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書き出し

黄檗 No.59

京都大学化学研究所 京都大学

2023.08

概要

59

NO.
2 0 2 3 年 8月

by Institute for Chemical Research, Kyoto University

京 都 大 学 化 学 研 究 所

NEWS

新規ウイルス門の発見
教授 緒方 博之

化研学生座談会
JOIN US, ICR!
令和4年度 化学研究所大学院生研究発表会 受賞者

研究ハイライト

光の発生と変換を操るレーザー科学
教授 時田 茂樹

NO.59
August 2023

01

化研邁進

ポストコロナのリスタートに際して
所長 青山 卓史

02 NEWS
03
05
07

新規ウイルス門の発見
教授 緒方 博之

化研学生座談会
JOIN US, ICR!
令和4年度 化学研究所大学院生研究発表会 受賞者
研究ハイライト

光の発生と変換を操るレーザー科学
教授 時田 茂樹

研究TOPICS

若手研究ルポ
表面弾性波を用いたオプトスピンメカニクス
フォノン角運動量の実証を目指して

助教 久富 隆佑

コアセルベートを基軸とした抗体の細胞内導入と
相分離制御
細胞内導入抗体による相分離創薬の実現に向けて

08
09
11
12
13
15





助教 川口 祥正

碧水会

会員のひろば
森下 弘樹、西尾 幸祐

新任教員紹介
客員教員紹介
受賞者

化研の国際活動
掲示板

倉田博基教授 退職記念講演会
研究費・異動者一覧
訃報
学生受賞
事務部だより
編集後記

化研点描

宇治川河畔は第二の故郷
尾崎 邦宏

ポストコロナの
リスタートに際して
第35代所長 青山

卓史

新型コロナ感染症の位置付けが5類となり、大学において

も本来の活動の全てが再開されるようになりました。しか
し、これは決してコロナ前と同じ状態に戻ったということで

はありません。3年余りの期間を経て我々を取り巻く社会
状況は大きく変化しました。身近な例では、オンラインによ

る会合やリモートワークが一気に普及し、多様な働き方が取

り入れられるようになりました。その他の社会活動において
も、各方面で多様性を取り入れた変革が急速に進展したと感
じられます。パンデミックによって効率を重視する社会シス

テムが成り立たなくなったことを契機に多様な価値に目が
向けられるようになったとともに、個々人がこれまで経験し

たことのない状況に置かれたことで新たな視点を持つよう
になったのではないでしょうか。この活動再開は多様な価値
観に基づく変革の好機と捉えることができます。

今年度は京都大学にとっても大きな変革の年となります。

現在本学は文部科学省による国際卓越研究大学の認定を目指

しています。この制度は、極少数の大学が国際的に卓越した研

究の展開および研究成果の活用が見込まれる大学として25
年の長期にわたり大学ファンドによる潤沢な財政的支援を受

け、その後に世界の一流大学に伍する研究大学として自立を
果たすというものです。日本の大学における研究力の低下は
指摘されて久しく、他国と比べて厳しい現実が年々明らかと
なってきています。この状況を打破すべく、本学は国際卓越研

究大学の認定を梃に、大幅な組織改革を伴う変革を行おうと
しています。これは本学の研究大学としての生き残りのみな
らず、日本の研究力の復活を賭けた変革でもあります。

本学の変革に対して化学研究所が果たすべき役割は大き

いと考えています。国際共同利用・共同研究拠点としてこれ
までに培った国内外の研究連携ネットワークハブ機能を活
用して本学の国際的な研究力強化に貢献するとともに、化
学を中心とした先端的、融合的研究の成果により持続可能

