状 の 分 泌 (GnRH パ ル ス ) は 、 下
垂 体 か ら の 黄 体 形 成 ホ ル モ ン (LH)、 卵 胞 刺 激 ホ ル モ ン (FSH) の 分 泌 を 介 し て 、 卵 胞
発 育 を 促 進 す る 。 実 験 的 に 、 GnRH を 持 続 的 に 投 与 す る と LH/FSH 分 泌 は 逆 に 抑 制 さ
れ る こ と か ら (Belchetz et al., 1978)、 GnRH パ ル ス は 、 LH お よ び FSH 分 泌 に 必 須 で あ
り 、GnRH パ ル ス を 形 成 す る 神 経 メ カ ニ ズ ム (GnRH パ ル ス ジ ェ ネ レ ー タ ー ) の 解 明 が
長 年 求 め ら れ て き た 。 本 学 位 論 文 で は 、 GnRH パ ル ス ジ ェ ネ レ ー タ ー の 同 定 お よ び そ
の制御メカニズムの解明を目的とした。
哺乳類の雌の生殖機能は、視床下部に局在する 2 群のキスペプチンニューロンによ
り 制 御 さ れ る 。弓 状 核 に 局 在 す る キ ス ペ プ チ ン ニ ュ ー ロ ン は 、キ ス ペ プ チ ン の ほ か に 、
促進性の神経ペプチドであるニューロキニン B と抑制性のダイノルフィン A を共発現
す る こ と か ら KNDy ニ ュ ー ロ ン と も 呼 ば れ る 。 様 々 な 状 況 証 拠 か ら 、 KNDy ニ ュ ー ロ
ン が GnRH パ ル ス ジ ェ ネ レ ー タ ー で あ る と い う 説 が 有 力 で あ る も の の 、 直 接 的 な 証 明
は な か っ た 。 第 2 章 で は 、 既 存 の 全 身 性 に キ ス ペ プ チ ン 遺 伝 子 (Kiss1) を ノ ッ ク ア ウ
ト (KO) し た ラ ッ ト を 用 い た KNDy ニ ュ ー ロ ン レ ス キ ュ ー 実 験 と 、 新 た に 作 製 し た
Kiss1-floxed ラ ッ ト を 用 い た 領 域 特 異 的 な Kiss1 KO に よ り 、KNDy ニ ュ ー ロ ン が GnRH
パ ル ス ジ ェ ネ レ ー タ ー で あ る こ と を 証 明 し た 。 す な わ ち 、 不 妊 を 呈 す る 全 身 性 Kiss1

KO 雌 ラ ッ ト の 弓 状 核 に Kiss1 を 発 現 す る ア デ ノ 随 伴 ウ イ ル ス (AAV) ベ ク タ ー を 局 所
投 与 す る こ と に よ り 、 弓 状 核 ニ ュ ー ロ キ ニ ン B 遺 伝 子 (Tac3) 発 現 細 胞 に Kiss1 発 現
を 回 復 さ せ た KNDy ニ ュ ー ロ ン レ ス キ ュ ー ラ ッ ト を 作 製 し 、 GnRH パ ル ス の 指 標 と し
て LH 分 泌 動 態 を 解 析 し た 。3%以 上 の KNDy ニ ュ ー ロ ン を レ ス キ ュ ー す る と 、 レ ス キ
ュ ー の 割 合 に 応 じ て LH パ ル ス が 回 復 し た 。 一 方 で 、 Tac3 発 現 細 胞 以 外 の 多 数 の 細 胞
に お い て Kiss1 発 現 を 回 復 し て も 、 LH パ ル ス は 回 復 し な か っ た 。 さ ら に 、 Kiss1 遺 伝
子 の 第 2、3 エ ク ソ ン を loxP 配 列 で 挟 ん だ Kiss1-floxed 雌 ラ ッ ト の 弓 状 核 へ Cre 組 換 え
酵 素 を 発 現 す る AAV ベ ク タ ー を 局 所 投 与 す る こ と に よ り 弓 状 核 特 異 的 Kiss1 KO ラ ッ
