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大学・研究所にある論文を検索できる 「Studies on zirconium-based chemical conversion coatings」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Studies on zirconium-based chemical conversion coatings

田口 秀之 横浜国立大学 DOI:info:doi/10.18880/00013471

2020.11.19

概要

金属材料の塗装下地に用いられる表面処理は,化学反応を利用したりん酸亜鉛処理が長年使用されてきた。りん酸亜鉛処理技術は100年を超える歴史の中で様々な改良が加えられ,現在得られる皮膜は膜厚数μmの均一緻密な結晶性の皮膜となっている。しかし,りん酸亜鉛処理は近年の環境規制強化により,りんなどの環境負荷物質や,特に欧州で規制が強化されているニッケルを含有しており,さらに処理工程で発生するスラッジが産業廃棄物となるなどの点が指摘されるようになり,環境負荷の少ない新たな高耐食性表面処理が望まれるようになった。そこで2000年頃から,りん酸亜鉛処理に代わる新たな塗装下地用高耐食性表面処理として,ジルコニウム系化成処理の開発が始まった。

 ジルコニウム系化成処理工程は,従来のりん酸亜鉛処理工程と大きく変わらないため,既存工程からの切り替えも比較的容易である。さらに新設の場合は,りん酸亜鉛処理工程で必須だった表面調整が不要のため,従来よりも工程短縮が可能となる利点があり,既に市場展開も行われている。ジルコニウム系化成処理では,他の金属元素の添加や有機成分の添加など様々な改良検討が行われており,処理対象物や耐食性レベルに応じて使い分けられている。これまでの開発過程において,金属表面への皮膜析出機構や,耐食性・塗装密着性などの皮膜性能など,工業製品として確認すべき項目や製品化のために必要な様々な研究は行われてきた。しかし,ジルコニウム系化成処理皮膜(以下,ジルコニウム系皮膜又は皮膜と略す)の多くは,その膜厚が数nm〜数十nmであり,従来のりん酸亜鉛皮膜の百分の一程度の極薄膜である上,りん酸亜鉛皮膜と違ってアモルファスであることから,皮膜を構成する化合物組成やその種類及び皮膜内部での分布など,皮膜の微細構造については十分な知見が得られているとは言い難く,未だ不明な部分が多い。そのような皮膜の詳細情報を把握することは,今後の皮膜改良や応用開発を行うために非常に重要な研究テーマのひとつである。そこで本研究では,金属表面に析出したジルコニウム系皮膜の微細構造を明らかにすることを目的とした。

 ジルコニウム系皮膜は,皮膜の種類や被処理物である金属の種類が多く,化成処理反応から推測される皮膜の化学構造も,比較的単純なものから複雑なものまで様々である。しかし前述のとおり,これまで皮膜内部の微細構造に関する研究はほとんど行われていない。そこで本研究では,極薄膜でアモルファスの各種ジルコニウム系皮膜に共通する最も基本的な微細構造を明らかにするために,アルミニウム板に処理した2種類のジルコニウム系皮膜,無機皮膜と有機成分を含む無機有機複合皮膜を試料として用いることとした。

 初めに,FE-SEM/EDSで皮膜表面の観察と元素分析を行い,両皮膜とも表面にnmオーダ一の極微小な凹凸形状を持ち,皮膜成分元素が一様に分散していることが確認された。次にFIBで作製した薄片化断面試料を,FE-SEMに搭載されたSTEM検出器で観察し,得られた透過像から無機皮膜と無機有機複合皮膜の違いを明らかにした。さらに,TEMで皮膜・基材界面の超高倍率観察を行い,従来,皮膜析出や基材との化学反応などから推測していた複雑な界面構造を実験的に明らかにすることができ,皮膜性能を考察するための新たな重要な情報を得ることができた。

 皮膜を構成する化合物については,XPSやAESを用いて化学結合状態の解析を行った。XPSは非常に表面敏感な分析手法であり,得られるスペクトルの深さ情報は約10nmである。そのため10nm以上の厚い(深い)情報を得るためには,アルゴンイオンによるスパッタリングと測定を繰り返し行う必要があるが,元素によってはスパッタリングにより化学結合状態が変化する可能性がある。そこで,最初にジルコニウム系皮膜のスパッタリングによる試料ダメージの有無について検討し,両皮膜ともスパッタリングダメージのないことを確認した。その上で,皮膜の化学結合状態を含む微細構造について詳細に分析した結果,ジルコニウム系皮膜は酸化物だけではなく,その他の化合物も共存していることが明らかになった。また,従来あまり活用されていなかったオージヱパラメーターに着目して解析した結果,XPSスペクトルでは判別できなかった化合物が,オージェパラメーターを活用することにより判別可能であることも確認でき,XPSの分析結果とともに考察を行うことで,皮膜の微細構造に関する新たな知見を得ることができた。

 さらに,放射光によるXANESの分析結果より,無機皮膜と無機有機複合皮膜の違いを考察し得るデータが得られ,両者の微細構造や膜質の違いを明らかにすることができた。

 本研究により,ジルコニウム系皮膜の微細構造や析出機構に関する新たな情報を得て,今後の皮膜改良や応用開発に活用可能な多くの知見を得ることができた。

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