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大学・研究所にある論文を検索できる 「地域在住高齢者の社会関係が手段的日常生活動作(IADL)及び生命予後に与える効果の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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地域在住高齢者の社会関係が手段的日常生活動作(IADL)及び生命予後に与える効果の検討

渡邊, 久実 筑波大学

2020.07.27

概要

目的:
 本研究は、1)地域在住高齢者の社会関係が手段的日常生活動作(IADL)及び生命予後に与える効果、及び2)年齢層別における社会関係の効果、の2点を明らかにすることを目的とした。

対象と方法:
 本研究は、日本の中部地方に位置する大都市近郊自治体で全住民を対象に行われているコホート調査のデータを用いる。対象は、中部地方にある人口約5, 000名の農村部の自治体Aに在住する65歳以上全数(1, 209名)とした。本研究の評価項目は、年齢、性別、IADL、社会関係、基礎疾患、就労状況、主観的経済状況であった。本研究は、健康寿命に関連するアウトカムとしてIADL、及び集団の健康状況を反映する指標として最も重要な指標である死亡をアウトカムに、下記研究1及び研究2を行った。
研究1: 地域在住高齢者の社会関係と手段的日常生活動作(IADL)との関連
研究2: 地域在住高齢者の社会関係と生命予後との関連

 本研究のアウトカムであるIADLの評価は、日本の高齢者の高次生活機能の測定のために開発されたTMIG Index of CompetenceのIADL領域を用いた。評価は厚生労働省の基準(厚生労働省, 2010)に準じ、「できるし、している」「できるが、していない」「できない」の3件法で、「できるし、している」または「できるが、していない」には1点、「できない」には0点を付与し、5項目の各得点を加算して5点満点で評価した。本研究のアウトカムは、基準年でIADLが5点満点(自立)である者のうち、フォローアップ時点(2017年)で5点を維持している者を「IADL維持」、4点以下の者を「IADL低下」と定義した。
 社会関係の評価は、安梅らが開発した社会関連性指標を用いた。評価方法は、「めったにない」を0点、それ以外の「ある」「まあまあある」「たまに」などを1点とし、項目ごとの得点を加算して18点満点で評価した。
 解析は、基準年の年齢、性別、社会関係、基礎疾患の有無、就労状況、主観的経済状況、生活習慣(喫煙の有無、飲酒の頻度、運動習慣の有無)、IADL(研究2のみ)を独立変数、6年後のIADL低下の有無及び総死亡有無を従属変数として単変量解析を行った。その後、年齢、性別に加え、単変量解析で有意な関連を認めた変数を強制投入した多変量解析(研究1: 多重ロジスティック回帰分析、研究2: Cox比例ハザード分析)を行った。また、年齢の違いによる影響を考え、年齢層別(65-74歳、75歳以上)での解析を併せて行った。なお、単変量解析で有意であった変数の内、変数間の相関係数が0.4以上であった場合については、多重共線性を考慮しいずれか一つの変数を投入することとした。さらに、本研究では欠損値が多く、多変量解析に用いた変数について多重代入法により欠損値を補完した解析を実施した。有意水準は5%とした。

結果:
<研究1>
 本研究で基準年に回答を得た65歳以上1, 083名の内、基準年にIADL非自立者194名を除き、IADLに関する項目に欠損がない708名を6年間追跡した。そのうち568名が6年間追跡可能であり、IADLに関する項目に欠損がない501名を分析対象とした(図1)。分析対象の内、6年後にIADLが低下していた者は103名(20.6%)であった。多重ロジスティック回帰分析を行った結果、基準年の年齢(OR=1.18, 95% CI: 1.12-2.26)、社会関係(OR=0.79, 95% CI: 0.66-0.93)が6年後のIADL低下と有意に関連していた。年齢層別で解析した結果、65-74歳では年齢(OR=1.21, 95% CI: 1.02-1.42)、筋骨格系疾患の罹患(OR=5.09, 95% CI: 1.37-19.00)が、75歳以上では年齢(OR=1.31, 95% CI: 1.13-1.52)、社会関係(OR=0.58, 95% CI: 0.42-0.80)がIADL低下と有意に関連していた。

<研究2>
 本研究は、基準年に回答を得た65歳以上1, 083名全数を約6年間追跡した。6年間の追跡期間中に死亡した者は、249名(23.0%)であった。
 Cox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果、基準年の年齢(HR=1.11, 95% CI: 1.08-1.14)、性別(HR=2.98, 95% CI: 1.88-4.74)、運動習慣(HR=0.60, 95% CI: 0.38-0.95)、社会関係(HR=0.90, 95% CI: 0.84-0.96)、パーキンソン病(HR=5.43, 95% CI: 1.30-22.70)が総死亡と関連していた。年齢層別で解析した結果、65-74歳では、性別(HR=3.29, 95% CI: 1.22-8.87)、がん(HR=5.78, 95% CI: 1.63-20.47)が、75歳以上では年齢(HR=1.11, 95% CI: 1.06-1.15)、性別(HR=2.73, 95% CI: 1.68-4.43)、社会関係(HR=0.87, 95% CI: 0.82-0.93)、心臓病(HR=1.80, 95% CI: 1.03-3.14)が総死亡と関連していた。

考察:
 研究1、2の結果、社会関係と、6年後のIADL低下及び6年間の総死亡が関連していた。先行研究では社会関係が増えることで日常の身体活動量が増加し、身体機能の維持につながる可能性や、社会関係の乏しさが認知機能低下と関連することが報告されている。
 これらの知見から、社会関係を持つことで身体機能や認知機能の維持につながるためIADLの維持や死亡率の抑制につながる可能性が示唆された。
 さらに年齢層別で解析するとその関連は研究1、研究2ともに75歳以上のみで有意な関連を認め65-74歳では罹患の有無が関連しており、75歳未満でのIADL低下や死亡リスクには社会関係などの社会的側面よりも罹患など身体状態の影響が強く、社会関係の影響は75歳以降で強くなる可能性が示唆された。人は75歳~80歳から加齢による運動機能をはじめとする残存機能の低下が加速していくことからこの時期に社会関係を維持していることで認知機能や身体機能の維持につながりIADL低下や死亡リスクを減少させたことが考えられる。

結論:
 本研究では、社会関係の乏しさとIADL低下及び総死亡リスクとの関連が明らかになり、さらに年齢層別にするとその関連は75歳以上のみでみられた。本研究結果より、介護予防方策の検討に置いて社会関係を促進することの重要性を支持するとともに、年齢層別による介入方策の検討の必要性が示唆された。

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