リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「日本における急性心不全発症数の推計 ~KUNIUMIレジストリーより~」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

日本における急性心不全発症数の推計 ~KUNIUMIレジストリーより~

藤本, 恒 神戸大学

2022.09.25

概要

背景)
社会の高齢化に伴って心不全が世界中で増加しており、「心不全パンデミック」と呼ぶべき状況の到来が懸念されている。そのため、世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本において心不全の疫学を調査することは、今後の対策を講じるうえできわめて重要である。しかし、これまでに人口動態調査に基づいた正確な心不全の罹患状況についての報告はなされていない。

淡路島は日本の離島の中で約13万5千人と最大の人口を有するが、高齢化が深刻な問題となっており、2015年時点で高齢化率は34.2%まで登り、日本の20年先を行く人口構成となっている。また、人の移動が少ない半閉鎖的な地域であり、疫学研究には適した環境にある。これらの特徴を活かし、Kobe University heart failure registry in Awaji Medical Center (KUNIUMIレジストリー)と称した超高齢化社会における心不全の疫学調査を淡路島において立ち上げた。

目的)
淡路島における急性心不全発症率を調べ、日本の将来における急性心不全の発症者数を推計する。

方法)
淡路島内にあるすべての急性期病院(聖隷淡路病院、東浦平成病院、順心淡路病院、淡路医療センター、洲本伊月病院、中林病院)と、島外南北の最近隣に位置する明石医療センター、鳴門病院が参加し、2015年から2017年の3年間に心不全の病名で入院となった淡路島在住の患者をすべて抽出し、カルテ調査を行った。フラミンガムうっ血性心不全の定義を満たさない患者は除外したうえで、急性心不全の新規発症について年間平均患者数を算出した。2015年時点での淡路島の人口動態統計を基に5歳刻みの年齢・性別の新規急性心不全発症率を算出した。その後、2015年~2055年までの予測人口構成を用いて性・年齢調節を行い、2015年~2055年における日本の推計急性心不全新規発症数を算出した。

結果)
1,089人の急性心不全患者が抽出され、そのうち新規急性心不全発症患者数は743人(68.2%)であった。平均年齢は82.1歳と高齢であり、50.6%が女性であった。全体の51.3%が85歳以上であり、そのうち63.1%が女性で、65.0%が左室駆出率が保たれた心不全患者(HFpEF; heart failure preserved ejection fraction)であった。

淡路島における急性心不全発症率は、男性191.0/10万人年、女性183.8/10万人年であった。男女ともに年齢とともに指数関数的に罹患率は上昇した。2015年の日本の人口構成で年齢調整を行い、2015年日本の急性心不全発症率は男性133.8/10万人年、女性は120.0/10万人年と推計された。

これらを用いて日本全体における急性心不全新規発症数を推計すると、2015年は159,702人の新規急性心不全患者が発症しており、2040年には252,153人まで増加すると予想された。さらに、急性心不全患者のうちHFpEFの割合は、2015年時点では52.0%であるのに対し、2055年には57.3%まで増加することが予想された。

考察)
本研究は超高齢社会における急性心不全患者の実態を詳らかにし、日本の将来における急性心不全の発症数を正確に推計したはじめての研究である。

過去の日本における急性心不全のレジストリー研究では、平均年齢73~78歳程度で、85歳以上の割合は20%程度であった。一方、本研究では平均年齢82歳で、85歳以上の割合は51.3%と高齢者の層が過半数を占めていた。女性やHFpEFの割合も過去の報告と比べて上昇しており、同様の状況が今後の日本において起こることが予想される。

本研究では海外の報告と同様、男女ともに年齢とともに急性心不全罹患率は指数関数的な増加が見られた。性・年齢調節を行い日本における新規急性心不全発症数を推計すると、2015年は約16万人の急性心不全患者が新規発症しており、さらに2040年前後は毎年約25万人の急性心不全患者が心不全発症するという、まさに心不全パンデミックと呼ぶべき事態の到来が予測された。一方、海外と比べて本研究から算出された罹患率はやや低値であった。その理由としては、海外と比べて日本人は高度の肥満など心不全発症リスク因子が少ないことなどが可能性として考えられる。

また、年齢とともに心不全におけるHFpEFの割合は増加することが報告されているが、本研究でも同様の結果が得られ、2055年には57.3%まで増加することが予想された。現時点でHFpEFに対する予防・治療法は確立されておらず、対策を講じることが喫緊の課題である。

結語)
KUNIUMIレジストリーの結果より、将来の日本において爆発的な急性心不全患者の増加は避けがたく、とりわけHFpEF患者が増加することが予想された。急速に高齢化が進行している日本において、来るべき心不全パンデミックへの対策を確立することはまさに喫緊の課題である。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る