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有機触媒を用いた(−)-キニーネの5ポット合成および2つの有機触媒を用いたステレオダイバージェントな反応の開発

照沼, 敬洋 東北大学

2023.03.24

概要

博士論文

有機触媒を用いた(−)-キニーネの 5 ポット合成および
2 つの有機触媒を用いた
ステレオダイバージェントな反応の開発

照沼

敬洋

令和 4 年

目次
論文一覧
参考論文一覧
略語一覧

第1部

序論

第2部

有機触媒を用いた(−)-キニーネの 5 ポット合成

第1章

序論

第 1 節 アルカロイド
第 2 節 アルカロイドの医薬品としての利用
第 3 節 キニーネの全合成
第 4 節 本研究のテーマコンセプトと目的

第2章

モデル化合物の効率的合成

第 1 節 不斉マイケル/アザヘンリー/ヘミアミナール化/脱離反応反応の検討
第 2 節 モデル化合物の合成
第 3 節 ポットエコノミカルなモデル化合物の合成

第3章

(−)-キニーネの 5 ポット合成

第 1 節 イミン前駆体の合成
第 2 節 不斉マイケル/アザヘンリー/ヘミアミナール化/脱離反応反応の検討
第 3 節 (−)-キニーネの全合成
第 4 節 ポットエコノミカルな(−)-キニーネの合成
第 5 節 キニーネの類縁体の合成

第4章

結論

第 3 部

2 つの有機触媒を用いたステレオダイバージェントな反応
の開発

第1章

序論

第2章

2 つの連続的な不斉触媒反応によるステレオダイバージェントな反応
の検討

第 1 節 マイケル反応における求電子剤の検討
第 2 節 ニトロエチレンを用いたマイケル反応の検討

第3章

反応性の考察

第4章

結論

第4部

結論

第5部

実験項

第6部

参考論文

第7部

謝辞

3

論文一覧
第2部
[1] Organocatalyst-mediated five-pot synthesis of (−)-quinine
Takahiro Terunuma, Yujiro Hayashi

Nat. Commun. 2022, 13, 7503-7509. DOI: 10.1038/s41467-022-34916-z

4

参考論文一覧
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catalysts
Nariyoshi Umekubo, Takahiro Terunuma, Eunsang Kwon, Yujiro Hayashi

Chem. Sci. 2020, 11, 11293-11297. DOI: 10.1039/D0SC03359F

5

略語一覧
Ac

acetyl

AQN

anthraquinone

Bn

benzyl

b.r.s.m.

based on recovered starting material

Bt

benzotriazole

Bu

butyl

CDI

carbonyldiimidazole

dppf

1,1’-bis(diphenylphosphino)ferrocene

DBU

1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene

DHQ

dihydroquinine

DHQD

dihydroquinidine

DMAP

4-(N,N-dimethylamino)pyridine

DME

1,2-dimethoxylethane

DNP

2,4-dinitrophenylhydrazine

e.e.

enantiomeric excess

evap.

evaporation

i

iso

mCPBA

m-chloroperbenzoic acid

Me

methyl

n

normal

NBS

N-bromosuccinimide

NOE

nuclear Overhouser effect

NOESY

nuclear Overhauser effect spectroscopy

NMR

nuclear magnetic resonanse

p

para

Ph

phenyl

PHAL

pthalazine

PMP

p-methoxyphenyl

PPTS

pyridinium p-toluenesulfonate

Pr

propyl

quant.

quantitative

r.t.

