近年日本で増加を続ける性ホルモンに関連する乳がんおよび前立腺がんの年齢階層別発症 -ChatGPT を利用した考察-
概要
Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023
演題登録 01-6
近年日本で増加を続ける性ホルモンに関連する乳がんおよび前立腺がんの
01-6
近年日本で増加を続ける性ホルモンに関連する乳がんおよび前立腺がん
年齢階層別発症率
の
年齢階層別発症率--ChatGPT
ChatGPTを利用した考察-
を利用した考察-
早出
廉、浅田里紗(松本大学人間健康学部健康栄養学科)
早出 廉、浅田里紗(松本大学人間健康学部健康栄養学科)
青木雄次(松本大学大学院健康科学研究科)
青木雄次(松本大学大学院健康科学研究科)
キーワード:
乳がん、前立腺がん、性ホルモン、ChatGPT、内分泌かく乱物質
キーワード:
乳がん、前立腺がん、性ホルモン、ChatGPT、内分泌かく乱物質
要旨:乳がんと前立腺がんは、性ホルモンがその発症進展に関連することが知られている。日本に
要旨:乳がんと前立腺がんは、性ホルモンがその発症進展に関連することが知られている。日本に
おける両者の最近の動向を調査し、Chat Generative
Transformer
(ChatGPT)を利用し
おける両者の最近の動向を調査し、Chat
GenerativePre-trained
Pre-trained
Transformer
(ChatGPT)を利用し
て考察した。乳がんでは、閉経前後で発症率が増加し閉経後に死亡率が増加していたが、前立腺がん
て考察した。乳がんでは、閉経前後で発症率が増加し閉経後に死亡率が増加していたが、前立腺が
では、発症率は増加していたが死亡率は減少傾向であった。日本で増加するこれらのがんに対する
んでは、発症率は増加していたが死亡率は減少傾向であった。日本で増加するこれらのがんに対す
ChatGPT の回答結果より、通常あまり取り上げられることのない環境汚染物質とくに内分泌かく乱
る ChatGPT の回答結果より、通常あまり取り上げられることのない環境汚染物質とくに内分泌かく
物質について検索し、そのような環境因子についても注目する必要があると考えられた。
乱物質について検索し、そのような環境因子についても注目する必要があると考えられた。
A.目的
A.目的
乳 が ん と 前 立 腺 が ん は、 性 ホ ル モ ン が そ の
乳がんと前立腺がんは、性ホルモンがその発
発症進展に関連することが知られている代表
症進展に関連することが知られている代表的
的
な が ん で あ る 1,2)。 日 本 に お け る 両 者 の 最 近
日本における乳がんと前立腺がんの最近の発
年毎の年齢階層別(5 歳毎)発症率おとび死亡
症 率 増 加 の 原 因 に 関 し て、ChatGPT を 利 用 し
率を得た。
て考察を試みた。無料で利用できる GPT3.5 は、
日本における乳がんと前立腺がんの最近の
2021
年 9 月までのインターネット上の情報を取
1,2)
。日本における両者の最近の動
ながんである
の
動 向 を 調 査 し、Chat
Generative Pre-trained
発症率増加の原因に関して、ChatGPT
を利用し
り込んでいる。
て考察を試みた。
無料で利用できる GPT3.5 は、
C.結果
向 を 調 査 し(ChatGPT)を利用して考察した。
、 Chat Generative Pre-trained
Transformer
図年
1 に示すように、乳がん発症率は閉経前後に
2021
9 月までのインターネット上の情報を取
二峰性を示すパターンで 5 年毎に増加しており、
り込んでいる。
B.方法
Transformer (ChatGPT)を利用して考察した。
女性の乳がんと結腸がんおよび男性の前立腺
B.方法
がんと結腸がんについて、国立がんセンターが
女性の乳がんと結腸がんおよび男性の前立
前立腺がん発症率は 75 歳から 79 歳にピークを
C.結果
示すパターンで増加していた。結腸がんは男女
図 1 に示すように、乳がん発症率は閉経前後
ん 情 報 サ ー ビ ス(http://gdb.ganjoho.jp/graph_
腺がんと結腸がんについて、国立がんセンター
db/)より、2004 年から 2019 年における 5 年毎
がん情報サービス(http://gdb.ganjoho.jp/gr
の年齢階層別(5 歳毎)発症率おとび死亡率を得
aph_db/)より、2004 年から 2019 年における 5
た。
ともに、一般のがんと同様に加齢とともにその
に二峰性を示すパターンで 5 年毎に増加してお
発症率が上昇するパターンを示しており、5 年毎
り、前立腺がん発症率は 75 歳から 79 歳にピー
の発症率増加は軽度であった。乳がんの死亡率
図 1.乳がん、前立腺がんおよび男女結腸がんの 2004 年~2019 年における 5 年毎の年齢階層別(5