社会の創造に資することが求められています。また、研究所
として自らの改革を加速させる必要があります。女性教員

比率の増加、若手研究者の育成は引き続き重要課題であり、
本学の改革と方向性を一にした組織再編にも今後取り組ま
「黄檗
」 OBAKU

59

01

なければなりません。本年度は、ポストコロナのリスタート
COVER

研究ハイライト

「光の発生と変換を操るレーザー科学」より
黄檗59号 デザイン・DTP / ARTE DESIGN OFFICE

の年であるとともに、本学および化学研究所の長期にわた
る変革の起点の年となります。

NEWS

Nature
掲載

新規ウイルス門の発見

バイオインフォマティクスセンター 化学生命科学 教授 緒方

緒方研究室では微生物生態進化学に取

り組んでいます。今回、孟令杰 特定研究員

博之

ドナウイルス域( V 域)に分類されます。

D域には、ヒトの病原体として知られるヘ

イルスが、原始的な真核微生物を宿主と

「巨
するウイルスが含まれます。V域には、

その後、より高等な動物へと宿主を乗り

が進めてきた国際共同研究Tara Oceans

ルペスウイルスの仲間と原核生物に感染

しいウイルス群が発見されました。ミル

大ウイルス」と呼ばれる大型のウイルス

により、ミルスウイルスと命名された新
スウイルスは、二本鎖DNAウイルスで、新

たなウイルス「門」を構成します。ウイル

や他の小型のウイルスが含まれます。

ミルスウイルスは、両グループの特徴

スは「域·界·門·綱·目·科·属·種」の8階級で

を示すキメラ状のゲノムを有していまし

分類群で、これまでに17門知られていま

はD域に特徴的で、遺伝情報の発現に関わ

分類され、
「門」は上位から3番目の大きな

す。今回の発見により、ウイルス学の18番
目の扉が開きました。

二 本 鎖 DNA ウ イ ル ス の ほ と ん ど が、

デ ュ プ ロ ド ナ ウ イ ル ス 域( D 域 )と バ リ

この発見から、原核生物に感染するウ

た。ウイルス粒子構造に関わるの遺伝子

る遺伝子はV域の巨大ウイルスに類似し
ていました。D域とV域は進化的な関係

がないと考えられていたので、これは予
想外の特徴でした。

するミルスウイルスの祖先へと進化し、
換えて、ヘルペスウイルスが誕生したと

いう進化シナリオが想定できるようにな
りました。また、遺伝情報の発現に関する

遺伝子がミルスウイルス(D域)と巨大ウ
イルス(V域)の祖先の間で、大規模な遺伝

子水平伝播により共有された可能性が強
く示唆されます。

ミルスウイルスは真核微生物を推定宿

主とし、海洋生態系における主要なウイ

ルス群の一つと考えられます。ウイルス

学の18番目の扉は未知の広い世界に開

かれているのかも知れません。しかし、ミ
ルスウイルスは未培養です。正確な宿主

も不明です。緒方研の次の目標は、ミルス
ウイルスを分離培養することです。ミル

スウイルスの分離培養に辿り着きました
ら、またご報告します。今後とも応援して
下さい。

本成果は、
フランスの原子力庁、
国立科学

研究センター等との国際共同研究により得
られ、国際学術雑誌「Nature」4月27日号

(DOI:10.1038/s41586-023-05962-4)
に掲載されました。国際共同利用・共同

研究拠点、連携研究基盤グローバル生存
基盤展開ユニット、科学研究費補助金か
らご支援を受けました。

化学研究所WEBサイト
【研究トピックス】

「黄檗

CHECK!

-ヘルペスウイルスの起源の解明に寄与(2023年4月20日)

」 OBAKU

59

新規ウイルス門の発見

 

国際学術雑誌

02

令和 5 年 2 月 22 日(水)、令和 4 年度の大学院生研究発表会が開催されました。今年度は 3 年振りのオンサイト開催となり、博士課程学生 14 名、修士

課程学生53名、合計67名の発表が行われました。研究所教員による厳正な審査の結果、オーラル大賞(博士課程)
・ポスター大賞(修士課程)が合計
5名に授与されました。どの発表においても化学研究所らしい多様な研究分野の最新の研究成果が紹介され、活気あふれる研究発表会となりました。
今回はポスター大賞受賞者の皆さんの座談会を開きました。

どうして化学研究所に進学したのか?ラボの雰囲気は?先生や他の学生との交流はどんな感じ?
化学研究所で過ごす学生の本音をきいてみました。

化学研究所は
やれることがたくさんあって、
自分のやりたい研究を
しっかり決めてから入学すると
いい研究生活が
送れると思います!

同期にも恵まれて、
尊敬できる人が
いっぱいいる環境で
過ごせたので
良かったです!

物質創製化学研究系
精密無機合成化学(寺西研究室)

環境物質化学研究系
分子微生物科学(栗原研究室)

修士課程2年

修士課程2年

桑田 瑞輝さん

ご受賞おめでとうございます!
大 学院 生 研 究 発 表 会 はいかがでしたか?