room temperature

TASF

tris(dimethylamino)sulfonium difluorotrimethylsilicate

TBAF

tetrabutylammonium fluoride

TBD

triazabicycloundecene

TEA

triethylamine

Tf

trifluoromethanesulfonyl

THF

tetrahydrofuran

TMEDA

N,N,N’,N’,-tetramethylethylenediamine

TMG

1,1,2,2-tetramethylguanidine

TMP

2,2,6,6-tetramethylpiperidine

tol

p-tolyl

Ts

p-toluenesulfonyl

7

8

第 1 部 序論

9

有機合成化学の発達が文明社会の発展に大きく寄与していることは疑いようがない。有
機合成化学の社会貢献の大きな一つの形は社会的な要求に対応する形で目的物を合成し供
給することである。目的の物質が天然から十分に得られる場合を除き、有機合成化学は多
種多様な医薬品や農薬、光学材料などを生み出し我々の生活を豊かにしてきた。しかし、
入手容易な原料より目的物へ定量的に変換できることが理想的ではあるものの、一般的に
原料を単に混合するのみで目的の反応が選択的に進行することは少ない。そのため目的の
反応のみを促進し、合成を効率的に行うために、触媒の開発と利用が有機合成化学におけ
る重要な課題として発展してきた。
触媒を用いた古典的な化学としては鉄を主成分とする触媒を用い、窒素と水素からアン
モニアを生成するハーバー・ボッシュ法や市塩化チタンまたは酸塩化チタンを有機アルミ
ニウム化合物と混合することで得られるチーグラー・ナッター触媒によるポリエチレンや
ポリプロピレンなどの合成法が開発されており、社会の発展に大きな影響を与えている。
また、でんぷんを分解するアミラーゼやたんぱく質を分解するヘプシンなど生体内で化学
反応を促進する酵素も触媒の働きをしている。酵素は基質の立体を正確に認識し作用する
ことで光学活性な化合物を与えるため、有機合成化学にも多く応用されてきた。近年では
非常に複雑かつ精密に設計された触媒を用いた化学は科学における重要な領域へと成長し
た。例としてパラジウムを用いたカップリング反応はこれまで困難とされていた多くの結
合の形成を可能にした[1]。また、Grubbs 触媒などのルテニウムカルベノイド錯体はオレフ
ィンメタセシスへと応用され、逆合成の多様性を飛躍的に向上させた[2]。また近年ではイ
リジウムを中心金属としたフォトレドックス触媒系がこれまでの他の遷移金属触媒では困
難であった結合形成を可能にするという点で大きな注目を集めている[3]。しかし、これら
の金属触媒は埋蔵量および毒性の問題が指摘され、またその流通量は政治的状況に左右さ
れるなどの問題もあり、遷移金属の供給に依存しない触媒の開発は有機合成化学における
重要な課題である。
一方で、遷移金属を含有しない触媒として、有機低分子を触媒として用いる試みも古く
から行われている。Hajos らおよび Eder らのグループはそれぞれ独立にプロリンがトリケ
トン 1 の立体選択的な不斉ロビンソン環化を触媒することを報告し、生成物 2 は現在も
様々な化合物の全合成に利用されている[4](式 1)。この分野は 2000 年の List, Barbas らの
プロリンを用いた不斉アルドール反応[5] (式 2)および McMillan らによるキラルイミダゾリ
ジノンを用いた不斉 Diels-Alder 反応の開発[6] (式 3)と有機触媒という名前が付けられたこ
とをきっかけに、一挙に開花し、現在に至るまで爆発的な発展を遂げている(Figure 1)。そ
の過程で、当初のプロリン型第二級アミン触媒を用いたエナミン-イミニウム形式のみなら
ず、相間移動触媒、キラルリン酸やチオウレアなどの汎用有機触媒など様々な形式で反応
を促進する有機触媒が開発され、広く利用されいている[7]。

10

ジアリールプロリノールシリルエーテルは上記の背景の中で 2005 年に Y. Hayashi、K.
A. Jørgensen らによってそれぞれ独立に開発された有機触媒である[8]。Jørgensen らは 2005
年、アルデヒド 9 とスルファニルトリアゾール 10 を用いた不斉スルファニル化においてジ
アリールプロリノールシリルエーテルが高収率かつ高立体選択的に目的物を与えることを
報告した[8a](式 4)。本反応はアルデヒド 9 と触媒から生じた光学活性なエナミンが高立体
選択的にスルファニル化されることで高い選択性が発現すると考えられている。

また、林らも同年にアルデヒド 12 とニトロオレフィン 13 との不斉マイケル反応におい
て、ジフェニルプロリノールシリルエーテルが高収率かつ、高立体選択的に目的物を与え
ることを報告している[8b] (式 5)。本反応も同様に光学活性なエナミンが鍵中間体であると
考えられている。

