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加熱死菌Lactobacillus plantarum KB131の創傷治癒促進機構とCARD9シグナルの関与

伊師, 森葉 東北大学

2023.03.24

概要

博⼠論⽂

加熱死菌 Lactobacillus plantarum KB131 の
創傷治癒促進機構と CARD9 シグナルの関与

東北⼤学⼤学院医学系研究科医科学専攻
外科病態学講座 形成外科学分野
伊師 森葉

⽬次

Ⅰ. 要約

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

Ⅱ. 研究背景

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

Ⅲ. 研究⽬的

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11

Ⅳ. 研究⽅法

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

Ⅴ. 研究結果

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

Ⅵ. 考察

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

Ⅶ. 結論

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

Ⅷ. 謝辞

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 36

Ⅸ. ⽂献

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

Ⅹ. 図の説明

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

Ⅺ. 図

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

Ⅻ. 表

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75

2

Ⅰ.要約

【⽬的】
⽪膚創傷治癒過程は出⾎凝固期、炎症期、増殖期、再構築期から構成される。難治性
創傷では炎症期が遷延し、増殖期への移⾏が進まず治癒が停滞すると考えられている。
創傷治癒過程において、炎症型の M1 マクロファージから抗炎症型の M2 マクロファ
ージへの分化が増殖期への移⾏に重要と⾔われている。我々はこれまで、C 型レクチ
ン受容体の下流のアダプター分⼦である CARD9 が創傷治癒において重要な働きを
することを明らかにしてきた。本研究では、⽣菌乳酸菌と⽐較して全⾝性感染症や過
剰な炎症反応などのリスクが低い加熱死菌 Lactobacillus plantarum KB131 が創傷治
癒過程に及ぼす影響および CARD9 の関与について解析を⾏った。
【⽅法】
野⽣型 (WT) マウス (C57/BL6J) および CARD9 遺伝⼦⽋損 (KO) マウスの背部
⽪膚に⽣検パンチにて 6 mm の⽪膚全層⽋損創を4箇所作成した。創作成直後に創部
に KB131 を投与後、各タイムポイントで創を回収し、病理学的解析、コラーゲン合
成の解析、サイトカイン、ケモカインおよび増殖因⼦の測定を⾏った。対照群には蒸
留⽔を投与した。また、創部から⽩⾎球を採取し、両群間で好中球、マクロファージ、
リンパ球の集積とマクロファージのサブタイプに関して⽐較検討した。創閉鎖率に関
しては TLRs 下流のアダプター分⼦である MyD88-KO マウスでの解析も⾏った。ま
た、CARD9 上流の C 型レクチン受容体である Dectin-1、Dectin-2、Mincle を発現

3

するレポーター細胞を KB131 で刺激し、各受容体の関与を検討した。
【結果】
対照群と⽐較し、KB131 投与により創閉鎖率が有意に増加し、創傷治癒は促進した。
KB131 投与により再上⽪化率および⾁芽組織⾯積の増加がみられた。KB131 投与群
では CD31 陽性⾎管数およびαSMA 陽性筋線維芽細胞の⾯積が有意に増加した。創
部コラーゲン合成は対照群と⽐較して KB131 投与群で差はみられなかった。創作成
後早期には KB131 投与による TNF-α、IL-6 の増加を認め、後期には IL-4、IL-5、IL10 の増加を認めた。CXCL1、CXCL2、CCL3 および CCL4 は KB131 投与群で創作
成後早期から産⽣増加を認め、CCL2 は早期のみ、CCL5 は初期から徐々に有意な増
加を認めた。増殖因⼦である EGF、VEGF、bFGF、TGF-β1 産⽣も KB131 投与によ
り有意に増加した。創部の総⽩⾎球数は KB131 投与で有意に増加し、初期での好中
球の増加と増殖期でのマクロファージの増加、創作成後 10 ⽇での M2 マクロファー
ジ/M1 マクロファージ⽐の有意な増加を認めた。WT マウスと MyD88-KO マウスの⽐
較実験では、WT マウスでみられた KB131 投与による創閉鎖の促進は MyD88-KO マ
ウスでも同様に認められた。⼀⽅、
WT マウスと CARD9-KO マウスの⽐較実験では、
WT マウスでみられた KB131 投与による創作成後 7 ⽇での創閉鎖の増加が、CARD9KO マウスでは認められなかった。再上⽪化率、⾁芽⾯積、CD31 陽性⾎管数および
α-SMA 陽性細胞⾯積も創閉鎖率と同様に、CARD9-KO マウスでは KB131 投与によ
る増加を認めなかった。また、Dectin-1、Dectin-2、Mincle を発現した NFAT-GFP レ

