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大学・研究所にある論文を検索できる 「Thin-fibre receptors expressing acid-sensing ion channel 3 contribute to muscular mechanical hypersensitivity after exercise」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Thin-fibre receptors expressing acid-sensing ion channel 3 contribute to muscular mechanical hypersensitivity after exercise

Matsubara, Takanori 松原, 崇紀 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
遅発性筋痛(delayed onset muscle soreness, DOMS)は、筋が収縮と同時に伸張される伸張性収縮(lengthening contraction, LC)により、その後数日間にわたり発症する痛み(機械痛覚過敏)である(Mizumura and Taguchi, 2016)。筋の痛みは末梢求心性神経のうち細径無髄の C 線維および細径有髄の Aδ 線維により脊髄へ伝達される。これまでに DOMS は C 線維侵害受容器の感受性増大により生じること(Taguchi et al., 2005)や、細径神経に発現する酸感受性イオンチャネル(acid-sensing ion channels, ASIC)を介して生じること(Fujii et al., 2008)が報告されている。しかしながら、DOMS の神経メカニズムは完全には理解されていない。特に、DOMS 発生に Aδ 線維が関与するか否かは不明であり、また DOMS 発生に関与する ASIC のサブタイプも未同定である。そこで本研究では、DOMS の発生における Aδ 線維の関与と、C 線維や Aδ 線維の自由神経終末に発現し他の筋痛モデルにおいても関与が知られている酸感受性イオンチャネル 3(ASIC3)の関与の 2 点を明らかにすることを目的とした。

【対象及び方法】
行動薬理実験
先行研究(Hayashi et al., 2017)に従い、雄性 Sprague-Dawley ラットの下腿伸筋群に麻酔下で LC を負荷し、DOMS モデルを作製した。その後、電子式フォンフライ装置を用いて下腿伸筋群に圧刺激を行い、逃避反応が起きる最小刺激強度(機械逃避閾値)を覚醒下にて測定することで機械痛覚過敏の程度を定量化した。次に、LC 負荷により ASIC3 を介して DOMS が誘発されたか否かを検討するため、LC 負荷直後の下腿伸筋群に選択的 ASIC3 阻害薬である APETx2(0.22 μM および 2.2 μM)を投与し、投与後 120 分後までの機械逃避閾値を測定した。また、比較のため、LC を負荷しない無処置ラットの下腿伸筋群に APETx2(2.2 μM)を投与する対照群を設けた。

電気生理実験
DOMS 発生に関与する細径線維タイプを同定するため、DOMS モデルラットおよび対照群の下腿伸筋群とその支配神経からなる in vitro 標本を作製し、単一神経レベルで筋への機械刺激に対する活動電位応答を記録した。受容野への電気刺激と応答との時間差から記録線維の伝導速度を算出し、伝導速度が 2–10 m/s の場合は Aδ 線維、2 m/s 以下の場合は C 線維と判定した。まず、Aδ 線維および C 線維の自発放電の頻度を機械刺激直前の 60 秒間から算出した。次に、先端径 1 mm のガラス棒を用いた筋への機械刺激により記録線維の受容野をマッピングした後、同定した受容野に定量的機械刺激(294 mN / 30 s)を加え、誘発される活動電位を記録し、DOMS モデルと対照群とを比較した。DOMS モデルラットにおける C 線維および Aδ 線維の機械反応増大が ASIC3 を介するかを検討するため、上記 in vitro 標本にてその選択的阻害薬である APETx2(2.2 μM)を筋内投与し、投与 30 分後までのそれぞれの線維における機械応答を記録した。対照実験として溶媒を筋内投与した群を設けた。

【結果】
行動薬理実験
LC 負荷前に比べ、LC 負荷 1 日後の筋機械逃避閾値は有意に低下しており、DOMSモデルが作製されたことを確認した。LC 負荷後に低下した逃避閾値は APETx2(2.2 μM)の筋内投与により、溶媒投与対照群と比較して有意に上昇した(図 1a)。一方、低濃度の APETx2(0.22 μM)では逃避閾値に変化はなかった。また、LC を負荷しない無処置ラットでは、APETx2 投与による機械逃避閾値の変化は観察されなかった(図 1b)。

電気生理実験
DOMS モデルラットの Aδ 線維では対照群に比べ機械刺激に対する反応閾値が顕著に低下し、放電頻度が顕著に増加していた(図 2a-c)。また、先行研究(Taguchi et al., 2005)と一致し、C 線維の機械感受性も増大していた(図 2d-f)。一方、LC 負荷によって Aδ 線維および C 線維の自発放電・伝導速度・受容野の分布に違いは生じなかった(表 1)。DOMS モデルで増大した Aδ 線維の機械感受性は、APETx2 の筋内投与により有意に減弱した(図 3)。その効果は投与 15 分後に確認され、少なくとも 30 分後まで持続した。同様に、DOMS モデルで増大した C 線維の機械感受性は投与 15 分後に有意に減弱し、その効果は少なくとも 30 分後まで持続した(図 4)。一方、DOMS モデルへの溶媒投与では、C 線維および Aδ 線維の機械反応に変化はなかった(図 3, 4)。

【考察】
一般に、Aδ線維は局在の良い鋭い痛みを伝えるのに対し、C線維は局在の悪い鈍い痛みを伝える(Armstrong, 1984; Inui et al., 2002; Ochoa and Torebjork, 1989; Torebjork et al., 1984)。DOMSは局在の悪い鈍い痛みを特徴とするため、その感覚は主としてC線維により伝達されると考えられてきた。しかしながら、本研究において、DOMSの機械痛覚過敏には、無髄C線維に加え、有髄Aδ線維も関与することが実証された。

また、本研究では Fujii ら(2008)の研究により DOMS への関与がわかっていた ASICについて、少なくとも ASIC3 サブタイプの関与を明らかにした。これまでに ASIC3 は筋紡錘のような太径有髄線維を介した固有感覚受容への関与が報告されている(Lin et al., 2016)が、生理的条件下における侵害機械受容への寄与は明らかでなかった(Cheng et al., 2018; Deval and Lingueglia, 2015; Lingueglia, 2007)。本研究で無処置対照筋への APETx2 投与が機械逃避閾値を変化させなかったことから、ASIC3 は正常時の機械痛覚に関与しないと考えられる。これは ASIC3 ノックアウトマウスでは機械刺激に対する疼痛行動に変化がないこととも一致する(Sluka et al., 2007)。しかし一方で、機械痛覚過敏を伴う特定の病態下における ASIC3 の関与は明らかであり(Chen et al., 2014; Gregory et al., 2016; Hori et al., 2010; Sluka et al.,2003, 2007; Taguchi et al., 2015)、今回新たに、DOMS の機械痛覚過敏における ASIC3 の関与が明らかになった。このような ASIC3 のモーダルシフトを介した病態時における機械痛覚過敏機構は不明であり、今後さらなる研究が必要である。

【結語】
DOMS の機械痛覚過敏には、無髄 C 線維に加え、有髄 Aδ 線維の機械感作が関わることがわかった。また、その分子機構として双方の細径線維受容器終末に発現する ASIC3 の関与が明らかとなった。これらの知見は DOMS の治療や予防法確立に繋がる重要な末梢神経・分子機構であると考える。

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