11

本反応では反応後の中間体としてニトロナートが生成するため、これを求核種として
ドミノ反応へと展開することが可能である。これを用いて Enders らはアルデヒド 12、
ニ トロオレフィン 13、不飽和アルデヒド 15 の三成分ドミノ マイケル/マイケル/アル
ドール 反応が 高立体選択的かつ高収率で進行し多置換シクロヘキセン 17 を与えること
を報告している[9] (式 6)。

また、2007 年に林らも同様にニトロナートを活性中間体としたドミノ反応として、 ニ
トロオレフィン 13 とグルタルアルデヒド水和体 18 との不斉ドミノマイケル/ヘンリー 反
応が円滑かつ高エナンチオ選択的に進行し多置換シクロヘキサン 19 が得られることを報告
している[10] (式 7)。

一方で本触媒はイミニウムを経由する反応にも広く適用可能である。林らは 2005 年
に 本触媒を用いた不飽和アルデヒド 15 とニトロメタンとの不斉 マイケル 反応を報告し
た[11] (式 8)。本反応は不飽和アルデヒド 15 と触媒から生じるイミニウムイオンに対し、
ニトロメタンから発生したニトロナートが高立体選択的に付加することによって立体選択
性が発現すると推察されている。

また、マイケル反応後の中間体がキラルなエナミンであることを利用し、本反応をドミ
ノ反応に利用することも可能である。2009 年、Enders らは不飽和アルデヒド 15 と 2-ニ
トロメチルベンズアルデヒド(21)との不斉ドミノマイケル/アルドール反応が高立体選択的
に進行し、光学活性ジヒドロナフタレン 22 を与えることを報告している[12] (式 9)。

12

上記のように、本触媒はエナミンやイミニウムを経由する様々な反応において、高い反
応性と立体選択性を⽰す。これは触媒のかさ高いジアリールメチルトリアルキルシリルエ
ーテル部位が効率的に基質の反応⾯の⽚側をブロックすることによると考えられている
(Figure 2)。

また本触媒は天然のアミノ酸であるプロリンから容易に誘導されるため、安価かつ安
定的な供給が可能である。以上の特徴からジフェニルプロリノールシリルエーテルは様々
な全合成に利用されている代表的な有機触媒の一つである。また安価かつ安定で取り扱い
容易という特徴のため医薬品開発にも応用されている。例えば、Merck はジフェニルプロ
リノールシリルエーテルを用いたニトロメタンと不飽和アルデヒドとの不斉 マイケル 反
応を用いた偏頭痛治療薬 telcagepant の大スケール合成を報告している[13] (式 10)。

前述のように、有機合成化学は単純で安価な原料から化学反応を駆使し、目的の化合
物を合成する手法を研究する学問である。しかし近年では環境負荷やコストの観点より、
目的物を合成するのみでなく、いかに効率的に合成を行うかという観点で有機合成が評価
されるようになった。これを受け、合成経路を評価する上で様々な評価基準が提案されて
いる。Trost らは合成における廃棄物量の低減のためには、合成過程で利用される原子の
総数を減らすべきであるという観点からアトムエコノミーの概念を提唱した[14]。また、
Wender らは用いる反応が少ない方が合成の収率の向上および精製過程などで生じる廃棄
物量の低減を達成できるという観点からステップエコノミーの概念を提唱した[15]。当研究
室では、複数の反応をワンポットで連続的に行うワンポット反応を活用することで、合成
の効率化を図るポットエコノミーの概念を提唱している[16] (Figure 3) 。ワンポット反応に
13

おいては複数の反応を同一容器内で行うことで、合成全体の収率の向上、反応の後処理⼯
程と廃棄物量の削減、ならびに作業時間の短縮などの点において改善が可能である。しか
し、その問題点として、ワンポットで反応を行うことで反応系内に前⼯程における残存基
質、反応剤および副生物が混在することにより、望まぬ副反応や反応の阻害などが発生す
る場合があり、その適用範囲は限られていた。

先述した有機触媒ジフェニルプロリノールシリルエーテルは官能基選択性の高さおよび
その反応性の穏やかさから、ワンポットにて続く反応を行った際に後続の反応を阻害しな
い場合が多いことを所属研究室では⾒出している。我々はこの知⾒に基づき、有機触媒を
用いた不斉反応を行った後、ワンポットで連続的に反応を行うことにより、これまでにオ
セルタミビルの 1 ポット合成[17](式 11)、プロスタグランジン E1 メチルエステルの 3 ポッ
ト合成[18] などを報告している(式 12)。

