【教授就任講演】次世代を見据えた地域発の新しい眼科学への挑戦
概要
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第 192 回山梨大学医学会例会
日時:令和 3 年 11 月 10 日(水)午後 4 時 10 分∼ 5 時 10 分
会場:管理棟 3 階大会議室
教授就任講演
次世代を見据えた地域発の新しい眼科学への挑戦
柏木 賢治
山梨大学医学部眼科
司会 平田 修司教授
【要旨】
視覚情報は生活の質(QOL)を支える最も重要な外部情報であり,その喪失は,個人はもとよ
り社会的にも大きな損失となる。世界的規模での超高齢社会の急速な到来は,運動器疾患,精神神
経疾患とともに,視覚情報を中心とする感覚器疾患の重要性を大きく増大させている。一方,コン
ピュータ技術,通信技術の高度な発展は,石油中心の社会からデータ駆動型社会へと社会構造の劇
的な変革をもたらしている。このことは医学の世界にも当然の様に大きな変革が起こることを示唆
しており,すでに従来の研究や臨床における医学常識には大きな変化が起こっている。このような
劇的変化を迎える次世代医学であるが,ともすれば概念的・総括的になりがちであり,その実効性・
現実性には疑問もある。
急速に変化する社会環境の中,眼科学はどのような役割を果たすことが可能であろうか。本学眼
科の第一の使命は,地域の眼科医療を守ることであることは自明である。同時に山梨というリアル
なフィールドを十分に活用し,先駆的な事例として,従来の眼科医療の枠組みを超え,多種の組織
を有機的に連結させたコホート・共同体を構築する必要があると考える。この枠組みを活用して基
礎を含む様々な研究成果の臨床への導出,その成果をさらに研究へフィードバックするエコシステ
ムを構築することが,これからの地域の眼科学として必要でありかつ強みであると考える。さらに
眼を対象として得られるデータは,多くの全身疾患・状況のバイオマーカーとして意義が大きく,
その活用は新しい医学応用への展開が期待される。
本就任講演では,従来の概念とは異なる新しい眼科学を,山梨という地域発でどのように進めて
いくかその道標をお示ししたいと考える。 ...