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Brane coproducts and their applications

若月, 駿 東京大学 DOI:10.15083/0002004444

2022.06.22

概要

本論文の目的は,ストリング作用素,特にループ余積のブレーントポロジーへの一般化を与えるとともに,それを写像空間のコホモロジーにおけるカップ積のある種の消滅に応用することである.

まずは,論文の背景について述べる.Chas-Sullivan[CS99] は,M が有向連結閉多様体の場合にその自由ループ空間 LM = Map(S1, M ) のホモロジー群上にループ積と呼ばれる積を定義した.ループ積は,「基点付きループ空間の積構造から定義される Pontrjagin 積」と「多様体のホモロジー群における交叉積」を組み合わせたものである.Pontrjagin 積は M がどのような位相空間であっても存在するが,交叉積は M が多様体であること,特に有限次元性を使って定義されるものである.さらに Cohen-Godin[CG04] はループ積を一般化して,ループ余積などの沢山のストリング作用素を構成し,これらが (1 + 1) 次元の位相的量子場の理論 (TQFT) をなすことを証明した.これらの作用素が自由ループ空間のホモロジーに豊富な代数的構造を与えることが期待されていた.ところが玉乃井 [Tam10] により,ループ余積がほとんど自明であることや,ループ余積とループ積の合成が常に自明であることが証明された.つまり,ストリング作用素は豊富な代数的構造ではないことが分かったのである.

そこで,2 つの方向への一般化が行われた.1 つは, F´elix-Thomas[FT09] による,M が Gorenstein 空間の場合への一般化である.ここで空間 M の持つ Gorenstein 性とは,多様体が持っていた有限次元性を拡張する性質であり,M の特異コチェイン代数がある代数的な条件を満たすことで定義される.これは有向連結閉多様体,コンパクト連結リー群の分類空間,さらにはある種の Borel 構成などを含んでおり,空間の広いクラスを与える.F´elix-Thomas の方法によるループ余積の定義の鍵は,ファイブレーションに沿って写像空間へと交叉積を持ち上げることである.ここでは「交叉積」は,ある種の Ext 加群の元であり,対角埋め込み ∆: M → M × M が Gorenstein 空間の意味で有限余次元であることから定まる shriek map である.

もう一方の一般化として,Sullivan-Voronov[CHV06, Section 5] によるブレーン積が挙げられる.彼らは一般の次元の球面からの写像空間 Map(Sk, M ) に対して,そのホモロジーの上にブレーン積と呼ばれる積を定義した.これは,ループ積のときと同様に交叉積と Pontrjagin 積を組み合わせたものとして構成できる.ところが,Map(Sk, M ) 上の代数的構造はループ空間の場合と比べて乏しく,特に「ブレーン余積」と呼ぶべき余積は Map(Sk, M ) 上には構成されていなかった.

本論文の第 1 部では,ループ余積を拡張して,次数 − dim Ωk−1M の線形写像としてブレーン余積
δ : H∗(Map(S#T, M )) → H∗(Map(S, M ) × Map(T, M ))
を構成した.以下,特に断りのない限りホモロジー群の係数は有理数体 Q(または標数 0 の体) とする.ここで,S, T は k 次元多様体,M は有理ホモトピー群 (の全ての次数についての直和) が有限次元な k 連結空間,m¯ は k − 1 重基点つきループ空間 Ωk−1M の Gorenstein 空間としての次元である.なお,特に S = T = Sk の場合には写像空間 Map(Sk, M ) のホモロジー上の余積となっている.

ブレーン余積の構成は,F´elix-Thomas の方法を高次元多様体からの写像空間へと一般化することで行われる.そのために必要な,定値写像としての埋め込み c : M → Map(Sk−1, M ) の shriek map は,この埋め込みの Gorenstein 空間の意味での余次元が有限の値 dim Ωk−1M であることを利用して構成される.さらに,ブレーン (余) 積の重要性を示す結果として,以下の 2 つを得た.

定理 1. 次数を dim M だけずらすことで,Map(Sk, M ) のホモロジーはブレーン積とブレーン余積により Frobenius 代数をなす.すなわち,ブレーン (余) 積は (余) 結合的かつ (余) 可換であり,それらは Frobenius恒等式を満たす.