川村:他の研究室の発表を見られたのはすごく
楽しかったです。知らなかったのですが高校の同

平島 真帆さん

というのもあります。

桑田: 僕も化学研究所というよりは、研究室で

選びました。その中でも寺西研を選んだのは、
研究で新しいことをやりたいなと思っていたんで

級生が化研内に2人いて。1人はゴムの弾性力

すけど、ちょうど寺西研で新しい結晶構造を作っ

ンシングの研究。内容は難しくて分からなかった

されて、その研究を僕もやってみたいなと思っ

の研究、もう1人はダイヤモンドを使った温度セ

のですが、毛色の違う話も聞けてそういうのが楽

しかったなと。薬学研究科でも発表があったの

行けてなくて、今年伊勢に行けました。

たっていう研究成果が京大ウェブサイトで報告

て、入ってからその研究をやらせてもらいました。

ですが、薬を目指してというところですが、化研

は化学系も生物系もありますし、特に材料系の

正木:私は平島さんと同じ研究室なのに、自分

研究は普段ない視点でおもしろかったです。

はそんなに手厚いって思ってなくて。逆に成長さ

正木:二木研とは横の研究室なんですけど、薬

せるためにほどほどに突き放されているのかな

のことを研究してるんだ なとは 知っていても、

と。 1から10というよりは、3 、4くらいのサポー

どんなことを研究しているか全然知らないし、
色んなことをみんな研究してるんだなと学ぶい

トで、後は 自分でできるように。今後自分が 研

らない教授ともちょっと喋ることができました。

探したりする力をけっこう養えたなと思えます。

究者としてやっていく上で大事なこと、考えたり

い機会でした。懇親会も教授と一緒にいたら知

こういう懇親会があるからどういう機械を持っ
ているか知れるし、次使わせてくださいとなって
広がっていくんだなと感じました。

「黄檗
」 OBAKU

59

03

化 学研 究 所を修 士 課 程の進学先として
選 ばれた理 由を教えてください 。

実際に化学研究所での研究活動は
いかがでしたか?

なんですけど、無機をやっているだけではなくて、

実験室も無機部屋、有機部屋とあって、スタッ

平島:先生から直接教えてもらえることがすご

フさんもそれぞれバックグラウンドの違う人が

な が 一生懸命研究を頑張っているの は もちろ

こういう合成方法があるんだけどこれを応用で

楽しい時間をたくさん過ごすことが出来ました。

で教えてもらって、それを利用してちょっと無機

くよかったなと思います。あとは研究室のみん

平島: 自分が 興味の ある研究が 化学研究所に

ん、イベントにも積極的に参加する人が多くて、

の 研究室の 先生が 栗原研出身で交流があった

毎年ラボ旅行に行ってたんですけど、コロナで

あったというのが一番です。また、学部生の時

桑田:研究室は精密無機合成化学っていう名前

いて。私は 無機の研究なんですけど、有機では

きないかなとか、全然知らなかったことをゼミ
にも取り入れてみたり。メンバーはいろんなと

オーラル大賞

ケミカルバイオロジー

西尾 幸祐

精密無機合成化学

桑田 瑞輝

分子微生物科学

平島 真帆

ポスター大賞

生体機能設計化学
オーラル大賞授与式

ポスター大賞授与式

分子微生物科学

修士課程2年
川村 優貴さん

正木 翼加

興味を持つものをちゃんと
追いかけながら行動して行けたら、
自分の納得する研究が
できると思います!

深く突き詰めて勉強する環境は
非常に整っていると思うので、
よかったら化学研究所へ
きてください!

生体機能化学研究系
生体機能設計化学(二木研究室)

