リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「コメに含まれるカドミウム結合物質の探索と動物におけるカドミウム吸収への影響に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

コメに含まれるカドミウム結合物質の探索と動物におけるカドミウム吸収への影響に関する研究

陳, 嘉 上 東京大学 DOI:10.15083/0002006240

2023.03.24

概要















申請者氏名





嘉上

重金属の中でも Cd は昔から工業製品に使われているが、多くの生物種にとって有害であ
る。Cd はヒトを含む多くの生物種の体内に長期間蓄積する特性があり、ヒトなどの生物が
Cd に曝露され、Cd が生体に吸収されると慢性的な毒性が問題になる可能性がある。ヒトの
Cd 吸収の一部は植物を経由して行われる。様々な無機物が植物に根部より吸収されるが、
植物の生育に役立つ養分だけではなく土壌中に存在する汚染物も同時に吸収される。その
原因は植物の根部にある必須金属イオン(Fe、Ca、Zn イオンなど)のトランスポーターが、
目的金属だけではなく Cd をも輸送してしまうためであると考えられている。土壌汚染によ
り問題となるのは、我々の主食であるコメに蓄積された Cd が、摂食により人体に吸収、蓄
積されることである。健康被害を防ぎ、よりリスクの少ない農業を可能にするためには、
コメの Cd の蓄積形態、生体への吸収動態を理解することが必要である。しかしながら、コ
メ中の Cd の化学形態については不明点が多く、植物の Cd 結合分子は報告例があるが、コ
メにおける主な結合分子は未だ同定されていない。本論文では、新規および既存の手法に
よりコメ中に存在する Cd 結合物質の探索を行い、Cd 結合物質を単離・同定し、さらにそ
の性質と機能を植物実験、動物実験、細胞実験、放射線実験など様々な手法で解析し、コ
メ中の Cd の化学形態と生体への影響について新たな知見を得ている。本論文は 5 章から成
り、第 1 章の序論では、上述の Cd の毒性研究の背景について記述している。
第 2 章では Cd 汚染米の摂取によるマウス臓器内の Cd 蓄積量の評価を行っている。Cd が
Cd 結合物質と錯体を形成することで、消化・吸収・体内蓄積にどのように影響するかを解
明するため、無機 Cd を含む飼料、Cd-グルタチオン(GSH)錯体を含む飼料および Cd 結合
物質と Cd との結合で生成される錯体を含むと予想された Cd 汚染米を含む飼料をそれぞれ
餌として、マウスに 1-4 週間投与する実験を行い、投与したマウス体内の Cd の動態を比較
した。無機 Cd あるいは Cd-GSH 錯体を低濃度で飼料に混合して 1 週間投与した場合、マウ
ス肝臓、腎臓両方ともに Cd-GSH 錯体飼料を与えた群の Cd 濃度が無機 Cd 飼料を与えた群
より高かった。
無機 Cd 飼料中の Cd 濃度を変化させてマウスに 4 週間摂取させた実験では、
濃度依存的にマウス臓器中の Cd 濃度が上昇することが示された。この結果より、Cd 汚染
米を含む飼料と同じ Cd 濃度を含む無機 Cd 飼料をマウスに投与した場合の臓器中の Cd 濃
度を計算し、Cd 汚染米を含む飼料を摂取したマウスの臓器中 Cd 濃度と比較した結果、Cd

汚染米を含む飼料を摂取したマウスの臓器中の Cd 濃度は著しく高くなることを示した。こ
の結果は Cd 汚染米の中に、Cd と結合している特定の成分が存在し、該当成分と一緒に摂
食することでマウスがより Cd を吸収しやすくなることを示唆していると主張している。
第 3 章ではコメの Cd 結合物質の検出と同定を行っている。市販米サンプルを用いた Cd
結 合阻 害ア フィニ テ ィー クロ マトグラ フィ ーと 、 新規に 開発 した
5,10,15,20-tetraphenyl-21H,23H-porphinetetrasulfonic acid (TPPS)法や、HPLC-ICP/MS を組み合
わせることにより、コメ中の Cd 結合物質である SSA1-2S (albumin seed storage family protein)
の同定に成功したことを記述している。
第 4 章では SSA1-2S アルブミンの詳細な機能解析を行っている。Cd ストレス環境で栽培
したコシヒカリ野生型株と変異株 (SSA1-2S アルブミンの欠損株) のコメ中 Cd 累積量変化
を測定し、コメ中 Cd の累積量は、SSA1-2S アルブミン欠損により 11~38%程度低減するこ
とを示している。また、大腸菌にて組換え SSA1-2S アルブミンを発現させ、SDS-PAGE と
PVDF 膜への転写を行い、109Cd との結合を放射線イメージアナライザーにより測定したと
ころ、強いシグナルが観察され、組換え SSA1-2S アルブミンは Cd に強い結合能を持つこと
が示唆された。さらに、Caco-2 細胞を用いた単層膜の透過試験を行い、組換え SSA1-2S ア
ルブミンと結合した Cd の細胞への取り込み量の評価を試みている。細胞が形成した単層膜
を用いて小腸中の Cd 吸収状況を模倣し、透過試験を行い、試験終了後、管腔膜側と基底膜
側の Cd 含量を ICP-AES により測定したところ、組換え SSA1-2S アルブミンを添加したサ
ンプルでは、未添加のサンプルより基底膜 Cd 含量と透過率が 2 倍以上に上昇することを示
している。
第 5 章では研究の総括と、今後の展望について議論を行っている。
以上、本論文では、マウス実験において、Cd 汚染米を摂食したマウスの臓器中 Cd 吸収
量は、無機 Cd を摂食したマウスより高いことを示し、その原因として、コメ内で Cd は
SSA1-2S アルブミンと結合することで、人体に取り込まれ易い形態になっている可能性を明
らかにした。コメ内の Cd の化学形態については、どのようなタンパク質が関与するのか、
これまでほとんど未解明であった。また、Cd の毒性も無機 Cd を餌に混合した動物実験な
どにより評価されていたため、体内への Cd の取り込み量や毒性の程度などは正確には明ら
かになっていなかった。本研究は Cd 汚染米における Cd の化学形態の一端を明らかにした
ものであり、食品からの Cd の人体への取り込み量の正確な予測や、Cd 汚染米の真の毒性
評価に寄与すると考えられ、学術上、応用上貢献するところが少なくない。よって、審査
委員一同は本論文が博士(農学)の論文として価値あるものと認めた。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る