定理 2. k = 2, M = S2n+1 のとき,次数をずらしてブレーン余積により得られる代数は,次数 −2n − 1 と 2n − 1 の元により生成される外積代数と同型である.さらにブレーン余積が具体的に計算でき,単射となっている.

これにより,ブレーン積とブレーン余積がいずれも非自明であることが分かり,ループ積やループ余積よりも豊富な構造を与えていることが分かった.

第 2 部では,ブレーン余積とブレーン積の合成が非自明な例の構成を与えた.第 1 部のブレーン (余) 積と同様の方法により,以下の形のブレーン (余) 積が得られる.
µU : H∗(Map(U, M )) → H∗(Map(U#, M ))
δU : H∗(Map(U#, M )) → H∗(Map(U, M )).
ここで,U は 2 つの基点を持つ k 次元多様体であり,U# はその 2 つの基点のまわりで U をそれ自身と連結和したものである.特に U = S ⨿ T (で,基点が S と T に 1 つずつ) の場合には,第 1 部で構成したものと一致している.

定理 3. k を偶数,U = Sk とし,M が Eilenberg-MacLane 空間 K(Z, 2n) (n > k/2) の場合を考える.このとき,合成 µU ◦ δU は非自明である.

このような現象はストリング作用素 (k = 1) の場合には見つかっておらず,ブレーン作用素がストリング作用素よりも豊富な構造を与えていることを示す結果であると言える.

最後に第 3 部では,第 1 部のものとは異なる構成として新たに「非対称ブレーン余積」を与え,その応用として写像空間におけるある種のカップ積の消滅を証明した.

M を Poincar´e 双対性を満たす空間,m をその次元,T を k 次元の多様体とする.このとき (M とホモトピー同値な) Map(Dk, M ) の Poincar´e 双対性に着目することで,埋め込み Map(Sk, M ) → Map(Dk, M )の shriek map が定義できる.これを用いることで,非対称ブレーン余積が定義される.

以下では S = T = Sk とし,M は Poincar´e 双対性に加えて有理ホモトピー群が有限次元性であると仮定する.この下でブレーン余積と非対称ブレーン余積それぞれの双対を考える.これらは Map(Sk, M ) のコホモロジー上の積となっている.

このとき,非対称ブレーン余積の具体的な計算式を与え,それにより非対称な自明性を満たすことを示した.さらに,ブレーン余積が非対称ブレーン余積の Euler 標数倍に等しいことを証明し,これらの事実とブレーン余積の可換性 (定理 1) を組み合わせることにより,以下の定理を得た.

定理 4. k を奇数とする.このとき,任意の α ∈ H>0(Map(Sk, M )) に対して,M の向き付け類の引き戻しと Euler 標数を α にかけて得られるコホモロジー類は 0 である.

なお,この定理は k = 1 であれば正標数においても成立する.また,k = 1 かつ M が多様体の場合が Menichi [Men13] の定理であり,定理 4 はその一般化となっている.

参考文献

[CG04] Ralph L. Cohen and V´eronique Godin. A polarized view of string topology. In Topology, geometry and quantum field theory, volume 308 of London Math. Soc. Lecture Note Ser., pages 127–154. Cambridge Univ. Press, Cambridge, 2004.

[CHV06] Ralph L. Cohen, Kathryn Hess, and Alexander A. Voronov. String topology and cyclic homology. Advanced Courses in Mathematics. CRM Barcelona. Birkh¨auser Verlag, Basel, 2006. Lectures from the Summer School held in Almer´ıa, September 16–20, 2003.

[CS99] Moira Chas and Dennis Sullivan. String topology, 1999, arXiv:math/9911159.

[FT09] Yves F´elix and Jean-Claude Thomas. String topology on Gorenstein spaces. Math. Ann., 345(2):417–452, 2009.

[Men13] Luc Menichi. String topology, Euler class and TNCZ free loop fibrations, 2013, arXiv:1308.6684. [Tam10] Hirotaka Tamanoi. Loop coproducts in string topology and triviality of higher genus TQFT operations. J. Pure Appl. Algebra, 214(5):605–615, 2010.

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