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書き出し

アストロサイト活性化と神経変性に関連した ALS 複合バイオマーカーについての研究

小野, 理佐子 東北大学

2023.03.24

概要

(書式18)




位 論 文 要 約
A b s t r a c t )

博士論文題目 Title of dissertation

アストロサイト活性化と神経変性に関連した ALS 複合バイオマーカーについての研究

東北大学大学院医学系研究科
神経・感覚器病態学講座
氏名 Name

医科学専攻

神経内科学分野
小野

理佐子

【背景】ALS(amyotrophic lateral sclerosis; 筋萎縮性側索硬化症)は成人発症の代表的運動ニューロン
疾患で、全身の筋萎縮・筋力低下が進行し、数年で侵襲的人工換気を要するか死亡に至る重篤な神経変性疾
患である。速やかな診断、疾患進行の予測、治療効果の評価に役立つ生化学的な診断・予後予測・代替バイ
オマーカーが不可欠であるが、現在までいずれも ALS に疾患特異的に確立されたものはない。ALS 病態に
おいて、運動ニューロン周囲のアストロサイトやミクログリアなどの非神経細胞も運動ニューロン変性に積
極的に関与しているという「非細胞自律性」の神経変性という概念が一般に受け入れられており、アストロ
サイトの活性化による神経炎症は ALS 病態に大きく関わっていると考えられる。アストロサイト増生を局
所的に制御する主要分子として BMP(bone morphogenetic protein; 骨形成蛋白質)が知られている。私
が所属する研究室では以前、ALS モデルラット脊髄のアストロサイトで BMP-4 が罹病期間に応じて増加し
ていることを見出し、さらに介入実験で BMP-4 の生理的アンタゴニストである noggin の投与によって ALS
の進行抑制をきたすことを確認していた。また少数例の ALS 患者の CSF(cerebrospinal fluid; 脳脊髄液)
BMP-4 の検討では、罹病期間が長い患者程 CSF 中の BMP-4 が高値であり、これらの研究成果から BMP-4
はアストロサイトの活性化による神経炎症を持続的に引き起こし ALS 進行に関与している可能性が示唆さ
れていた。ALS バイオマーカーが希求されている中、生体試料中の神経細胞軸索に豊富な NF-L
(neurofilament light polypeptide; ニューロフィラメント軽鎖)が、ALS に特異的ではないが客観的な神
経細胞傷害の指標として注目されている。ALS 病態では CSF 中のアストロサイト活性化マーカー BMP-4
と神経障害のマーカー NF-L がともに上昇する可能性が十分あると考えられ、孤発性 ALS 患者における両
者の複合バイオマーカーとしての有用性について検証した。

【目的・方法】本研究は単施設、前向き研究である。研究対象として ALS 群 26 例と疾患対照群 45 例を登
録した。診断時の CSF、血清、臨床データを取得し、CSF 中の BMP-4 濃度、CSF と血清中の NF-L 濃度
を測定した。登録 ALS 患者のうち同意した 6 例は、経時的評価のため 10 か月後にも検体採取を行った。
1

(書式18)
BMP-4 濃度を ELISA(enzyme-linked immunosorbent assay; 酵素結合免疫吸着測定法)、NF-L 濃度を
Simoa™ (single molecule array; 単一分子アレイ)で測定し統計学的解析を加えた。

【結果】CSF BMP-4 は、ALS を含む神経変性疾患群で他群より有意に高値であった。ALS 群において CSF
中の BMP-4 と NF-L 値はいずれも単独では診断時点の ALS 進行速度と相関を示さず、経時的に有意な変動
を認めなかった。両者の乗算値で ROC(receiver operating characteristic curve; 受信者動作特性曲線)分
析を行うと AUC(Area Under the Curve; 曲線下面積)値は、それぞれ単独での分析よりも高値となった。
さらにこの乗算値は、診断時点の ALS 進行速度と有意な正の相関を示した。

【考察】CSF 中の BMP-4 と NF-L を組み合わせた場合、ROC 曲線から計算された AUC 値は CSF NF-L
単独での値よりもわずかながら改善しており、両者を組み合わせることで診断バイオマーカーとしての精度
を向上させる可能性が示唆された。CSF 中の BMP-4 と NF-L、両者の乗算値と ALS の進行速度との相関
について、効果量の目安である rs(Spearman’s rank correlation coefficient; Spearman の順位相関係数)
に着目すると、両者の乗算値と ALS 進行速度との有意な相関に寄与しているのは CSF NF-L の上昇が大き
いと考えられた。しかしながら単独での評価と比較すると、両者の乗算値での評価はわずかではあるが rs
が上昇しており、ALS 進行速度との相関も有意となっており、両者の組み合わせで ALS の予後予測バイオ
マーカーとしての効果が向上することが示唆された。ALS を含む神経変性疾患に共通した CSF BMP-4 の
上昇は、中枢神経系のアストロサイト活性化という共通した背景に基づいている可能性が示唆された。一方
で、少数かつ短期間であるが ALS 進行に伴う CSF BMP-4 の上昇を認めなかったことから、代替バイオマ
ーカーとしては提案し難い。ALS では複数の要因の組み合わせにより神経変性が進行していると考えられ
ている。本研究ではアストロサイトの活性化と神経障害という二つの側面に着目し ALS 病態の評価をする
ことで、一つの側面からの評価を改善し得る可能性が示唆された。このような二つの側面からみた生化学的
な複合バイオマーカーは今後の ALS 臨床において補助的役割を果たす可能性がある。

【結論】アストロサイト活性化マーカー BMP-4 と神経細胞障害マーカー NF-L を組み合わせた複合バイ
オマーカーは、それぞれを単独で評価するよりも ALS の診断と予後予測バイオマーカーとしての有用性を
向上させる可能性が示された。 ...

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