リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「A novel CDK-independent function of p27Kipl in preciliary vesicle trafficking during ciliogenesis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

A novel CDK-independent function of p27Kipl in preciliary vesicle trafficking during ciliogenesis

行本 弘樹 三重大学

2021.06.29

概要

一次線毛は、ほとんどの脊椎動物細胞の表面から突出する微小管ベースの感覚細胞小器官である。線毛は、多くの細胞外シグナルを感知して変換し、細胞の増殖や分化など、さまざまな細胞プロセスに影牌を与える。したがって、線毛の形成と機能の欠陥は、線毛症と呼ばれる様々な疾患や発達障害を引き起こすことが報告されている。線毛形成はマイトジェン枯渇や接触阻害などの抗増殖剌激などによる細胞停止によって引き起こされ、微小管、アクチン細胞骨格、および小胞輸送機構の再構成を必要とする一連の順序付けられたステップに従う。サイクリン依存性キナーゼ(Cyclin-dependent kinase : CDK)阻害タンパク質のCip(CDKinteracting protein)/Kip(kinase inhibiting protein)ファミリーのメンバーであるp27Kiplは、N末端領域内の保存されたCyclinおよびCDK結合ドメインを介してCyclinとCDKの両方に直接結合し、Cyclin/CDK複合体活性を阻害する。また、c末端領域を介してRhoA(Ras homolog family member A)の低分子量GTPase(guanosine triphosphatase)に直接結合し、RhoGEF(Rhoguanine nucleotide exchange factor)とRhoAの相互作用とRhoGEFによるRhoAの活性化を阻害し、アクトミオシンのリモデリングに影孵を与える。さらに、p27Kip1のC末端28アミノ酸(aa)は、強力な微小管不安定化タンパク質であるstathminに結合して阻害し、それにより微小管ダイナミクスを調節する。アクチン細胞骨格と微小管の再配置を制御するその能力によって、p27Kiplは細胞の構造と遊走に関連している。p27Kiplの細胞内タンパク質レベルは、マイトジェン枯渇や接触阻害などの抗増殖刺激によって増加することで細胞周期静止に寄与する。また、一次線毛の形成も抗増殖刺激によって増加することが分かっているが、p27Kip1が線毛に関連しているかどうかは不明のままであり、本論文ではp27Kiplの一次線毛形成における役割を明らかにした。

我々は、CRISPRICas9テクノロジーにより、p27Kipl遣伝子(CDKNlB)のエクソン1をターゲットとするシングルガイドRNAを使用して2つの異なるp27Kipl・KO (knockout) hTERT不死化ヒト網膜色素J:-.皮細胞(Human Telomerase Reverse Transcriptase immortalized human retinal pigment epithelial : RPEl)株を樹立した。報告されているように、コントロールRPElのp27Kiplタンパク質レベルの増加は血清飢餓により誘導されたが、ノックアウト細胞は両方とも血清の有無に関係なく検出可能なp27発現を示さなかった。次に、2つの線毛マーカー(Arll3b(ADP-ribosylation factor-like protein13B)とポリグルタミル化a/8・tub(Glu・tubulin))を用いた免疫蛍光法によりコントロール細胞とノックアウト細胞の一次線毛を標識した。48時間の血清飢餓後、ほとんどのコントロール細胞では、基底小体から伸びる線毛が観察できたが、同様の線毛がノックアウト細胞ではほぼ完全に消失していることを発見した。そして、p27Kiplが2つの異なるSiRNA二重鎖を用いた追伝子サイレンシングされた場合も同様の結果が得られたことからp27Kiplが線毛形成に必要不可欠であることが分かった。

マウスの線維芽細胞において血清飢餓による細胞静止がp27Kip1の欠損により抑制されることが報告されていることから、p27ノックアウトRPEl細胞の細胞周期が血清の不在下でも進行し、それによって線毛形成が誘発されないという懸念があったのでBrdU(bromodeoxyuridine)取り込み解析によりノックアウト細胞の増殖活性を分析した。コントロール細胞で観察されたように、BrdU陽性分画はノックアウト細胞において血清飢餓により著しく減少し、さらに、コントロール細胞とノックアウト細胞の間のCyclinA(S/G2マーカー)の発現レベルと、CyclinA陽性細胞の比率に有意差はなかった。したがって、血清飢餓時にノックアウト細胞はコントロール細胞と同様にBrdUとCyclinAの取り込みが著減することからp27Kiplが欠失しても細胞周期の進行は起きないことを確認した。