ト を 作 製 し 、 LH 分 泌 動 態 を 解 析 し た 。 そ の 結 果 、 90%以 上 の 弓 状 核 Kiss1 発 現 を KO
す る と 、 LH パ ル ス は 著 し く 抑 制 さ れ る こ と を 明 ら か に し た 。 以 上 の 結 果 よ り 、 KNDy
ニ ュ ー ロ ン が GnRH パ ル ス ジ ェ ネ レ ー タ ー の 本 体 で あ る こ と を 証 明 し た 。
KNDy ニ ュ ー ロ ン が GnRH パ ル ス を 発 生 す る メ カ ニ ズ ム と し て 、 促 進 性 の ニ ュ ー ロ
キ ニ ン B と 抑 制 性 の ダ イ ノ ル フ ィ ン A の 自 己 分 泌・傍 分 泌 に よ り KNDy ニ ュ ー ロ ン 自
身 の 活 動 を 制 御 し て い る と の 説 が 有 力 で あ る 。 第 3 章 で は 、 ラ ッ ト の KNDy ニ ュ ー ロ
ン の 多 く に ダ イ ノ ル フ ィ ン A 受 容 体 す な わ ち κ- オ ピ オ イ ド 受 容 体 (KOR) 遺 伝 子
(Oprk1) が 発 現 す る も の の 、 全 て の KNDy ニ ュ ー ロ ン に Oprk1 が 発 現 し な い こ と に 注
目 し 、KNDy ニ ュ ー ロ ン に お け る ダ イ ノ ル フ ィ ン A-KOR シ グ ナ リ ン グ の 生 理 的 役 割 を
明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。 Oprk1 発 現 細 胞 特 異 的 に Kiss1 を KO し た ラ ッ ト
(Oprk1-KpKO ラ ッ ト ) を 作 製 し 、生 殖 機 能 を 解 析 し た 。加 え て 、Kiss1 発 現 細 胞 特 異 的
Kiss1 KO ラ ッ ト (Kiss1-KpKO ラ ッ ト ) を 新 た に 作 製 し 、 生 殖 機 能 を 解 析 し 、 Oprk1KpKO ラ ッ ト の 表 現 型 と 比 較 し た 。Oprk1-KpKO 雌 ラ ッ ト お よ び 対 照 群 の Cre(-)/Kiss1floxed 雌 ラ ッ ト は 、い ず れ も 30〜 38 日 齢 の 間 に 性 成 熟 の 指 標 で あ る 膣 開 口 を 示 し 、両
群 間 の 性 成 熟 日 齢 に 有 意 な 差 を 認 め な か っ た 。対 照 群 の Cre(-)/Kiss1-floxed 雌 ラ ッ ト が
4 日 周 期 の 性 周 期 を 示 し た の に 対 し 、Oprk1-KpKO 雌 ラ ッ ト の ほ と ん ど が 5 日 周 期 の 性
周 期 を 示 し た 。さ ら に 、Oprk1-KpKO 雌 ラ ッ ト は 、野 生 型 雄 ラ ッ ト と の 交 配 に よ り 、妊
娠 、 出 産 し た が 、 産 仔 数 は 対 照 群 と 比 較 し て 少 な か っ た 。 卵 巣 除 去 Oprk1-KpKO ラ ッ
ト は 、弓 状 核 に 対 照 群 の 約 5%の Kiss1 発 現 細 胞 を 認 め 、明 瞭 な LH パ ル ス を 示 し た が 、
生 理 的 な 濃 度 の エ ス ト ロ ジ ェ ン を 代 償 投 与 す る と LH パ ル ス が 抑 制 さ れ た 。 一 方 、 弓
状 核 に お け る Kiss1 を 完 全 に 消 失 し た Kiss1-KpKO 雌 ラ ッ ト は 、 少 な く と も 56 日 齢 ま
で性成熟の指標となる膣開口を示さず、卵巣は小さく萎縮し、卵巣除去条件下におい
て LH パ ル ス を 完 全 に 欠 損 し た 。 以 上 よ り 、 KNDy ニ ュ ー ロ ン の 約 95%が Oprk1 を 発