川村 優貴

環境物質化学研究系
分子微生物科学(栗原研究室)
修士課程2年
正木 翼加さん

取材日:2023年3月8日
学年は当時のものです

ころから来られているので、人も潤っているなと

会社自体も農芸化学会で私がやっているDHA

川村: 食品と 製 薬 を 扱って い る 企 業 の 製 薬

川村: 今出た 話で言うと、資金が 潤沢っていう

ごく興味を持ちました。会社でも博士をとりた

ど、ホ ールディングスとして食 品と製 薬 に力

だったら他の研究室と出し合って買った顕微鏡

の中ではけっこう大事です。やっぱり博士を持っ

いるというところに 惹 か れて 志 望しました 。

派遣されたときも博士を持ってないと研究者と

もそこを深く突き詰 められるっていうの は 魅

博士をとったほうが研究者としてはやりたいこと

げ た い という風 に なった の で、 そちら を 選

感じます。

のは研究室に来て特に感じたことで、前の大学

とかEPAの 研究を発表されていて、 そこです
い人がいたらサポートしてくれるところも自分

とかを、二木研だったら二台持っていて、すご

ている方が研究テーマを任せてもらえたり、海外

予約できたり、それでも足りない設備があった

して認められないこともあると聞いたので、今後

栗原研とは 化研の懇親会で仲良くなって、一緒

ができるのかなと悩んだこともありました。栗原

いなぁと感じて。だから、ここだとスムーズに

ら他の 研究室に 借りたりもできました。あと、
に宇治川の河原で花火をしたり、研究だけじゃ
なくて何か切り替えもしっかりうまくやってると

ころが、結果的に研究の結果につながっていっ
たりするのかなと。

ご卒 業 後の進 路や
予 定を教えてください 。

桑田: 卒業後の 進路は、繊維系の 会社に 就職

先生にも相談したんですが、博士をとりたいと連

部 門 の ほうに 採 用して い た だ い た んです け

を 入 れ て い るし、融 合 分 野 に も 力 を 入 れ て

博 士 に 進 む とそ の 製 薬って いう 狭 い 分 野で
力 だ と は 思うんで す け ど、自 分 は 視 野 を 広
びました 。

絡してくれたら、もし今修士でやってた研究と似

たようなところがあったら似たような形で論文化

して博士をとることもできるから、まずは自分の
したいことをしてみたらと言ってもらえて、それ

で就職してから博士をとるのもアリなのかなと
選択肢として思いました。

する予定です。繊維の勉強は ほとんどやったこ
とが なくて。新しいことにチャレンジしたいな
と思って、繊維系の 企業を選びました。入社後

平島: 卒業 後 の 進 路 は 研 究 を 支 える 分 析 計

きたので、無機化学のことをちょっと取り入れ

として 働き ま す。研 究 生 活で は 勉 強 以 外 に

にないような繊維だったり、素材だったりを作

け るこ と が 出 来 た の で、研 究 以 外で も 身 に

は、今までこの 6 年間で無機化学の勉強をして

正木:食品関連企業に研究職で就職します。この

つ け た 力 を 活 かして 頑 張りた い な と 思って
います。

59

」 OBAKU

るのに挑戦したいと思っています。

も ス ケ ジュ ー ル 管 理 や、資 料 作 成 能 力 を つ

「黄檗

て、繊維の高分子とかを融合したような今まで

測 機 器 な ど の 精 密 機 器メ ー カ ーで、技 術 職

04

光 の 発 生と変 換 を 操 る

レーザー科学

新光源で世界を変える

レ ー ザ ー 技 術 は 、発 明 か ら 半 世 紀 以 上 の 時 を 経 て 進 化 し 、現 代 社 会 を 支 え る 基 盤 技 術 の 一 つ と

なっている。様々な科学分野と社会の発展に貢献するため、最先端の高強度レーザー光源を開発

し て い る 。ま た 、新 光 源 よ っ て 起 こ す こ と の で き る 新 た な 現 象 を 見 出 す こ と に 挑 戦 し て い る 。

先端ビームナノ科学センター レーザー物質科学 教授 時田
「黄檗
」 OBAKU

59

05

茂樹

2022年4月、9年ぶりに化学研究所へ戻ってきました。
1 年が過ぎ、京都大学の自由な雰囲気の中で研究に取

た こ と が な い も の を 創り 出す 仕事に 携わ り た い と

供の頃から「ものづくり」が好きで、世界の誰も作っ

積み重ねてまいります。

り組めることに大きな喜びを感じています。私は子

願ってきました。まだ道半ばではありますが、私ども

の 研究が 世界を 変え る こ と を 夢見て、日々 を 着実に

1960

年に発明されたレーザーは、半世紀以上の

パルスレーザーを例にとると、 0.2 ~ 3 マイクロメートルの短

時を経て進化し、今日では社会に広く普及

波長域においては、加工応用に必要な数ワット以上の平均出力

半 世 紀 で あ っ た と 言 え ま す。 1970 年 代 の レ ー ザ ー 加 工 の 実

れています。一方、およそ 3 マイクロメートルを超える長波長域

しています。特に光科学の分野では、レーザーが世界を変えた

を実用的な装置規模で得られるパルスレーザー光源が実現さ

用化、 1980 年代の光ディスクの発売、光ファイバー通信の普

においては、費用対効果の高い光源が存在しません。しかし、長

発明、 2000 年代の光格子時計の発明、高出力ファイバーレー

特に大きく、その有用性が認識されています。

及、 1990 年代のフェムト秒レーザーの普及、超解像顕微鏡の
ザ ー の 普 及、 2010 年 代 の 重 力 波 の 初 検 出、そ し て 2020 年 代