4

ポーター細胞への KB131 刺激では、いずれの細胞でもレポーター活性の誘導は認め
られなかった。
【結論】
本研究により、加熱死菌乳酸菌 KB131 投与により創傷治癒過程が促進されること、
創部における M2 マクロファージへの分化が誘導されること、治癒促進には MyD88
よりも CARD9 が重要な役割を担うことが明らかとなった。

5

Ⅱ. 研究背景

我々形成外科医が扱う疾患のほとんどすべてが⽪膚創傷治癒に関わるものであり、
外傷や熱傷、⼿術創などの急性創傷から褥瘡や糖尿病性⾜潰瘍、虚⾎性⾜潰瘍などの
難治性創傷まで多岐にわたる。難治性創傷は、急激な⾼齢化が進む本邦において⼤幅
な増加も予想されており、患者のみならず介助者の負担、さらに感染などの悪化に伴
う⼊院および処置の⻑期化、⼿術の必要性、それに伴う医療経済的負担など様々な問
題を誘起する 1)。難治性創傷に対する治療として、細菌増殖抑制効果をもつ銀含有創
傷被覆材や抗菌薬含有軟膏、創傷治癒促進効果をもつヒト塩基性線維芽細胞増殖因⼦
(フィブラストスプレー®) やプロスタグランジン製剤が臨床現場で使⽤されている。
それぞれに⻑所があるが、細菌増殖抑制効果をもつ製剤は創傷治癒促進効果が得られ
にくい⼀⽅で、創傷治癒促進効果をもつ製剤は細菌増殖抑制効果が無いため、感染創
への使⽤では治癒促進効果が得られにくい 2)。また、⼊院管理下においては、前述の
治療に加え、局所陰圧閉鎖療法 3)も治療の選択肢として活⽤できるが、在宅では同様
のデバイスを⽤いた専⾨的な管理が難しいのが現状である。創傷治癒を誘導する新た
な治療薬を開発することで褥瘡の悪化や糖尿病性⾜潰瘍の切断を回避できる可能性
が広がり、患者のみならず医療職者、さらには医療経済への負担軽減も期待される。
創傷は通常の治癒過程をたどり、2 週間以内に治癒する急性創傷と治癒に2週間以
上の期間を要する難治性創傷に分類される。急性創傷の治癒過程は様々な細胞の相互
作⽤により成⽴し、出⾎凝固期、炎症期、増殖期、再構築期を経て進⾏し、治癒に⾄

6

る。出⾎凝固期には⾎⼩板による創の⽌⾎反応が起こり、炎症早期には好中球が遊⾛
し、さらに炎症性サイトカインやケモカインが分泌される 4)。炎症後期にはマクロフ
ァージが創を清浄化し、増殖期へと移⾏していく 5)。増殖期にはマクロファージによ
る増殖因⼦の分泌や線維芽細胞、⾎管内⽪細胞が遊⾛し、コラーゲン合成や⾎管新⽣、
⾁芽形成、上⽪化が誘導される。再構築期では瘢痕の強化、コラーゲンの成熟が進み
治癒に⾄る 6)。⼀⽅、褥瘡や糖尿病性⾜潰瘍のような難治性創傷では⾎流の低下や壊
死組織の残存、感染などから炎症期が遷延し、増殖期への移⾏が出来ず治癒が難治化
すると⾔われている。創部の炎症反応は、創の清浄化に必要なステップであるが、そ
の後スムーズに増殖期へ移⾏することが創傷治癒を早めるカギである 7)。
創傷治癒には多くの細胞が関与するが、中でもマクロファージが重要な役割を担う
5)

。マクロファージは受傷後の宿主防御のみならず、コラーゲン合成、⾎管新⽣に極

めて重要な役割を担うため炎症期から増殖期への移⾏を促進する⽩⾎球として注⽬
されている。マクロファージは⼤きく2つのタイプに分類され、それぞれ炎症型の M1
マクロファージ、抗炎症型の M2 マクロファージと呼ばれ、周囲のサイトカインから
の刺激によって分化する 8)。M1 マクロファージは、IFN (interferon; インターフェロ
ン) -γや TNF (tumor necrosis factor; 腫瘍壊死因⼦) -α刺激によって誘導され、受
傷後早期に創部に集積し、病原微⽣物の貪⾷や TNF-αなど炎症性サイトカインを産
⽣する。⼀⽅、抗炎症性の M2 マクロファージは IL (interleukin; インターロイキン)
-4、IL-10、IL-13 や TGF (transforming growth factor; トランスフォーミング増殖因