一方で、(−)-キニーネは(33)はシンコナアルカロイドの1つであり、400 年近く前から
マラリアの特効薬として利用されている医薬品である[19](Figure 4)。マラリアは 2020 年の
感染者数が全世界で約 2 億 4000 万人、死亡者数約 63 万人と推定されている世界三大感染
症の一つである。キニーネの構造を元にクロロキン(34)やメフロキン(35)などの副作用が
比較的少ない人⼯的な抗マラリア薬が開発され、現在ではアルテミシニン(36)が第一選択
薬として用いられることが多い。キニーネは薬剤耐性がある熱帯熱マラリアや重症マラリ
アに対して処方されることがあるが、薬剤耐性が出にくく、副作用が少ない治療薬の開発
が望まれている。

14

また、近年、シンコナアルカロイドおよびその誘導体は有機触媒として数多くの不斉反
応に利用されている[20]。しかし、キニーネの供給は現在でも天然からの単離に依存してい
るため、そのエナンチオマーを入手することは困難である。現在、キニーネ(33)のジアス
テレオマーであるキニジン(37)が擬エナンチオマーとして代替的に用いられているが、エ
ナンチオ選択性に影響が生じる場合もある。そのため、キニーネ(33)とそのエナンチオマ
ーの⼯業的な合成法の確立は有機合成化学上重要な課題である。キニーネ(33)の全合成の
歴史は古く、W. H. Perkin が 1856 年に最初の合成を試み、1944 年に R. B. Woodward と
W. Doering によって初のラセミ合成が達成され[21]、2001 年に Stork らが初の不斉全合成
を達成した[22]。その後、独自の手法を用いた不斉全合成が複数報告されており、合成的に
も多くの化学者の注目を集めている[23]。キニーネの構造的特徴はキヌクリジン環と 4 つの
不斉点を有する点であり、いかにジアステレオ選択的に、かつエナンチオ選択的に合成す
るか、また、いかに効率的に短⼯程で合成するかが重要な課題である。

また、所属研究室は 2 つの第二級アミン触媒を用い、-不飽和アルデヒド 15 とケト
ン 40 をそれぞれイミニウムイオン 41 とエノラート 42 として活性化することで不斉マイ
ケル反応が高収率かつ高立体選択的に進行し、シン体選択的に 43 を得られることを報告
している[24](式 13)。しかし、この反応の立体選択性はイミニウムイオン 41 とエノラート
42 との立体障害を避けるように TS1 を経ることで進行するため基質依存的であり、アン
チ体を選択的に得ることは困難である。

15

一方でステレオダイバージェントな反応は 1 つの化合物から複数の不斉点を望みの立体
化学で作り分けることが可能であるため、新規医薬品開発に非常に有用である[25]。E. M.
Carreira らは有機触媒と不斉配位子を有するイリジウム触媒を用い、アルデヒド 45 とアリ
ルアルコール 44 のそれぞれのエナンチオ⾯を制御することでシン体およびアンチ体を高
収率かつ高立体選択的に得られることを報告している[26](Figure 6)。

このように、2 つの触媒を用いて 1 つの反応で求核剤と求電子剤のそれぞれを活性化す
るステレオダイバージェントな反応はこれまで多く報告されてきた[27]。これに対して D.
W. C. McMillan らは2つの連続的な不斉触媒反応によるステレオダイバージェントな反応
を開発している[28](式 14)。この反応は最初に有機触媒 48 とハンチュエステル 49 を用
い、-不飽和アルデヒド 47 をイミニウムイオン 50 として活性化することで 1,4-還元を
行う。精製を行わずにワンポットで異なる有機触媒を用いてエナミン 54 として活性化
し、アルデヒドの−フルオロ化により有機触媒 52 の立体化学に応じてシン体およびアン
チ体を高い立体選択性で得ることができる。また、この反応は 52 の代わりにプロリンを
用いるとアゾエステルやニトロソベンゼン、イミンなどを求電子剤として用いることがで
きる。