現 し 、 Oprk1 を 発 現 し な い 約 5%の KNDy ニ ュ ー ロ ン が 直 接 ダ イ ノ ル フ ィ ン A-KOR シ
グ ナ リ ン グ を 受 け 取 ら ず と も 、 キ ス ペ プ チ ン を 分 泌 し 、 GnRH パ ル ス 、 卵 胞 発 育 ひ い
ては妊孕性を維持できることが示唆された。一方、生理的なステロイド環境下では残
り 95%の Oprk1 を 発 現 す る KNDy ニ ュ ー ロ ン が GnRH/LH パ ル ス の 発 生 に 必 要 で あ る
ことも示唆された。
本 研 究 で 用 い た Kiss1-floxed ラ ッ ト お よ び Kiss1-Cre ラ ッ ト は 、ラ ッ ト 胚 性 幹 細 胞 を
用いたジーンターゲティングにより作製し、その作製に複数年を要した。そこで、ト

ラ ン ス フ ォ ー マ テ ィ ブ 化 学 生 命 融 合 研 究 大 学 院 プ ロ グ ラ ム (GTR) の 融 合 研 究 と し
て、生理学研究所において、ラット受精卵を用いてノックインラットを効率的かつ迅
速に作製するため、複数の方法を比較・検討した。第4章では、はじめに、マイクロ
イ ン ジ ェ ク シ ョ ン 、 エ レ ク ト ロ ポ レ ー シ ョ ン お よ び AAV に よ る CRISPR-Cas9 シ ス テ
ムとターゲティングベクターの導入方法を種々検討した。その結果、ラット受精卵に
Cas9-ガ イ ド RNA 複 合 体 を エ レ ク ト ロ ポ レ ー シ ョ ン に て 導 入 し 、 そ の 後 、 タ ー ゲ テ ィ
ン グ ベ ク タ ー を 発 現 す る AAV を 感 染 さ せ る 方 法 で も っ と も 効 率 良 く 、 ノ ッ ク イ ン ラ
ッ ト を 作 製 で き る こ と を 示 し た 。さ ら に 、こ の 方 法 に よ り 、第 3 章 で 用 い た Oprk1-Cre
ラットをわずか 4 ヶ月で作製した。
第 5 章では、第 2 章および第 3 章で得られた結果から、哺乳類の生殖機能を司る
GnRH パ ル ス 発 生 の 制 御 メ カ ニ ズ ム に つ い て 考 察 し た 。 す な わ ち 、 視 床 下 部 弓 状 核 に
局 在 す る KNDy ニ ュ ー ロ ン が GnRH パ ル ス ジ ェ ネ レ ー タ ー の 本 体 で あ り 、 促 進 性 の ニ
ュ ー ロ キ ニ ン B と 抑 制 性 の ダ イ ノ ル フ ィ ン A の 自 己 分 泌・傍 分 泌 の ほ か に 、先 行 研 究
により示唆されたギャプジジャンクションを介した細胞間情報伝達により、同期した
神 経 活 動 を 形 成 す る 可 能 性 を 示 唆 し た 。 さ ら に 、 KNDy ニ ュ ー ロ ン の 数 に は 冗 長 性 が
あ り 、約 5% の KNDy ニ ュ ー ロ ン が あ れ ば 、GnRH パ ル ス が 維 持 さ れ 、繁 殖 可 能 で あ る
と い う 事 実 を も と に 、 低 栄 養 な ど に よ る 家 畜 の 繁 殖 障 害 の 克 服 に は す べ て の KNDy ニ
ュ ー ロ ン の 賦 活 化 は 必 要 な く 、 一 部 の KNDy ニ ュ ー ロ ン の 機 能 回 復 に よ っ て 繁 殖 成 績
を向上できる可能性を示唆するとともに、本研究成果が家畜の繁殖促進技術のシーズ
となることを考察した。また、本研究で新たに作製した遺伝子改変ラットを用いた繁
殖中枢メカニズム研究の展望についても言及した。

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