7

⼦) -βなどによって誘導される 9‒11)。M2 マクロファージは IL-10 や TGF-β、VEGF
(vascular endothelial growth factor; ⾎管内⽪増殖因⼦) を産⽣し、炎症を沈静化し、
コラーゲン合成、⾎管新⽣を促し増殖期への移⾏を加速させる 12)。

Lactobacillus plantarum は乳酸菌の⼀種であり、その⽣菌は微⽣物感染に対する免
疫応答の調節や宿主の保護に有益な効果を持つことがよく知られている 13,14)。緑膿菌
を感染させたマウス背部熱傷創に L. plantarum の⽣菌を投与することによって⽣存
率が改善したという報告 14)や、炎症性サイトカインの調節を介して糖尿病ラットの創
傷治癒遅延を改善するという報告 15)もある。しかし、⽣菌乳酸菌を⽤いることによる
全⾝性の感染症や過剰な炎症反応など、いくつかのリスクに対する安全性の懸念も指
摘されている 16,17)。このような背景から、近年、加熱殺菌した乳酸菌が創傷治癒に及
ぼす影響が注⽬されている 18‒20)。L.plantarum GMNL 6 や L.pracasei GMNL 653 19)、

Lactococcus chungangenesis CAU1447 20)、Enterococcus faecalis18)の加熱死菌が⽪膚
創傷治癒を促進すると報告されている。しかし、加熱殺菌した乳酸菌が創部への M1、
M2 マクロファージ分化に与える影響やどのようなシグナル伝達を介して創傷治癒を
誘導するかは明らかではない。
加熱殺菌した乳酸菌には、細胞壁成分

21)

や細胞外多糖類

22)

な ど の PAMPs

(pathogen-associated molecular patterns; 病原体関連分⼦パターン) が含まれており、
それらが免疫反応を誘導することが報告されている。PAMPs は、マクロファージな
どの抗原提⽰細胞に発現する TLRs (Toll like receptors; Toll 様受容体) や CLRs (C

8

type lectin receptors ; C 型レクチン受容体)などの PRR (Pattern recognition receptor;
パターン認識受容体) によって認識される。PAMPs が TLRs や CLRs に認識される
とそれぞれのアダプター分⼦である MyD88 (Myeloid differentiation factor 88) 、
CARD9 (Caspase recruitment domain-containing protein) を介して、NF-κB (nuclear
factor-kappa B) などの転写因⼦を活性化させ、サイトカインやケモカインなどの産
⽣を誘導する 23‒25)。創傷治癒過程における CLRs の役割として、私の所属する研究室
では、CLRs の⼀種である Dectin (Dendritic cell-associated C-type lectin) -1 と Dectin2

26,27)

および CLRs 下流のアダプター分⼦である CARD9 が創傷治癒において重要な

働きをすることを明らかにしてきた 28)。
本研究では過剰な炎症回避や投与量制御の観点から加熱死菌に注⽬した。加熱死菌
の中で乳酸菌を選定した理由として、緑膿菌などグラム陰性菌の細胞壁に含まれるエ
ンドトキシンを含まず、また⻩⾊ブドウ球菌等が産⽣するエンテロトキシンが残存す
るリスクが低かったためである。乳酸菌の中でも L. plantarum を選択した理由は、L.

plantarum ⽣菌の熱創部での報告 14)があり、各種乳酸菌加熱死菌の創傷治癒での報告
18‒20)

があることに加えて、炎症性腸疾患などにおいて乳酸菌のヒトに対する安全性に

ついても報告 29)されていることから、先⾏研究と菌株は異なるが今回は L. plantarum
の加熱死菌を⽤いた。本研究で⽤いた加熱死菌 L. plantarum KB131 (以下 KB131) は、
乳酸菌の提供を受けた有限会社バイオ研での事前検討で他の乳酸菌と⽐較して培養
効率が良く、サイトカイン産⽣能が⾼いという特徴をもつため、KB131 を⽤いた。

