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哺乳類ATG9小胞のリクルート機構の解明

濱, 祐太郎 東京大学 DOI:10.15083/0002006930

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 濱 祐太郎
本研究は、オートファジーに必須な機能単位である ATG9 小胞のリクルート機構は、哺
乳類においては未解明であった。これを明らかにするため、出芽酵母における選択的オー
トファジーと非選択的オートファジーのそれぞれに関連した 2 つのリクルート機構に着想
を得て、哺乳類において CRISPR-Cas9 法を用いた遺伝学を軸とした解析を行ったもので
ある。これにより、下記の結果を得ている。
1. 野生型細胞において、ATG9A はオートファジーの選択的分解基質であるユビキチン陽
性高次構造体と共局在した。この共局在は、オートファジーに必須なタンパク質
FIP200 を欠損した細胞でより顕著に観察された。ユビキチン陽性高次構造体には、ポ
リユビキチンを認識する選択的オートファジーアダプターSQSTM1、NBR1、
NDP52、OPTN および TAX1BP1 が含まれる。これら 5 種類を全て欠損した PentaKO 細胞、およびこれを親株として CRISPR-Cas9 法で FIP200 を欠損させた PentaKO FIP200-KO 細胞では、ATG9A とユビキチン陽性高次構造体は共局在しなかっ
た。この結果から、FIP200 非依存的かつ選択的オートファジーアダプター依存的な、
選択的オートファジーに関連した ATG9 小胞のリクルート経路の存在が示唆された。
2. Penta-KO FIP200-KO 細胞に 5 種類のアダプターを 1 種類ずつ muGFP タグ付きで発
現させると、いずれのアダプターも高次構造体と推察される輝点を形成した。そのう
ち、NBR1、OPTN および TAX1BP1 の輝点には ATG9A がよく共局在した。5 種類の
アダプターの中でも、NBR1、OPTN および TAX1BP1 の 3 種類が ATG9 小胞リクル
ートに関与することが示唆された。
3. TAX1BP1 は SKICH、CC1、2、3 および UBZ の 5 つのドメインからなる。ドメイン
欠損変異体を muGFP タグ付きで Penta-KO FIP200-KO 細胞に発現させると、いず
れの変異体も輝点を形成した。それらのうち、CC1 および UBZ の欠損変異体の輝点
には ATG9A が共局在しなかった。しかし、UBZ はポリユビキチン相互作用ドメイン
であることから、UBZ を欠損した変異体は高次構造体の凝集性が損なわれていると考
えられた。そこで、自己多量体を形成する SQSTM1 PB1 ドメインを各変異体に付加
することで、TAX1BP1 の輝点の凝集性を増強した。この条件では、UBZ 欠損変異体
も ATG9A と共局在し、CC1 欠損変異体のみが ATG9A と共局在しなかった。この結
果から、TAX1BP1 の輝点への ATG9 小胞リクルートには、TAX1BP1 の輝点の凝集性
が関与し、CC1 領域が必要であることが示唆された。

4. TAX1BP1 CC1 の構造を予測すると、折れ曲がりを含まない単一のヘリックスである
ことが示唆され、その表面には荷電残基からなる正と負の電荷のクラスターが交互に
存在していると予測された。表面電荷を構成する荷電残基のうち、脊椎動物によく保
存されている残基に、電荷を逆にする変異を導入した TAX1BP1 の点変異体は、いず
れも輝点を形成するが、ATG9A と共局在しなかった。以上の結果から、TAX1BP1
CC1 の表面電荷が ATG9 小胞リクルートに重要であることが示唆された。
5. ATG9 小胞リクルートには TAX1BP1 CC1 と ATG9 小胞上のタンパク質との相互作用
が想定されるため、LC-MS/MS を用いて、TAX1BP1 の野生型と K248E 変異体の結
合因子解析を行った。その結果、野生型特異的な相互作用因子として、ATG9 小胞上
に局在するタンパク質として報告のある膜タンパク質 SCAMP3 を同定した。mRFP1
タグを付加した SCAMP3 は FIP200-KO 細胞において ATG9A と共にユビキチン陽性
高次構造体と共局在した。
6. FIP200-KO 細胞を親株として SCAMP3 を欠損させた FIP200-KO SCAMP3-KO 細胞
を作製し、ATG9A とユビキチン陽性構造体の共局在率を FIP200-KO 細胞と比べる
と、共局在率は部分的だが有意に減少していた。この結果より、ATG9 小胞上に局在
する SCAMP3 が TAX1BP1 と相互作用することで、選択的オートファジーに関連して
ATG9 小胞がリクルートされていると考えられた。
7. 非選択的オートファジーに関連した ATG9 小胞リクルートについて、出芽酵母では
Atg13 HORMA ドメインが重要であり、哺乳類にも ATG13 HORMA ドメインが存在
する。Penta-KO 細胞を親株として ATG13 を欠損させた Penta-KO ATG13-KO 細胞
を作製し、ATG13 を発現させて ULK1,2 阻害剤 MRT68921 で処理すると、野生型
ATG13 は輝点を形成し、ここに ATG9A がよく共局在する。HORMA ドメインを欠損
した変異体は、ATG13 は輝点を形成するが、ここには ATG9A は共局在しなかった。
8. Penta-KO ATG13-KO 細胞に ATG13 HORMA ドメインを FLAG タグ付きで発現させ
て免疫沈降すると、内在性の ATG9A が共沈降した。哺乳類 ATG13 は ATG101 と相
互作用するが、ATG101 について同様の免疫沈降を行っても、ATG9A は共沈降しなか
った。以上の結果から、哺乳類においても ATG13 HORMA ドメインが非選択的オー
トファジーにおける ATG9 小胞リクルートに関与していると考えられた。
以上、本論文は哺乳類オートファジーにおいて、ATG9 小胞が選択的オートファジーと
非選択的オートファジーに関連する 2 つの経路でリクルートされること、およびその分子
機構の一端明らかにした。これは哺乳類における選択的オートファジーの分子機構および
オートファゴソームの形成機構を理解する上で重要な貢献である。
よって本論文は博士( 医学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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