16

しかし、この形式の反応では、反応性や立体選択性の問題により、これまで 2 つの炭素
—炭素結合形成を伴う反応は Fréchet らによって報告された 1 例のみである

(式 15)。

[29]

この反応ではスターポリマーに担持した酸触媒 56 を用い、スターポリマー内でアミン触
媒の塩を形成する。この塩が-不飽和アルデヒドを活性化することで 1-メチルイミダゾ
ール(59)との不斉 Friedel-Crafts 型の反応が進行する。その後、反応系内へスターポリマ
ーに担持した触媒 57 とメチルビニルケトンを加えることでマイケル反応が進行し、シン
体およびトランス体を高収率かつ高立体選択的に与
える。この反応はスターポリマー内に触媒を取り込
むことで、強酸存在下においても塩基性の 57 に影響
なく反応が進行する。しかしながら、ポリマーに担
持した強酸や触媒を用いる必要があり、また、報告
されているのはこの一例のみとなっており、基質一
般性に課題が残っている。
Figure 7. スターポリマーを用いた触媒

17

2 つの炭素—炭素結合形成が可能な 2 つの連続的な不斉触媒反応によるステレオダイバ
ージェントな反応は、複数の相対立体化学を作り分けることが可能であるだけでなく、合
成的に有用な複数の官能基を導入可能であるため、有機合成化学上重要であるが、これま
で報告例が少なく、より広い基質一般性を有する反応の開発が望まれている。

筆者は上記の背景を基に有機触媒ジフェニルプロリノールシリルエーテルを用いた不斉
反応を基盤とし、博士課程において以下の 2 つの研究課題について研究を行った。
1. 有機触媒を用いた(−)-キニーネの 5 ポット合成
第 2 部において、有機触媒とイミン前駆体を用いた不斉マイケル/アザヘンリー/ヘミア
ミナール化/脱離反応[30]を開発し、モデル化合物 66 のポットエコノミカルな合成を達成し
た。また、この合成から得られた知⾒を基に、(−)-キニーネ(33)の全合成を達成し、さら
にこれをポットエコノミーの概念に則り、再度最適化を行い、5 ポットでの合成を達成し
た。

2. 2 つの有機触媒を用いたステレオダイバージェントな反応の開発
第 3 部において、ジアリールプロリノールシリルエーテルを用いた-不飽和アルデヒ
ドとマロン酸エステルとの不斉マイケル反応[31]、およびジフェニルプロリノールシリルエ
ーテルを用いたアルデヒドとニトロアルケンとの不斉マイケル反応[8b]に着目し、2 つの連
続的な不斉触媒反応による炭素—炭素結合形成を伴うステレオダイバージェントな反応開
発へと展開した。その結果、ジアリールプロリノールシリルエーテルを用いた-不飽和
アルデヒド 15 とマロン酸ジメチル(71)との不斉マイケル反応を行った後、ワンポットで
ジフェニルプロリノールシリルエーテルを用いたアルデヒド 72 とニトロエチレン(73)と
のマイケル反応が立体選択的に進行し、ジアリールプロリノールシリルエーテルの立体化
学に関わらず、ジフェニルプロリノールシリルエーテルの立体化学によってアンチ体およ
18

びシン体を高収率、高いエナンチオ選択性、良好なジアステレオ選択性で進行することを
⾒出した。

19

Reference
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この論文で使われている画像

参考文献

Fig. 3

The catalytic cycle of the reaction.

enol tautomer would then react with another molecule of pyrrolidine to afford the ammonium enolate. Ion exchange occurs

between the iminium salt and ammonium enolate, followed by

a coupling reaction to provide the enamine, which is hydrolyzed

to provide the Michael product with the regeneration of the

catalyst. Thus, the role of the second amine was to accelerate

the equilibrium of keto and enol with a combination of pnitrophenol, and to also deprotonate the O–H proton in the

enol tautomer of the cyclohexanone.

Conclusions

In summary, we have identied the actual nucleophile in the

direct Michael reaction of a,b-unsaturated aldehydes and nonactivated ketones catalyzed by two amine catalysts. The generation speed of the enamine, enol, and enolate was examined

along with the reactivity of these species using both catalytic

and equimolar reactions of the isolated iminium ions (S)-8 and

11296 | Chem. Sci., 2020, 11, 11293–11297

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Benjamin, Philippines, 1972, p. 492.

