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大学・研究所にある論文を検索できる 「小児集中治療における疼痛・不穏・せん妄マネジメント」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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小児集中治療における疼痛・不穏・せん妄マネジメント

松石, 雄二朗 筑波大学

2021.08.03

概要

⽬的:本邦において国際標準の痛み・不穏・せん妄の症状管理を⼩児集中治療の臨床で⾏えるためのアセスメントツールの翻訳及び⽇本語版の妥当性・信頼性を⽰す(研究1,研究2、研究3)と共に、鎮静剤の作⽤部位であるガンマアミノ酪酸(GABA)受容体がダウン症候群で変性しているという基礎研究における知⾒から、ダウン症候群患児は鎮静管理におけるハイリスク集団となっているのではないかと仮説を⽴て検証を⾏う(研究4)。そして、これらの研究によって本邦でも痛み・不穏・せん妄の症状管理ができる状態を作り上げた上で、成⼈領域で⽰唆されている⼩児せん妄と⾎中の脳神経逸脱物質濃度の上昇との関連を⼩児領域で明らかにすることを⽬的とする(研究5)。

対象と⽅法:研究1,研究2、研究3は⼩児集中治療室(PICU)に⼊室している全診療科の患児を対象とした。研究1,研究2、研究3においては、アセスメントスケールの妥当性と評価者間での信頼性の検討を⾏った。アセスメントツールの妥当性に関しては既存の指標でゴールドスタンダードとして使⽤されているアセスメントスケールまたは診断を基準とし、作成したスケールの妥当性を評価した。また信頼性に関しては、 2⼈の評価者で同じアセスメントスケールを評価しその⼀致率から信頼性を評価した。研究4においては、PICUに⼊室する⼼臓外科術後患者を対象とした。鎮静効果に関連 すると思われる因⼦を共変量として投⼊した多変量モデルを構築し、ベイズ推定を⽤いて鎮静剤の鎮静効果がダウン症候群患児の有無で変化するかを評価した。研究5においては脳神経逸脱物質と⼩児せん妄の関係性に関連すると思われる因⼦を共変量として投⼊した多変量モデルを構築し、脳神経逸脱物質と⼩児せん妄の発症の関連性に関して多変量モデルを構築し評価を⾏った。

結果:研究1において⼩児疼痛を客観的に評価できる⽇本語版Face, Legs, Activity, Cry, Consolability(FLACC)スケールを作成し⾼い妥当性(相関係数:r = 0.96)と信頼性(重み付けκ係数κ=0.95)を明らかにした。研究2においては⼩児せん妄アセスメントスケールPreschool Confusion Assessment Method for the ICU(psCAM-ICU)の⾼い妥当性 (感度90%、特異度93%)と信頼性(κ=0.92) を明らかにした。研究3においては⼩児せん妄アセスメントスケール Sophia Observation withdrawal Symptoms-Paediatric Delirium scale(SOS-PD)の⾼い妥当性(感度92%、特異度97%)と信頼性(κ=0.95)を明らかにしたと共に、患者家族も⼩児せん妄を⾼い妥当性を持って評価できることを明らかにした(感度91%、特異度91%)。研究4においては鎮静剤プレセデックスはダウン症候群の有無に対して鎮静効果に変化が無いのに対し、鎮静剤ミダゾラムはダウン症候群患児に作⽤減弱していることが明らかになった(事後オッズ⽐=1.32、95% 信⽤区間 = 1.01‒1.75)。研究5においては正常な意識状態は⾎中の神経細胞特異的酵素(neuron specific enolase :NSE)が低値の場合、せん妄はNSE 15ng/mL付近、昏睡はNSEが⾼値である場合に観察される可能性が⾼い結果となった(正常な意識状態からせん妄、昏睡と意識状態が悪化することに対するNSEの事後オッズ⽐1.09、95%信⽤区間= 1.02‒ 1.18)。また、⼩児せん妄の重症度と⾎中NSEの濃度が関連している(事後OR=1.39、95%信⽤区間 = 1.18‒1.64)ことからも、⼩児せん妄は⾎中の脳神経逸脱物質濃度の上昇と関連していることを明らかにした。また、様々な⼩児せん妄アセスメントスケールで重要視されている“アイコンタクトの⽋如”が最も⾎中NSEの濃度と相関し(r= 0.55)、脳神経逸脱物質濃度の上昇を⽰唆する症状であることが明らかになった。

考察:研究1において検証した⼩児疼痛アセスメントスケールFLACCスケールは客観的に疼痛をアセスメントすることができ汎⽤性の⾼い疼痛アセスメントスケールであると考える。また、研究2、3において検証した⼩児せん妄アセスメントスケール psCAM-ICU及びSOS-PDは簡便に⼩児せん妄を評価することができ、本邦で妥当性と信頼性が検証されたことで本邦でも簡便に⼩児せん妄を評価できることとなった。そして研究3によって患者家族も⼩児せん妄を⾼い妥当性を持って評価できることが明らかになり、患者家族と協働して患児の状態を評価することで家族の治療参画の促進に繋がると考えられる。また、研究4ではダウン症候群患児ではミダゾラムの鎮静作⽤が減弱していることが明らかになり、このような疾患を持つ患児はミダゾラムの投与量と鎮静状態の関係性が他の患児と異なるため、鎮静スケールを⽤いてより注意深い観察が必要であることが⽰唆される。そして、研究5において⼩児せん妄は⼼臓外科術後において脳神経逸脱物質の増加と関連があることが明らかになった。これにより、⼩児せん妄をベッドサイドで観察する重要性が明らかになったため、患児の脳機能の状態をアセスメントする⼩児せん妄アセスメントが今後の脳保護戦略の重要な起点となることが⽰唆される。

結論;本研究によって本邦において⼩児疼痛および⼩児せん妄を簡便にアセスメントするアセスメントツールの⾼い妥当性・信頼性が検証されたとともに、ダウン症候群患児が鎮静剤ミダゾラムが作⽤減弱していることから、鎮静管理におけるハイリスク集団となっていることが明らかになった。さらに、⼼臓外科術後において⼩児せん妄と脳神経逸脱物質の増加が関連していることからも、ベッドサイドでの⼩児の呈する症状の観察が重要であると考えられる。

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