歳毎)発症率と死亡率。
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信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. 1, August 2023
Shinshu Journal of Public Health Vol. 18 No. 1, August 2023
は、閉経後は 5 年毎に増加がみられるが、閉経
察期間における推移の大きな違いは、これらの
前はやや減少傾向を示していた。男女の結腸が
影響によるものと考えられる。
んと前立腺がんの死亡率は、観察期間中ほど同
日本人の最近の乳がんおよび前立腺がんの増
様に推移していたが、とくに男性結腸がんと前
加について、ChatGPT の結果の中から、最近に
立腺がんの死亡率は、むしろ減少傾向を示して
あまり取り上げられることのない環境汚染物質
いた。
とくに内分泌かく乱物質についてネット検索を
日本語で ChatGPT を利用した結果を、一部省
行った。環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と
略し原文まま以下に示す。
乳がんまたは前立腺がんの 2 つのキーワードを
問い:日本人の最近の乳がんの増加原因は何だ
用いて検索すると、乳がんでは発症増加との関
と思いますか?
連を示唆する公的報告がみられたが、前立腺が
答え:乳がんの増加原因は単一の要因でなく、複
んではみられなかった。PubMed による最新の
数の要因が絡み合っているとされています。以
論文検索では、基礎研究で両者のがんの発症進
下に代表的な要因をいくつか挙げてみます。
展に影響する可能性が示されていた。乳がんと
1.食生活の変化:近年、日本人の食生活は欧米
内分泌かく乱物質に関する 2020 年の総説論文
化が進み、高脂肪・高カロリーな食品や加工
3)
食品・・・
とくに発がんに関する長期の影響を評価し、暴
2.女性の社会進出:・・・出産や子育てが遅れ
では、内分泌かく乱物質の性質を考慮すると、
露を最小限にするよう気づかせることが必要と
る・・・
結論づけている。結果の一致しない多数の疫学
3.環境汚染物質:・・・特にダイオキシンや
研究論文を記載しているが、日本からは 2001 ~
PBC・・・
2005 年の後ろ向き疫学調査の 1 論文のみで、血
4.運動不足やストレスなどのライフスタイル要
中のダイオキシン濃度と乳がんリスクに関連を
因:・・・個人差や病歴によってもことなる
認めなかった。
ため、乳がんの発症リスクを詳しく知りたい
E.まとめ
場合には、医師の診断や相談が必要です。
性ホルモンに関連する乳がんと前立腺がんの
問い:日本の最近の前立腺がんの増加は何が原
発症率は増加が続いており、これまで指摘されて
因だと思いますか
いるように西欧化するライフスタイルの影響が
答え:前立腺がんの増加については、複数の要因
推察される。ChatGPT を利用した考察では、内
が考えられます。その中でも、加齢や生活習慣の
分泌かく乱物質を含む環境因子についても目を
変化が最も大きな影響を与えているとされてい
向ける必要があると考えられた。
ます。日本では、高齢化社会が進展し、加齢に
F.利益相反
よる前立腺の変化・・・肥満、過剰な飲酒、喫煙、
利益相反なし。
運動不足などが前立腺がんの発生に関与・・・
G.文献
動物性脂肪や赤身肉の摂取量が増加する・・・
1)
Ya g e r J D , D a v i d s o n N E . E s t r o g e n
加えて、環境汚染やストレスなども前立腺がん
carcinogenesis in breast cancer. N Engl J Med
のリスクに影響を与えるとされています。
354: 270-282, 2006.
2)
Lonergan PE, Tindall DJ. Androgen receptor
D.考察
乳がんでは、閉経前後で発症率が増加し閉経
signaling in prostate cancer development and
後に死亡率が増加していたが、前立腺がんでは、
progression. J Carcinog 10:20, 2011.
発症率は増加していたが死亡率は減少傾向であ
3)
Eve L, et al. Exposure to endocrine disrupting
った。死亡率に関しては、早期発見と治療の進
chemicals and risk of breast cancer. Int J Mol
歩の影響を受けることが知られている。前立腺
Sci 21: 9139, 2020.
がんおよび閉経前乳がんの発症率と死亡率の観
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信州公衆衛生雑誌 Vol. 18 No. ...