2 While the pKa of cyclohexanone is 26.4 (in DMSO), those of

isopropylamine and TMS2NH are 36 and 30 (in THF),

respectively. Evans' pKa Table can be found in http://

evans.rc.fas.harvard.edu/pdf/evans_pKa_table.pdf.

3 For representative reviews on organocatalysis, see; (a)

Asymmetric Organocatalysis 1: Lewis Base and Acid Catalysts,

ed. B. List, Thieme, Stuttgart, 2012; (b) Comprehensive

Enantioselective Organocatalysis: Catalysts, Reactions, and

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This journal is © The Royal Society of Chemistry 2020

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and K. A. Jørgensen, Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 13860; (i)

G. J. Reyes-Rodriguez, N. M. Rezayee, A. Vidal-Albalat and

K. A. Jørgensen, Chem. Rev., 2019, 119, 4221.

Y. Hayashi and N. Umekubo, Angew. Chem., Int. Ed., 2018, 57,

1958.

S. Lakhdar, T. Tokuyasu and H. Mayr, Angew. Chem., Int. Ed.,

2008, 47, 8723.

(a) Z. G. Hajos and D. R. Parrish, J. Org. Chem., 1974, 39,

1615; (b) U. Eder, G. Sauer and R. Wiechert, Angew. Chem.,

Int. Ed. Engl., 1971, 10, 496; (c) B. List, R. A. Lerner and

C. F. Barbas, J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 2395.

For the reactions to control relative and absolute

congurations via two catalysts, see; (a) S. Krautwald,

D. Sarlah, M. A. Schafroth and E. M. Carreira, Science,

2013, 340, 1065; (b) S. Krautwald, M. A. Schafroth,

D. Sarlah and E. M. Carreira, J. Am. Chem. Soc., 2014, 136,

3020; (c) X. Huo, R. He, X. Zhang and W. Zhang, J. Am.

Chem. Soc., 2016, 138, 11093; (d) X. Jiang, J. J. Beiger and

J. F. Hartwig, J. Am. Chem. Soc., 2017, 139, 87; (e) F. A. Cruz

and V. M. Dong, J. Am. Chem. Soc., 2017, 139, 1029; (f)

L. Wei, Q. Zhu, S.-M. Xu, X. Chang and C.-J. Wang, J. Am.

Chem. Soc., 2018, 140, 1508.

(a) S. J. Blarer, W. B. Schweizer and D. Seebach, Helv. Chim.

Acta, 1982, 65, 1637; (b) S. J. Blarer and D. Seebach, Chem.

Ber., 1983, 116, 2250; (c) D. Seebach, M. Missbach,

G. Calderari and M. Eberle, J. Am. Chem. Soc., 1990, 112,

7625; (d) E. Butkus and A. Stonˇ

cius, Synlett, 1999, 234; (e)

T. Husch, D. Seebach, A. K. Beck and M. Reiher, Helv.

Chim. Acta, 2017, 100, e1700182.

Y. Hayashi, D. Okamura, T. Yamazaki, Y. Ameda, H. Gotoh,

S. Tsuzuki, T. Uchimaru and D. Seebach, Chem.–Eur. J., 2014,

20, 17077.

This journal is © The Royal Society of Chemistry 2020

Chemical Science

20 H. Gotoh, T. Uchimaru and Y. Hayashi, Chem.–Eur. J., 2015,

21, 12337.

21 The structure of 11 was determined by converting to the

crystalline substrate and X-ray crystallographic analysis was

conducted, see the ESI† for details. This reaction was

conducted at 30  C. The reaction also proceeded at rt, but

the yield was lower because of the side reactions. On the

other hand, a catalytic reaction (Table 1, entry 4) proceeded

at room temperature, which was very slow at 30  C.

22 Another pathway for the formation of 10 is the ene reaction

of 7 and 8.

23 When the reaction was stopped in a short reaction time,

similar enantioselectivity has been obtained. Thus, the

Michael product was obtained kinetically.