9

KB131 の局所投与が創傷治癒過程に及ぼす影響について、M1, M2 マクロファージの
分化と MyD88 および CARD9 の関与について解析を⾏った。

10

Ⅲ. 研究⽬的

本研究は、加熱死菌 KB131 の⽪膚創傷治癒過程に与える影響とその機序解明を⽬
的とする。そのために、マウスの背部⽪膚全層⽋損創モデルを⽤いて以下の点につい
て明らかにする。
1) KB131 投与による創傷治癒 (創閉鎖率、再上⽪化率、⾁芽⾯積、筋線維芽細胞数、
新⽣⾎管数、⽩⾎球分画) に与える影響の解明
2) KB131 投与における創部 M1, M2 マクロファージ分化に対する影響の解明
3) KB131 投与下の創傷治癒過程に MyD88 ⽋損、CARD9 ⽋損が与える影響の解明

11

Ⅳ. 研究⽅法
1. 倫理的配慮

本研究のすべての実験は, 「国⽴⼤学法⼈東北⼤学動物実験に関する規定」「国⽴⼤学
法⼈東北⼤学遺伝⼦組換え実験安全管理規程」 に準じ, 東北⼤学環境安全委員会動物
実験専⾨委員会及び遺伝⼦組換え実験安全専⾨委員会の承認を得た上で実施した
(承認番号:2018 医動-239, 2021 医動-096, 2019 医組換-109) 。

2. 動物と各種実験⼿法、測定⽅法
1)

動物

実験には、野⽣型マウス (WT マウス) として 7-9 週齢の C57BL/6J マウス (CLEA
Japan, Tokyo, Japan) 、CARD9 遺伝⼦⽋損マウス (CARD9-KO マウス: ⿅児島⼤学
⼤学院医⻭学総合研究科感染防御学講座免疫学分野 原博満教授より供与) 、MyD88
遺伝⼦⽋損マウス (MyD88-KO マウス: Oriental Bioservice inc, Kyoto, Japan) を⽤
いて⾏った。マウスは東北⼤学⼤学院医学系研究科付属動物実験施設において SPF 環
境下で飼育されたマウスを使⽤し,餌と⽔は常時摂取できる環境とした。

2)

創作成と組織採取

マウスの⿇酔⽅法は、導⼊時に 40 mg/kg のペントバルビタール (Kyoritsu seiyaku
corporation, Tokyo, Japan) を腹腔内投与し、維持⿇酔にイソフルラン (Mylan Inc.,

12

South point, PA, USA) を吸⼊投与した。背側の体⽑を除⽑して、⽪膚を完全に露出
させ、70 %エタノールで消毒後、⽪膚⽣検⽤ 6 mm パンチ (Biopsy Punch, Kai
Industries Co., Ltd., Gifu, Japan) を⽤いて、マウス1匹につき 4 箇所の⽪膚全層⽋損
層を作成した。創部はポリウレタンフィルム (Tegaderm Transparent Dressing, 3M
Health Care, St. Paul, MN, USA) と弾性粘着包帯 (Hi-latex, Iwatsuki ,Tokyo, Japan )
で閉鎖環境を維持した。創作成⽇を 0 ⽇⽬とし、創作成から 6 時間、12 時間、24 時
間、 3 ⽇後、5 ⽇後、7 ⽇後、10 ⽇後にマウスを犠牲死させたのち創部を含む⽪膚組
織を⼿術⽤メスおよび剪⼑を⽤いて摘出した。摘出するタイムポイントは、私の所属
する研究室の先⾏研究 18,26,27,30)を参考に決定した。

3)加熱死菌 L. plantarum KB131 の調整

L. plantarum KB131 (International Patent Organism Depositary, Japan, NITE BP03375) は、有限会社バイオ研 (Bio-Lab Co., Ltd, Saitama, Japan) より分与された
ものを使⽤した。KB131 を MRS broth (Difco, Detroit, MI, USA) 中で 37℃で⼀晩
培養し、蒸留⽔で洗浄した後、10,000 ×g で 3 分間遠⼼分離を⾏った。蒸留⽔中の菌
懸濁液をオートクレーブ (HV-25ⅡLB; Hirayama Manufacturing Corp., Saitama,
Japan) を⽤いて 105 ℃,30 分間加熱した。創傷は上記の⽅法に従って作成した。創
傷作成直後、KB131 (1.25 μg、12.5 μg、125μg) または対照群として蒸留⽔ 5 μL
懸濁液をマウスの創部に投与した。

13

4)創閉鎖率測定

創作成直後および各タイムポイントで、デジタルカメラ (G800, RICOH, Tokyo,
Japan) を⽤いて創を撮影した。撮影した画像は、画像解析ソフト Axio Vision (Carl
Zeiss Micro Imaging , Japan, Tokyo, Japan) を使⽤して創の辺縁をトレースし、創⾯
積を測定し、創閉鎖率を以下の式で算出した。
創閉鎖率= (1-各タイムポイントの創⾯積÷創作成時の創⾯積) ×100 (%)
全ての画像は解析時にファイル名を変更し、画像をランダムに配置して各群を盲検化
し、解析後に元のファイル名と照合した。