波長レーザーに対する要求は産業・医療・科学研究の分野で

そこで私たちは、波長 3 ~ 5 マイクロメートルの中赤外波長

のレーザー核融合の点火実証へと続き、レーザーを利用した研

域 の レ ー ザ ー 技 術 を 開 発 し て い ま す。 2.8 マ イ ク ロ メ ー ト ル

た。レーザー光源の進化がなければ、これらの革新は起こりえ

ザー、世界初の 4 マイクロメートル帯フェムト秒 Er ドープ ZnSe

究により数多くの革新が起き、ノーベル賞受賞者が続出しまし
なかったでしょう。このように、光源は世界を変える力をもっ

帯で世界最高出力の Er ドープフッ化物ガラスファイバーレー

レーザーなど、これまでにもレーザー開発史に新たな 1 ページ

ており、あらゆる科学分野を支える基盤技術の一つです。私た

を刻んできました。これらの新しいレーザーを使ったガラス加

分野と社会の発展に貢献したいと考えています。

組んでいます。

ちは、これまでにない先端光源を創り出すことで、様々な科学

工、樹脂加工、ガスセンシングなどの新規技術の開発にも取り
ま た、中 赤 外 域 の み な ら ず、極 短 紫 外 や X 線 領 域 の レ ー

固体レーザー技術の進展により、小型・高効率かつ信頼性の

ザ ー 光 を 発 生 す る 技 術 の 開 発 に 挑 戦 し て い ま す。特 に、 X 線

に供されるようになりました。レーザー光源への要求は益々高

夢 と い っ て も 過 言 で は あ り ま せ ん。私 た ち は、超 高 強 度 レ ー

高い高出力レーザー光源が産業・医療・科学などの分野で実用

度化・多様化しており、高出力化、短パルス化、高効率化、新波

領域の高強度レーザーを実現することは、レーザー科学者の
ザ ー と 固 体 密 度 プ ラ ズ マ と の 相 互 作 用 を 利 用 し、赤 外 線 を X

長帯開発など、様々な研究開発が行われています。私たちは、挑

線 に 変 換 す る 技 術 の 研 究 を 行 っ て い ま す。将 来 的 に、高 強 度

近年のスマートフォン、自動車等の先端機器の製造に不可欠

X線 非 線 形 光 学 な ど へ 展 開 す る 新 た な 光 科 学 分 野 の 開 拓 を

戦的な課題の一つである新波長帯開発の研究を行っています。
となっているレーザー微細加工に適したピコ秒・フェムト秒

X 線 パ ル ス を 用 い た X 線 イ メ ー ジ ン グ、 X 線 ナ ノ 微 細 加 工、
目指しています。

「黄檗

岡﨑助教と開発中の新型レーザー装置

」 OBAKU

59

06

repo

01

JST

戦略的創造研究推進事業(さきがけ)採択課題

表面弾性波を用いた
オプトスピンメカニクス
フォノン角運動量の実証を目指して

表面弾性波が持つと予想している2種類のフォノン角運動量

存在こそ理論的に示唆されてきたものの

回転しており、角運動量を持つことが明らか

(回転を特徴づける量)
がこの世界には存在し

るような物体の振動において、角運動量の存

未だ確固たる観測がなされていない角運動量
ます。それがフォノン
(振動の量子)の持つ角

運動量です。本研究では物体表面に局在する
表面弾性波に着目し、フォノン角運動量の実
証を目指しています。

久富 隆佑

02

本研究で注目するフォノンは、
実験用基板上

の波長0.1mm程度の表面弾性波です。図に示

な物理量です。
例えば、
我々が日常的にお世話

それらと光、
そしてそれらと電子スピンとの相

や、世界を照らしてくれている光も角運動量

を持つことが既にわかっています。もっとス

ケールの大きなところでいえば、我々の居る
地球やそれが属している天の川銀河も常に

研究 TOPICS

repo

あります。

したように、
表面弾性波は内部に二種類の回転

になっている電気のもととなっている電子

助教

在が未だに実証されていないという事実が

角運動量とは、多くの物理現象の理解に重

要な役割を果たすことから着目される基礎的

材料機能化学研究系
ナノスピントロニクス

となっています。そんな中、地震に代表され

を伴うことが理論的に明らかとなっています。
互作用を通して、
表面弾性波の持つ角運動量の

存在を実証することを目指しています。
さらに
それを足掛かりにして、
光・電子スピン・フォ

ノン間(オプトスピンメカニクス系)
での角運
動量相互変換の物理を探求していきます。

若手研究ルポ

筋萎縮性側索硬化症(ALS)
や前頭側頭葉変

性症(FTLD)
などの神経変性疾患の発症には、
天然変性タンパク質が関与することが知られ
ています。 ...

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