線毛形成は、血清飢餓とは独立して、アクチン脱重合薬であるcytochalasinDによる処理によっても誘発される。p27Kip1がcytochalasinD誘発性の線毛形成に必要かどうかを決定するために、コントロール細胞とノックアウト細胞を200nMのcytochalasinDで16時間処理した。この処理は、コントロール細胞の線毛形成を誘導したが、ノックアウト細胞では誘導しなかった。注目すべきは、報告されているように、p27Kip1タンパク質レベルはコントロール細胞においてcytochalasinDの処理によって変化しなかった。これらの結果は、線毛形成にp27Kip1の発現レベルの増加ではなく、定常レベルの発現が必要であることを示唆している。

p27Kip1のcyclin/CDK活性を阻害する能力が線毛形成に必要であるのか、また細胞質微小管とアクチンダイナミクスが線毛形成に影態することからp27KiplがスタスミンとRhoA結合特性に関与しているのかということを確認するために、Tet・On誘導を用いて種々のmyc・p27Kip1を発現するp27Kiplノックアウト細胞株を生成した。具体的には、CyclinとCDKの両方に結合できないCK変異体(R30AIL32A/F62A/F64A)、およびRhoAとstathmin結合C末端領域が欠如している1・170aa変異体である。各々の変異体を調べると、線毛形成がノックアウ卜細胞ではほぼ完全に消失していることを発見した。また、野生型p27Kiplの外因性発現により線毛形成がrescueされることを発見した。照くことに、前述のCDK阻害やアクチン細胞骨格と微小管のリモデリングのいずれにも関与しないp27Kiplの86・140アミノ酸領域の発現によっても線毛形成の欠陥が回復することが分かった。

p27Kiplが線毛形成にどのように関与しているかをさらに洞察するために透過型電子顕微鏡(TEM: transmission electron microscopy)を用いてノックアウト細胞の基底小体を解析した。線毛形成は、preciliaryvesicle(PCV)と呼ばれる小胞の基底小体の遠位部への結合から始まる一連の定型化されたステップに従うことが知られている。結合した小胞は、近傍の二次小胞の融合によってサイズが増加し、より大きなCV(ciliaryvesicle)に変換され、その後、ciliarybudと呼ばれる蓄禎された高電子密度物質によって陥入される。最後に、ダブレット微小管が、基底小体から伸長し始め、軸糸と線毛ポケットを生じる。血清飢餓後、大部分のコントロール細胞は、伸長した軸糸または壼曲した大きなCVを持つ基底小体が観察された。対照的に、血清飢餓状態のノックアウト細胞では、PCVは基底体に付着していないか、付着していてもサイズは小さいままであった。以上よりp27Kiplの抑制により基底小体へのPCVの結合が阻害されることが分かった。

小胞輸送制御因子であるEhdl(EHdomain-containing1)の基底小体遠位部への輸送が線毛形成の最も初期に起こるイベントの一つとされていることから、免疫蛍光分析を用いてEhdlの動態を観察した。コントロール細胞の大半(77.6%)では、y-tub陽性の中心体がEhdl(n=94)で標識化され、PCVがコントロール細胞の基底小体に結合していることを示した。比較すると、ノックアウト細胞の37.5%のみがEhdlとy-tubの共局在を示した(n=285)。Ehdl蛍光強度の定量化でも、基底小体でのEhdlの蓄積がp27Kip1の欠失によって有意に阻害されたことを示した。対照的に、Ehdlの細胞内レベルはp27Kip1の欠失によって変化しなかった。我々のTEM解析と組み合わせると、p27Kiplの消失によりEhdlのタンパクレベルは変わらないものの、その遠位部への結合が損なわれることが明らかになった。また、p27Kip1がEhdlの上流で遠位部へのCVの結合に関して機能し、そのことは我々のTEM観察とも一致していた。

p27Kip1が線毛形成の最も初期のイベントを制御するメカニズムに関して、いくつかの研究では、線毛遠位部の構造異常によってPCVの結合が阻害されることが報告されている。しかし、我々の観察ではコントロール細胞とノックアウト細胞の間で遠位部の超微細構造に有意な変化は見られなかった。さらに、遠位部タンパク質であるCep164(centrosomalprotein164)の枯渇はセントロソーム周辺領域に結合されていないPCVの蓄精をもたらすと報告されているが、p27KO細胞では今回のTEMおよび免疫蛍光分析で、基底小体周囲のPCVの数が著しく減少していた。最近、ポストゴルジからの分泌小胞の輸送に寄与するミオシン・Vaが、微小管とアクチンフィラメントに依存してPCVの結合を制御することが報告された。p27Kip1の欠失と同様に、ミオシン・Vaの欠失は、基底小体およびその周囲のEhdl関連の小胞を減少させた。したがって、線毛形成はRhoAとstathminに結合するp27Kip1の能力を必要とはしないが、p27Kip1はミオシン・Vaを介したPCVのドッキングに関与する可能性があると考える。今後の研究により、p27Kiplが線毛形成を制御するより詳細な分子メカニズムの解明が待たれる。

本研究では一次線毛形成において基底体へのPCVの結合にp27Kiplが必要であり、またCDKやRhoAそしてstathminと結合する能力とは無関係に線毛輸送において重要な役割を果たすことが新たに明らかになった。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る