5)創部ヒドロキシプロリン (HP) 濃度測定

コラーゲン特異的アミノ酸であるヒドロキシプロリン量を測定することで、創部に
含有されるコラーゲン量を推定した。創を摘出後、2 mL の 6 N 塩酸に溶解し、120 ℃
で 21 時間インキュベートした。回収後、サンプルを⽔酸化ナトリウムで中和し、1 mL
の 0. 05 M クロラミン T (Nacalai Tesque, Kyoto, Japan) を加えて室温で 20 分間静置
後、3. 15 M 過塩素酸 (Nacalai Tesque) を 1 mL 加え攪拌し、5 分間室温で静置した。
その後、20 % p-ジメチルアミノベンズアルデヒド (Nacalai Tesque) を 1 mL 加え、
20 分間 60 ℃でインキュベートし、Smart SpecTM3000 (Bio-Rad, Hercules, CA, USA)
を⽤い 560 nm の吸光を測定した。スタンダードには、
L-ヒドロキシプロリン (Nacalai

14

Tesque) を 100 μg/mL に調整し、最低濃度 0.8 μg/mL まで 2 倍段階希釈したもの
を⽤いた。
6)病理、免疫組織学的解析

創部⽪膚組織は 4 %パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液で固定後、創部正中で頭尾
側⽅向に半切した後にパラフィン包埋した。半切した断⾯から薄切した切⽚を作成し、
各染⾊を⾏った。HE (Hematoxylin-Eosin; ヘマトキシリンエオジン) 染⾊像を⽤い
て創端から進展した表⽪細胞の先端までの距離を測定し、再上⽪化率を評価した。さ
らに、グラム染⾊を⽤いて創部に存在する KB131 を観察した。
免疫組織化学染⾊には、正常⾎清ヒストファインブロッキング試薬 10%ウサギ正
常⾎清 (Nichirei Bioscience, Tokyo, Japan) を反応させた後、抗 CD31 抗体 (1:600,
R&D Systems, Minneapolis, MN, USA) 、抗 α-SMA (α-smooth muscle actin) 抗体
(1:300, Dako, Santa Clara, CA, USA) を反応させた。対照の⼀次抗体としてコントロ
ール IgG を⽤いた。抗 CD31 陽性細胞は⾁芽組織内の染⾊陽性細胞数をカウントし、
単位⾯積当たりの陽性細胞数を算出した。抗 α-SMA 陽性細胞は⾁芽組織辺縁に集積
した陽性細胞集団の⾯積の総和を算出した 31)。

7)mRNA 抽出と RT-PCR (定量リアルタイム PCR)

ISOGEN (Nippon Gene Co.Ltd., Tokyo, Japan) を⽤いて、摘出した創部組織から
total RNA を抽出した。抽出した RNA は Prime Script® first-standard cDNA synthesis

15

kit (Takara Bio Inc., Otsu, Japan) を ⽤ い て 逆 転 写 反 応 を ⾏ い 、 complementary
deoxyribonucleic acid (cDNA) を合成した。得られた cDNA は遺伝⼦特異的プライマ
ーと FastStart essential DNA green master mix (Roche Applied Science, Branford, CT,
USA) を ⽤ い て 、 StepOnePlusTM Real-Time PCR System (Thermo Fisher
Scientific,Inc., Waltham, USA) にて解析した。使⽤したプライマー配列を表 1 に⽰す。

8)サイトカイン、ケモカイン濃度の測定

創部組織を摘出後に⽣理⾷塩⽔を添加してホモジネートとした後、遠⼼分離を⾏い、
回収した上清中のサイトカインおよびケモカインの濃度を ELISA (Enzyme-Linked
Immuno Sorbent Assay) で測定した。TNF-α、IL-17A、IL-6、IL-4、IL-10、IFN-γ
濃度は Biolegend の ELISA キット (San Diego, CA, USA) を⽤いて測定した。CXCL1、
CXCL2、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、bFGF (basic fibroblast growth factor; 塩基
性線維芽細胞増殖因⼦) 、TGF-β1、VEGF、EGF (Epidermal Growth Factor; 上⽪成
⻑因⼦) 濃度は R&D systems の ELISA キット (Minneapolis, MN, USA) を⽤いて測
定した。 ...

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