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大学・研究所にある論文を検索できる 「Color-coded Imaging of the Fate of Cancer-cell-derived Exosomes During Pancreatic Cancer Metastases in a Nude-mouse Model」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Color-coded Imaging of the Fate of Cancer-cell-derived Exosomes During Pancreatic Cancer Metastases in a Nude-mouse Model

佐竹, 智行 岐阜大学

2020.03.25

概要

【背景と目的】
がんの浸潤・転移には,がん細胞のみでなく,がん微小環境(TME:tumor microenvironment)を構成する線維芽細胞や免疫細胞が重要な役割を果たしている。近年,がん細胞とがん周囲細胞との細胞間コミュニケーションを担う因子として,エクソソームが注目されている。エクソソームは直径 30- 150nm の細胞外小胞であり,その膜表面上に CD9,CD63,CD81 等のテトラスパニンを有し,小胞内部に DNA,mRNA,microRNA,蛋白質等を含有する。がん細胞由来のエクソソームは,血管新生や上皮間葉転換,あるいは免疫調整機構に関与し,がんの転移を積極的に制御している可能性が考えられている。しかし,エクソソームの体内動態や標的細胞の指向性に関しては未だ不明な点が多い。そこで,本研究では,がんの浸潤・転移におけるエクソソームの機能・役割を明らかにすることを目標とし,そのための技術基盤として,生体内でがん細胞内のエクソソームを可視化・追跡することによって,エクソソームの体内動態や標的細胞を同定する手法を構築することを目指した。

【方法】
がん細胞由来のエクソソームを可視化・追跡するために, 赤色蛍光タンパク質( RFP: red fluorescent protein)を導入したヒト膵癌細胞株(Mia-PaCa-2-RFP)を用いて,CD63(エクソソームマーカー)と緑色蛍光タンパク質(GFP:green fluorescent protein)の融合タンパク質(CD63- GFP)を発現する遺伝子を導入した細胞亜株(Mia-PaCa-2-RFP/GFP-Exo)を樹立した。次に,8 週齢の BALB/c-nu/nu マウスの脾臓に 2×106 個の Mia-PaCa-2-RFP/GFP-Exo 細胞を移植することによって,膵癌転移マウスモデルを作成した。移植から 4 週間経過した後に,移植したマウスから脾臓,肝臓,肺,および骨髄を採取し,蛍光実体顕微鏡(SZX7)で観察することによって,それぞれの臓器への転移の有無を調べた。さらに,組織から得られた細胞を培養した後,共焦点顕微鏡(FV1000)で培養細胞を観察することによってがん細胞由来のエクソソームを取り込んだ細胞の解析を行なった。

【結果】
共焦点顕微鏡で観察することにより,Mia-PaCa-2-RFP/GFP-Exo 細胞内でエクソソームが GFP によって蛍光標識されていることが確認された。この細胞を BALB/c-nu/nu マウスの脾臓中に移植した後, 4 週間後に解剖を行い,腫瘍形成能と各臓器への転移の有無を蛍光実体顕微鏡によって観察した。その結果,脾臓における腫瘍形成と多発肝転移が認められたが,肺や骨髄には明瞭ながん転移が認められなかった。次に,同マウスの各種組織から採取した細胞の培養を行い,各種組織由来細胞へのエクソソームの取り込みの有無を解析した。肝臓の転移部位ではクッパー細胞を含む周囲細胞内に,がん細胞由来のエクソソームが取り込まれていることが確認された。また,転移巣形成が認められなかった肺や骨髄の細胞においても,細胞内にがん細胞由来のエクソソームが存在していることが確認された。また,細胞の形態的特徴からエクソソームを取り込んでいた細胞の多くがマクロファージ様の細胞であると推測された。

【考察】
本研究では,エクソソームを GFP で標識したがん細胞をヌードマウスに移植することによって,個体レベルでエクソソームの拡散や細胞への取り込みを解析するのに有用なマウスモデルを作製した。既報において,がん細胞由来のエクソソームは転移を生じる前に TME となる細胞に働きかけ,転移の素地を整えることによって,転移先の臓器を決定している可能性が報告されている。またエクソソームは,腫瘍免疫を抑制することでがん転移に対して促進的に働くことも示唆されている。一方,免疫監視機構を調節することによって転移に対して抑制的に働くがん細胞由来のエクソソームの存在も報告されている。本研究では,マウス膵癌肝転移モデルにおいて,がん細胞由来のエクソソームが転移先の TME を構成する細胞内に多数存在していることを明らかにした。さらに,がん細胞由来のエクソソームが,肉眼的には転移を認めない肺や骨髄内のマクロファージ様細胞内にも存在していることが判明した。マクロファージは,腫瘍を促進する作用のある M2 型と抑制する作用のある M1 型とに分類され,またマクロファージ等の前駆細胞である骨髄由来免疫抑制細胞も腫瘍の浸潤や転移を促進することが知られている。本研究によって,がん細胞由来のエクソソームが,転移前の臓器に存在するクッパー細胞やマクロファージを含むがん周囲細胞に取り込まれ何らかの作用を果たしている可能性が示唆された。

【結論】
エクソソームを GFP で標識したがん細胞を移植することによって作製したマウス膵癌肝転移モデルを用いて, TME を構成する細胞や非転移臓器の細胞へ取り込まれたがん細胞由来のエクソソームを可視化することに成功した。本モデルは,がん細胞由来のエクソソームのダイナミックな体内動態を理解するために有用であり,がん転移の促進・抑制においてエクソソームが果たす役割を解析する上で有効なツールとなると考えられる。本研究によって作製されたモデルマウスを用いてがん細胞由来のエクソソームの動態・分布・機能を詳細に解析することによって,エクソソームががん細胞の転移・浸潤を制御するメカニズムを理解することが可能になると期待される。

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