24 (a) E. Nakamura, M. Shimizu, I. Kuwajima, J. Sakata,

K. Yokoyama and R. Noyori, J. Org. Chem., 1983, 48, 932;

(b) R. Noyori, I. Nishida and J. Sakata, J. Am. Chem. Soc.,

1983, 105, 1598.

25 F. G. Bordwell and H. E. Fried, J. Org. Chem., 1991, 56, 4218.

26 As we cannot nd the pKa of ammonium ions of i-Pr2NEt, we

will discuss the pKa of ammonium ions of a similar tertiary

amine such as Et3N. (a) I. M. Kolthoff, M. K. Chantooni and

S. Bhowmik, J. Am. Chem. Soc., 1968, 90, 23; (b)

M. R. Crampton and I. A. Robotham, J. Chem. Res., 1997, 22.

27 (a) J. P. Guthrie and P. A. Cullimore, Can. J. Chem., 1979, 57,

240; (b) J. P. Guthrie, Can. J. Chem., 1979, 57, 1177.

28 For the reaction using H218O to determine the reaction

mechanism, see; Y. Hayashi, T. Mukaiyama, M. Benohoud,

N. R. Gupta, T. Ono and S. Toda, Chem.–Eur. J., 2016, 22, 5868.

29 See the general organic textbook, for instance, J. McMurry,

Organic Chemistry, Physical Sciences, Belmont, 7th edn,

2008, p. 842.

30 The generation of an enol (not enolate) from an aldehyde

(not ketone) using pyrrolidine was observed to proceed

through a cyclic replay mechanism, see ref. 11.

31 As the solvent of the reaction is EtOH/toluene (4/1), we

discuss pKa in MeOH. The pKa of o-nitrophenol and

Et3NH+ (in water) is 7.1 and 10.75, respectively, based on

Evans' pKa table (ref. 2). The pKa of o-nitrophenol and

Et3NH+ in MeOH is estimated to be 11.1 and 10.95,

respectively, by the use of the empirical conversion

method by Knapp. See, E. Rossini, A. D. Bochevarov and

E. W. Knapp, ACS Omega, 2018, 3, 1653.

32 The enol O–H of the cyclohexanone is acidic enough to be

deprotonated by a tertiary amine. The pKa of the enol O–H

of the cyclohexanone is 12.1 in water, see; (a) J. P. Guthrie

and P. A. Cullimore, Can. J. Chem., 1979, 57, 240; (b)

J. P. Guthrie, Can. J. Chem., 1979, 57, 1177. The calculated

pKa using Advanced Chemistry Development (ACD/Labs)

Soware V11.02 is 11.5 (gas phase).

33 The deprotonation of enol–OH is very fast (oen diffusion

controlled), see H. O. House, Modern Synthetic Reactions,

Benjamin, Philippines, 2nd edn, 1972, p. 495.

34 The pKa of phenol and p-methoxyphenol in MeOH is

estimated to be 13.95 and 14.2, respectively, see ref. 2 and 31.

35 The value of pKa in MeOH is estimated to be 4.75,

respectively, see ref. 2 and 31.

Chem. Sci., 2020, 11, 11293–11297 | 11297

391

第7部

謝辞

第 7 部 謝辞

本研究を行うに際し、大局的な観点から都度的確なご指摘ご助言をいただき、

研究の円滑な遂行を助けて頂きました指導教官である林雄二郎教授に心より厚

く御礼申し上げます。

本研究に深く関わり、親身なご指導、ご助言を頂きました森直紀講師、的場

博亮助教、塩⾒慎也助教、Satrajit Indu 助教、河内元希助教に心より御礼申し

上げます。

研究配属当初から研究⾯で多くのご指導、ご助言をいただき、私が研究を行

っていく上で礎となる考え方や基礎的な実験技術を多くお教え頂いた楳窪成祥

博士に深く感謝申し上げます。

未熟な私を先輩として支えて頂き、先輩のあり方を⾒せて頂き、多くのこと

を学ばせて頂いた越野晴太朗博士に心より感謝申し上げます。

そして様々な場⾯で有益な議論、助言をして頂いた有機分析化学研究室の皆

様に深く感謝致します。

最後に大学生活を送るにあたり精神的、経済的支援を頂いた家族並びに親族

の皆様に深く感謝致します。

2023 年春

照沼 敬洋

...

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